テレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?
だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。
◇◇◇
前の記事「日本人は「世界一休みを欲しがらない国民」/鎌田實「だまされない」」はこちら。
日野原先生も鎌田も4時間半睡眠
しかし大企業の社長さんなどは、「私は毎日5時間睡眠です!」と自慢する人も多い。睡眠時間が短くても平気な「ショートスリーパー」と呼ばれる人がいます。僕はと言えば、18歳のときから2016年まで、ずっと4時間半睡眠で過ごしてきました。1時間半ごとに浅い眠りと深い眠りが繰り返されるため、3サイクル目の眠りが浅くなったときに起きやすいのです。
以前、105歳で亡くなられた日野原重明先生とお話をしたのですが、先生も4時間半睡眠でした。でも、これは一般的ではありません。6時間睡眠から7時間半睡眠が、翌日のパフォーマンスをよくするためには適していると思います。睡眠時間はそれぞれでよいのです。ただ、SNSをいじっていて寝不足になっているならよくありません。
僕の一番言いたいことは、「睡眠時間よりも朝の目覚めのよさ」が大事だということ。ヒトの睡眠にはレム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)があり、70~110分のサイクルでレム睡眠とノンレム睡眠が繰り返されると言われます。
睡眠サイクルは人によって違うため、自分自身の眠りのサイクルがどんな時間割になっているのかを意識して、浅い眠りのタイミングで目覚まし時計のセットをするのも大切です。自分のサイクルがわからない人は、平均90分と考えてみましょう。1時間半です。僕は3サイクルの4時間半睡眠で気持ちよく目覚まし時計なしで50年近く起き続けてきました。
寝覚めがよければいい
人間が眠る理由は大きく2つに分けられます。疲れたから眠る場合と、夜になったから眠るという体内のリズムによる場合です。夜勤がある仕事をしている人は、自分のサイクルをつくることが大事です。
睡眠時間に関しては、「5時間睡眠で十分」とか、「8時間以上眠らないと健康に悪い」など、時間の問題で語られることが少なくないのですが、睡眠時間に関して他人と論じ合うことにあまり意味はありません。睡眠時間に関してはあまり神経質にならず、自分のペース、自分に最適な睡眠時間を見つけ、毎朝気持ちよく目覚められればよしとしましょう。
※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら。
次の記事「よい睡眠はうつを予防する/鎌田實「だまされない」」はこちら。
1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。
(鎌田 實/KADOKAWA)
社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!