足の病気として知られている『外反母趾』、その痛みはつらく歩くが嫌になるほどです。悪化をすると靴を履かずとも激しい痛みを感じることも。今回は、山王病院 整形外科部長の青木孝文(あおき・たかふみ)先生に「外反母趾」について教えてもらいました。
つらい痛みを伴う足の病気
包帯一本で改善できる「外反母趾」
主な原因
足の指を動かす筋力の低下
関節が柔らか過ぎる、足が平ら(扁平足)、親指が長い
主な治療法
保存療法※(包帯療法、装具療法、運動療法、物理療法、薬物療法)
手術
※手術以外の治療方法。
足の構造と外反母趾が起こるしくみ
足は片足28個の骨で構成されている。それぞれの骨は靱帯で連結され、さらに筋肉で支えられることによって、縦と横のアーチが形成されている。
「外反母趾」は、本来まっすぐであるべき母趾=足の第一指(親指)が第五指(小指)側に傾き、つけ根の関節が突き出た病態を指します。
突き出た部分が靴に当たり、しばしば痛みを感じます。
進行すると靴を履かなくても痛みが出るなど、日常生活に支障を来します。
圧倒的に女性に多い病気です。
足の裏には縦のアーチと横のアーチがあり(上記参照)、全身の体重を支え、衝撃を吸収するバネやクッションの役割をしています。
しかし加齢などにより、アーチをキープするための靱帯や筋肉の柔軟性が低下すると、足の裏のアーチが壊れて、足全体が横に広がる「開張足」となります。
それによって足の指先を外側にひねる筋肉と内側に広げる筋肉のバランスが保てなくなり、外反母趾が起こるのです。
診断ではレントゲンで外反母趾角(基節骨と中足骨の軸の角度)を測定します。
20度以上あれば、外反母趾と診断されます。
角度と痛みは必ずしも一致しません。
治療法は大きく分けて、保存療法と手術の2種類です。
保存療法のうち、即効性のある薬物療法は、一時的に痛みを和らげる対症療法であり、装具療法や運動療法にも決定的なものがありません。
手術は患者さんの負担が大きく、再発の恐れもあります。
私がおすすめしているのは包帯療法(下記参照)です。
手軽に実行できて、効果の高い方法です。
弾力性のある包帯で足の甲全体をやんわり巻くだけで、足の裏の筋肉のバランスが整い、痛みが軽減します。
足指を動かす運動も併用するとさらに効果的です。
早い段階で始めるほど、早く悪化を食い止めることができるので、ぜひ早めに取り組んでみてください。
モートン病などにも効果があります。
これらのセルフケアを半年間行っても効果がない場合は、受診をおすすめします。
セルフケアで症状を改善!
弾力包帯を巻く
●目的は足の指を動かす筋肉に弾力を持たせること
●医療用弾力包帯はネットショップで購入可能
(「弾力包帯」で検索。製品名は「エラスコット」「ククロン」「エルウェーブ」など。ドラッグストアでは購入困難)
●基本的に夜寝ている間だけでよい。日中も巻く場合は土踏まずのみでよい
●ポイントは巻く強さ。弾力があるので伸ばしたくなるが、 引っ張らずにやんわり包み込むように巻くこと!
(1)5cm幅の医療用弾力包帯(伸縮率200%)を1本用意する
(2)足の第一指のつけ根の関節と第五指のつけ根の関節をやんわり包み込むように包帯を巻く
(3)足の甲全体をくるむように6~8回巻いてテープなどで留める
足指を動かす
●日頃から足の指を動かして、指先や甲の筋肉を鍛えることが大切
●入浴中(湯船に浸かりながら)や入浴後に行うと効果的
(1)いすに座って脚を伸ばす
(2)足の指をぎゅっと握って、パッと開く。10~20回くり返す(1日1回程度)
同時に行うとさらに効果的!
〈 足のかかと上げ体操 〉
(1)立ったまま壁などに手をつき、両足のかかとを上げ、3秒間この姿勢をキープ
(2)かかとを下ろして(1)に戻り、同様の動作を10~20回くり返す(1日1回程度)
※その他、普段から歩くときに第一指のつけ根が着地しているか意識するとよい
取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子