肝機能障害の総称が「ウイルス性肝炎」。A型以外は重症化の恐れも/やさしい家庭の医学

肝機能障害の総称が「ウイルス性肝炎」。A型以外は重症化の恐れも/やさしい家庭の医学 pixta_37318155_S.jpg病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。

書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。

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いくつかの感染経路がある肝機能障害

「ウイルス性肝炎」

●A型以外は重症化の恐れも

肝炎ウイルスに感染し、それが増殖することによって起こる肝機能障害の総称を「ウイルス性肝炎」といいます。

ウイルス性肝炎にはA型、B型、C型、D型、E型があります。それ以外にもG型、TT型がありますが、こちらは肝炎との関連性が指摘されています。A型は、飲料水や魚介類の生食によって感染します。つまり、経口感染するということです。かつては環境衛生の不備などで流行することが多かったのですが、現在では日本の国内で感染することは少ないといえます。

ですが、東南アジアなどの下水道設備があまり整っていない地域へ旅行に出掛ける場合などには注意が必要で、旅行先から戻ってきてから発症するケースも少なくありません。

感染すると、2~6週間の潜伏(せんぷく)期間を経て発症します。発熱や全身倦怠(けんたい)感、吐(は)き気、食欲不振などの症状が見られ、数日後には黄疸(おうだん)≪白目の部分が黄色くなるなど≫が出てきます。

黄疸が見られるときは入院治療が必要となりますが、軽い場合は2か月以内で自然治癒(ちゆ)するケースが多いので、栄養バランスがとれた食事をし、安静に過ごすことを心掛けましょう。

【ウイルス性肝炎の主な種類】


<A型>
ウイルスに汚染された飲食物(魚介類や生水)を体内に取り入れることで感染。潜伏期間は2~6週間で、1度罹ると免疫ができるため、再び罹ることはない。 

<B型>
血液や体液を介して感染。多くは母子感染によるものだが、性行為による感染例も少なくない。感染すると急性肝炎を発症するが、慢性化することはほぼない。

<C型>
かつては輸血を受けたり、血液製剤を使用した経験がある人が感染していた。急性肝炎を発症するが、症状が軽いので見過ごされることも少なくない。


B型は、血液や体液を介して感染するものです。主として母子感染によるものが多いのですが、不特定多数の人との性交渉が原因になることも少なくないようです。B型に感染してもほとんど発症せず、そのまま治るケースもありますが、ウイルスが体内に留まり続けると慢性肝炎に移行することもあります。

C型もB型と同様、血液と体液を介して感染します。かつては輸血や不衛生な注射針などが原因となって感染していましたが、B型ほど感染力は強くありません。

ただし、感染すると慢性肝炎に移行するケースもありますので、その場合はインターフェロン(生体がウイルスに感染したときに細胞が反応してつくられるタンパク質)による治療を行なったりすることになります。

D型はB型とともに感染するもの、E型は飲料水や肉などの摂取(せっしゅ)によって感染するものです。両者とも日本国内で生活している中での感染例はほとんどありませんが、かつてイノシシの肉を口にしたことからE型に罹(かか)ったという例が見られたことはありました。

A型以外は、重症化すると劇症(げきしょう)肝炎(急性の肝炎の中でも肝細胞の破壊がとくに急激に進行するもの)を起こしたり、慢性化したりします。ウイルス性肝炎の症状が疑われたら、医師に相談のうえ、適切な治療を受けるようにしましょう。

 

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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)

1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。

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『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)


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この記事は書籍 『やさしい家庭の医学 早わかり事典』からの抜粋です

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