「2020年代初頭までに介護離職ゼロ」は言葉だけ。介護離職はますます社会問題化している/鎌田實「だまされない」

pixta_20462629_S.jpgテレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?

だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。

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日本はよみがえろうとしているのか

雇用の問題でもだまされてはいけないことがあります。2017年6月の有効求人倍率は1.51倍になりました。特に正社員については1.01倍と、2004年の調査開始以来、有効求人倍率1倍を初めて達成したと政府は言います。2012年に発足した第2次安倍政権下で、2016年までの4年間、たしかに230万人の雇用が増えました。

しかし、そのうち9割の207万人は非正規労働者なのです。雇用環境は改善しているけれども、若者ですら一度やめると正社員になれる率が低いと言われる現在、非正規で働く人たちが抱く将来への不安はいかばかりのものでしょうか。

また、求人倍率も数字だけを見ると高いですが、その内訳は建築や介護など、肉体的負担がきつい仕事の求人倍率が高く、事務系の職業は0.34倍にとどまっています。

 

将来が見えない

非正規では未来が見えにくい。だから結婚が少ないのです。結婚が少ないから子供が少なくなるのです。子供が少ないから人口が増えず、消費が拡大しないのです。

政府は消費拡大のために物価を2%上げ、デフレから脱却しようと大型の金融緩和を続けていますが、企業が留保するお金が増えるばかりで、賃金の伸びは停滞しています。結局は実質賃金が上がらないために、消費が増えません。働く人たちが心から安心できないから、結婚も子供を産むことも、家を建てることも少なくなるのです。

そして、格差が解消していません。全部つながっているのです。

地方創生、女性活躍と言葉は躍りましたが、自民党政権に代わって5年たっても地方はますます力を失うばかりです。女性活躍と言いますが、社長の数も、国会議員の数も、先進国のなかではきわめて低い数です。全部つながっています。大きな構造改革が必要です。

 

「介護離職ゼロ」は言葉だけ

2020年代初頭までに介護離職ゼロにするという宣言についても、はかばかしい進捗(しんちょく)は見られません。いまだに毎年10万人が介護を理由に離職しているのです。むしろ介護離職はますます社会問題化しているありさまです。

介護離職は悲惨な結果につながりやすい。介護のために離職し、親を看取ったあとに残されたのは空っぽの預貯金通帳だけ、というケースは、決して特殊な例ではないのです。親を看取ったあとの子も、おそらく40代以上でしょう。そこから新たに職を見つけるのに、どれほどの苦労があるのか。幸い新しい職につけたとしても、収入は半減するなどの例が調査により明らかにされています。正規雇用にありつけない人がほとんどです。これでは、この国の景気が本当に上向いているとは思えなくなってしまいます。

いま、日本には65歳以上の人が3500万人いると言われています。そのうちの約770万人が、65歳を超えてなお働いている現実があります。

「生きがいのため」「おもしろいから」「健康のため」など、前向きな目標を持って働いている人もいますが、働かざるをえないから働いているという現実が多いのです。

 

※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら

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鎌田 實(かまた・みのる)さん
鎌田 實(かまた・みのる)

1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。

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『だまされない』
(鎌田 實/KADOKAWA)

社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!

この記事は書籍『だまされない』からの抜粋です

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