足の血管が浮き出る、ボコボコしている、むくみがひどい...。それらの症状は「下肢静脈瘤」が原因かもしれません。放置しておくと重症化する場合もある「下肢静脈瘤」ですが、軽症のうちはセルフケアで何とかなります! そこで今回は"血管の名医"である広川雅之先生の著書『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』をご紹介。自分の症状はセルフケアで治るの? 放っておくとどうなるの? 別の病気の可能性は? 「下肢静脈瘤」に関する疑問を名医が徹底解説します。
※本記事は広川雅之著の書籍『血管の名医が教える 下肢静脈瘤の治し方』から一部抜粋・編集しました。
【前回】下肢静脈瘤は「血栓」の病気。脳梗塞や心筋梗塞の可能性はある? ボコボコ足の不安を医師が解消
里見さんは60代の主婦。
足に血管が浮き出ていることを娘に指摘され 、テレビで見た下肢静脈瘤では? と思い、広川先生のクリニックにやってきました。
下肢静脈瘤がひどくなると、
痛みやかゆみが生じ、皮膚が変色することも
里見さん 「そういえば昔、友だちのお父さんが、血管がボコボコになったといっていたことを思い出しました。男性でもなるんですね」
広川先生 「男女かかわらず、下肢静脈瘤は発症します。女性のほうが発症率は高いですが、男性でも遺伝や立ち仕事でリスクが高くなります。飲食業や理髪店とか」
里見さん 「その方は板前さんだそうです。確かに立ちっぱなしの仕事ですよね」
広川先生 「男性は、あまり見た目を気にしないので、仕事を休んで病院で診てもらうほどじゃない、と放置してしまうことが多いので重症化することが多いですね」
里見さん 「重症化ってどうなるんですか?」
広川先生 「皮膚に炎症が起きて、かゆみや痛みがでることがあります。さらに潰瘍ができてしまうケースもありますね」
里見さん 「潰瘍? そうすると足を切断したりするんですか?」
広川先生 「いえいえ、そうではありません。静脈瘤の潰瘍は足の切断にはなりません。しかし、痛みがあったり、出血する場合もあるので日常生活にかなり支障が出ます。病院で治らないといわれたり、あきらめてしまう人もいますが、正しい治療をすればちゃんと治ります」
里見さん 「私もそんなふうになる可能性があるんでしょうか?」
広川先生 「里見さんはまだ軽症ですから、大丈夫ですよ。今ならセルフケアで十分回復できるでしょう。ただ重症ではなくても、むくみやだるさ、足のつりなどの症状でお困りの人は、レーザーや高周波治療などの手術を選ぶ方もいます」
セルフケアでできること
〇むくみや重だるさの解消
〇悪化防止、再発予防
〇血流促進
セルフケアでできないこと
×静脈の弁の修復
×浮き上がった血管の修復
×皮膚の炎症にまで進行した静脈瘤の改善
治療は日帰りも。保険適用で費用面も安心
里見さん 「治療というのは、どういうことをするんですか?」
広川先生 「弁が壊れて血液がうまく流れなくなった静脈の血流を止める治療になります。いくつか方法があります」
里見さん 「血管の治療と聞くと怖いんですけど」
広川先生 「そうかもしれませんね、でも、大げさなものではありません。静脈の中に細い管を入れ、レーザーや高周波電流(ラジオ波)で焼く治療や、最近では医療用の瞬間接着剤、いわゆるアロンアルファで静脈をふさぐグルー治療があります。昔から行われている静脈を引き抜くストリッピング手術もありますが、最近はあまり行わないですね」
里見さん 「どれもどう考えても痛いんじゃないかと思うんですが ...」
広川先生 「いちばん新しいグルー治療は、管を入れる場所に局所麻酔をするだけなので、そのときに1回チクッとする程度ですよ。レーザーや高周波治療も、焼く前に局所麻酔をするので、治療中は痛みはありません。ストリッピング手術も今は局所麻酔でできるようになっています。治療もいずれも日帰りでできて、仕事にもすぐ戻れます」
里見さん 「治療を受けたい場合、どの治療法にするか、どう選べばいいんですか?」
広川先生 「エコー検査の結果による下肢静脈瘤の状態を元にして、治療に対するご希望や健康状態などを総合的に考えて、その人にとっていちばんいい方法を選択してもらっています」
里見さん 「辛い症状を早く解消したいとか、見た目をきれいにしたいという人もいるんでしょうね。手術や治療は高額なんですか?」
広川先生 「どれも健康保険が適用されますから、高額になることはないですよ。例えば、レーザー治療やラジオ波治療の場合だと、保険診療ですので自己負担額は1割負担で約1万2000円、3割負担で約3万5000円ですね」