病気やけがをしたとき、それに関する用語(病名・症状など)の意味をそもそも知らなかった、なんてことはありませんか? また、時代の流れとともに「ADHD」「ノロウィルス」など新しい用語もどんどん現れています。
書籍『やさしい家庭の医学 早わかり事典』で、病気や健康分野の正しい知識を身につけ、いざというときに役立てましょう。
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正義感が強い人にも起こりやすい
「うつ病」
●抗うつ剤を使う際は気をつけたい
「うつ病」は、脳のセロトニンなどのバランスが崩れることで起こる病気といわれます。
生来(しょうらい)持ち合わせている性格や遺伝、ストレス、身体的要素(病気やホルモン分泌の変化)などが原因になることが多いようです。
うつ病の症状としては、激しく気分が落ち込む、趣味などへの関心の低下、必要以上に罪悪感を感じる、思考力の低下などが挙げられます。また、身体的な症状が見られるのも特徴で、睡眠不足に陥(おちい)ったり、食欲の減退、頭痛、めまい、便秘、下痢などが引き起こされることもあります。
心身ともにこれらの症状が2週間以上続くようであれば、うつ病の疑いがあると考えられます。
うつ病に罹(かか)りやすい人には、几帳面(きちょうめん)な性格の人が多いようです。
正義感が強く、仕事に熱心で、完璧主義者の人もこれに含まれます。自分に対する過度のプレッシャーがストレスを引き起こし、うつ病へと移行するわけです。
また、人生のうえで起こる出来事も、うつ病の原因になる場合が少なくありません。
たとえば、肉親を失った、会社をリストラされた、大病を患(わずら)ったといったことから、出産や引っ越し、子どもの自立なども挙げられます。何か、ふとした拍子にうつ病になることだってあるのです。
うつ病になったときは、心が弱くなっている状態ですので、まずは休養し、心に栄養を与えることが重要です。とにかく、ゆっくりと休みをとることが必要でしょう。
薬物療法もあります。これは、SSRI≪選択的セロトニン再取り込み阻害(そがい)薬≫やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)を使用するもので、症状が完全に回復するまで続けられます。
薬物療法の場合、回復途中で薬の使用を止めてしまうと、またもとに戻ってしまう可能性が高いため、服薬を続けるという難しさがあります。また、先述の抗うつ剤を使用しても逆効果になってしまうという説もあることは事実です。使用する際にはある程度の注意が必要でしょう。
うつ病の治療には、もしかしたら自然に回復するのを待つのがよいのかもしれません。
ただし、その際に重要なのが家族の役割です。うつ病の患者を常にサポートできるのは、家族をおいてほかにありません。
うつ病の人の最悪の症状は自殺へと向かうことですから、根気よく、温かい目で見守ってあげることが何よりも大切なことといえるでしょう。
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中原 英臣(なかはら・ひでおみ)
1945年、東京生まれ。医学博士。ニューヨーク科学アカデミー会員。東京慈恵会医科大学卒業。77 年から2 年間、アメリカ(セントルイス)のワシントン大学にてバイオ研究に取り組む。その後、山梨医科大学助教授、山野美容芸術短期大学教授を経て、現在、新渡戸文化短期大学学長、早稲田大学講師。おもな著書に『ウイルス感染から身を守る方法』(河出書房新社)、『こんな健康法はおやめなさい』(PHP 研究所)、『テレビじゃ言えない健康話のウソ』(文藝春秋)などがある。
『やさしい家庭の医学 早わかり事典』
(中原英臣[監修]/KADOKAWA)
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