加齢による筋力の低下にともない、なかなか治らなくなる足裏の痛み。足の指をうまく使って歩かないと、「足底腱膜炎」や「モートン病」、「種子骨障害」がつながります。そこで今回は、船橋整形外科病院 スポーツ医学・関節センター スポーツ下肢部門部長 高橋謙二(たかはし・けんじ)先生に、「足裏の痛みを予防するストレッチ&生活習慣と治療法」についてお聞きしました。
【前回】加齢による筋力低下と足指の使い方が要因! 「足裏の痛み」セルフチェック
治療にはさまざまな選択肢がある
足底腱膜炎と診断された場合は、ストレッチなどの運動療法を行いながら、足の裏にかかる圧力を和らげるため、ソールの厚い靴の使用やインソールの装着をすることが多いです。
そして痛みを軽減するための局所治療としてステロイド注射、さらには、圧縮した空気の振動で痛みを軽減する拡散型圧力波治療が行われているそうです。
このような治療を受けて6カ月以上たっても痛みが改善しないときには、体外衝撃波治療(保険適用)を行うこともあります。
衝撃波で痛みを和らげ、足底腱膜の組織の修復も促す効果があります。
しかし、それでも痛みが取れないときには手術の選択肢もあるそうです。
「重症の足底腱膜炎でも、体外衝撃波治療で痛みが緩和され、完全に治ることもあるため、手術を行うケースはかなり少なくなっています」と高橋先生は説明します。
姿勢を正し足の筋肉強化も大切
足の裏の痛みはロコモティブシンドロームにつながり、歩行困難が続くとフレイル(心身虚弱)な状態にもなりかねません。
早めに医療機関を受診し、原因を突き止めて治療を受けることがなによりでしょう。
同時に、日頃から足の裏の健康を守ることも大切といえます。
「足は地面に接する唯一の器官です。バランスを取ったり、多くの関節が動くことで衝撃を吸収しています。また、足の指で地面をつかみながら前へ進む機能が維持されていることが、健康な足と言えると思います。そのためには足の周りの筋力だけでなく、体幹を強くしたり、良い姿勢を維持したりすることが日常より求められます」と高橋先生。
前屈みの姿勢では、背骨のS字カーブが崩れて重心が後ろになり、かかとに体重がかかることで足の裏の土踏まずのアーチも崩れやすくなります。
扁平足のような状態で歩くとすり足のようになり、足の指をうまく使うことができなくなります。
つまり、無意識で歩いていると、足の指を使わずにかかとに負荷をかけるような歩き方になってしまいやすいのです。
「歩くときには意識して足指を使い、踏む意識持つことが重要です。足指を使うには姿勢を正し、ふくらはぎの筋肉を鍛えることも必要です」と高橋先生は話します。
歩く姿勢を美しく保ち、足の裏の健康も維持しましょう。
《「足の痛み」のいろいろ》
「モートン病」
歩くときの踏み返しで足の指が十分に使えない症状です。指の下の方に位置する中足骨に負荷が集中すると、その下の靱帯が圧迫され、靱帯の下の神経も圧迫され痛みが生じます。中指や薬指の下の辺りが痛むのが特徴です。局所を安静に保つ保存的療法や手術などの治療法があります。
「種子骨障害」
足の裏で、親指の付け根の盛り上がった部分が痛む種子骨障害は、子どもの場合はスポーツ障害、中高年の場合は外反母趾に伴い発症することが多いそうです。痛みの元となる活動を制限し、湿布や消炎鎮痛薬、インソールなどを使用します。痛みが強い場合はステロイド注射を行います。中指や薬指の下の辺りが痛むのが特徴です。局所を安静に保つ保存的療法や手術などの治療法があります。
「足裏の痛み」を予防するストレッチ&生活習慣と治療法
ストレッチ
1.足底腱膜とアキレス腱を同時に
(1)座って右足をひざの上にのせ、右手で足の指を、左手でかかとを押さえる
(2)足の指を反らせて10秒間キープ
(3)一度ゆるめて、また反らせて10秒間キープ(痛くない程度に、息を吐きながら行いましょう)
左右10回ずつで1セット。1日3回行いましょう
2.ゴロゴロゴルフボール
(1)ゴルフボールを足の裏に当てる
(2)痛い箇所を避け、足底腱膜全体を刺激するようにゴロゴロ動かす
1回1分程度。1日3回行いましょう
生活習慣
1.靴の選び方は大事です!
ウォーキングシューズのようなソールが厚く、衝撃吸収性の良い靴を。
2.歩くときは足の指を意識しましょう
歩くときには意識して足趾(足指)を使う(踏む意識を持つ)ことが重要です。
治療法のいろいろ
薬物療法
足の裏の痛みが強いときには消炎鎮痛剤の塗り薬や貼り薬、重症の場合はステロイド注射を行います。同時に靴にはインソールを入れます。
運動療法
治療の主軸になるのが運動療法です。硬くなった足底腱膜をやわらかくするためのストレッチ、足の指などの筋トレが指導されます。
拡散型圧力波治療
足底腱膜炎の治療法の一つとして近年普及しています。圧縮した空気の振動で血流や組織の代謝を促し、痛みを取り組織を修復します。
体外衝撃波治療
運動療法や薬物療法などを行って6カ月以上治らない重症の場合に保険適用されます。重症度が高くても完治可能な治療法です。
取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史