50歳代以上の男性に多い「心筋梗塞」。死亡率は3割とも/やさしい家庭の医学

50歳代以上の男性に多い「心筋梗塞」。死亡率は3割とも/やさしい家庭の医学 pixta_37108742_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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冠動脈が詰まり、心筋が壊死してしまう
「心筋梗塞」

●しめつけられるような胸の痛み

心筋梗塞」とは、冠動脈の血管が詰まってしまう病気です。冠動脈の血管が狭くなり、血流量が減ることによって起こるのが狭心症ですが、心筋梗塞は狭心症とはくらべものにならないほど重症で、詰まった部分から先に血液が送られなくなるため、心筋が壊(え)死ししてしまいます。

また、全身に血液が供給できなくなるため、発作が起こると意識を失い、死亡に至るケースが少なくありません。50歳代以降の男性に多く発症し、死亡率は3割にもなるといわれているのです。

心筋梗塞の原因となるのは、冠(かん)動脈の動脈硬化です。動脈硬化によってふさがった部分が破れ、そこに血栓(けっせん)[血のかたまり]が形成されることによって血流がそこで途絶えることになります。

原因は狭心症と同じような経過をたどりますが、急な運動などによって起こる狭心症と異なり、心筋梗塞は突然引き起こされる場合が多く、また、狭心症の発作を何度も繰り返すうちに発症することもあります。

胸がひどく痛んだり[しめつけられるような痛み]、のどが詰まったり[呼吸困難]、冷や汗が出たりなどの症状が心筋梗塞の前兆です。

とくに、冷や汗が出たり手足が冷たくなったなどの場合は、体がショック状態にあることの現れですので、注意が必要です。

心筋梗塞の症状が見られたら、ただちに応急処置をすることが必要になります。CCU[冠動脈疾患(しっかん)用集中治療室]のある病院へ搬送されることが望まれます。

そこでは、血管に詰まった血栓を溶かすために血栓溶解薬を静脈注射し、冠動脈内血栓溶解療法[血流の再開を促す治療]やPTCA[経皮的冠動脈形成術]などが行なわれます。

予防法としては、動脈硬化を防ぐため、肥満に気をつけ、悪玉コレステロールを減らすように努めたいところです。また、高血圧症の人は心臓にかかる負担が常に大きいことになりますので、冠動脈の負担も大となり、普段から注意する必要があります。

タバコや酒も、心筋梗塞を引き起こす要因となります。タバコのニコチンには血管を収縮させる作用があり、それが動脈硬化を引き起こしやすくなるのです。酒は、それ自体というよりも、一緒に食べるつまみの塩分が、高血圧や動脈硬化の原因になると考えられます。

狭心症を経験したことのある人ですと、冠動脈が細くなった状態にあることは間違いないことになりますので、血液検査や心電図を取り、事前に心臓の詳しい状況を把握しておくことも有効といえるでしょう。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。

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『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)


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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です

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