テレビやネットにあふれるあやしげな健康情報や社会の思い込み。あなたはいつのまにか信じてしまっていませんか?
だまされないでください。
医師にして作家である鎌田實が50年近く医療に携わることで気づいた、健康のための王道をまとめた書籍『だまされない』で、「健康で幸せに生きるという目標」を達成するための技術を身に付けましょう。
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本当に「正しい」睡眠とは
日本人は世界で1、2を争う「眠らない国民」と言えます。たとえば労働政策研究・研修機構が発表した「データブック国際労働比較2017」では、男性の正規雇用者の平日における睡眠時間は、フランスが7時間46分、アメリカが7時間34分なのに対し、日本は6時間50分。フランスより1時間も少ない。アメリカ国立睡眠財団は、65歳未満の成人は毎晩7~9時間、65歳以上では7~8時間の睡眠をとるように推奨しています。
睡眠が短く休日をとらないのは自慢にならない
2016年実施の「国民健康・栄養調査」(厚生労働省)では、20歳以上で1日の平均睡眠時間が6時間未満の人が39.5%。年々増加傾向にあるようです。
睡眠を妨(さまた)げる原因としてあげられたのは、男性は「仕事」がトップ。女性は「家事・育児」が目立ち、男女共通して高い数値を示したのが「就寝前の電話、メール、ゲーム」。心当たりがある人も多いでしょう。
僕が困ったものだと思うのは、日本人が「仕事を休まない」こと。エクスペディア・ジャパンという旅行サイトがアメリカやドイツ、韓国、シンガポールなど、世界28カ国を対象に行った「有給休暇国際比較調査2016」で、日本人の有給休暇消化率が最下位となりました。
奇妙なことに、この調査で「休みが不足している」と感じる人が一番少ないのも日本。日本人は「世界一休みを欲しがらない国民」ということがわかりました。
睡眠薬に依存しない
言うまでもなく睡眠は健康を考えるうえでとても大切です。睡眠時間が短い日本人も眠りに関心が低いわけではなく、患者さんからも、「何時間眠れば健康にいいのでしょう?」という質問をされることが多いです。こんな眠りに関する不安や疑問に答えようとして、たくさんの本や雑誌が出版され、睡眠に関するセミナーなども開かれています。快眠のためのサプリメント、各種の睡眠薬などもあり、どれを選んだらいいか迷ってしまうほどです。軽い睡眠障害の人も含めると、全国で1500万~2400万人の方が睡眠で悩んでいます。
日本は睡眠薬使用大国と言われています。主要先進国のなかで〈ベンゾジアゼピン系〉の薬の使用量が特に多い。よく利用されている薬をあげてみます。コンスタン、レンドルミン、ハルシオン、デパス、セルシン。なかには聞いたことがある薬があるかもしれません。実はこれらの薬は依存性が強いので、できるだけこの種類の薬の服用を習慣化しないことが大切です。
薬に頼らずいい睡眠をとることは、健康のためにはとても重要です。統計的に見ると7時間半くらいの睡眠時間が最も長生きするというデータがあることから、睡眠時間は長すぎても短すぎても健康に悪いと一般的には言えます。
※『毎日が発見』本誌に連載した記事はこちら。
次の記事「睡眠時間より朝の目覚めのよさが大事/鎌田實「だまされない」」はこちら。
1948年東京生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県茅野市の諏訪中央病院医師として、患者の心のケアまで含めた地域一体型の医療に携わり、長野県を健康長寿県に導いた。1988年に同病院院長に、2005年から名誉院長に就任。また1991年からチェルノブイリ事故被災者の救援活動を開始し、2004年からはイラクへの医療支援も開始。4つの小児病院へ毎月400万円分の薬を送り続けている。著書に『がんばらない』『あきらめない』『なげださない』ほか多数。
(鎌田 實/KADOKAWA)
社会は人をだます。人も自分をだます。実は自分の身体すらも自分をだましにかかってくる。そんな環境に生きながらも、幸せに生きるためにはなにを知るべきか、どうすべきか、どう考えるべきか。医師にして作家である鎌田實が、その答えに迫ります。健康問題から社会問題まで、翻弄される人々の目覚めを促す言葉の劇薬!