これから雨の日が増えますが、座りっぱなしの生活が多くなると、足のむくみが気になりませんか? 足のむくみを感じるのは、筋力が低下してふくらはぎのポンプ機能がうまく働かなくなっているから。また、心不全や内臓疾患など重大な病気が原因で足がむくむことも...。今回は、横浜血管クリニック院長 林 忍(はやし・しのぶ)先生に「足のむくみ」についてお聞きしました。
主な要因
ふくらはぎの筋肉の動きが少ない
必要な栄養素の不足
塩分・水分の過剰摂取
内臓疾患や甲状腺機能低下症など
主な対処法
足のマッサージや運動
弾性ストッキングをはく
食生活の改善
病気を根本的に治療する
足のむくみはどうやって起こる?
【筋ポンプ機能】
このポンプ機能が何らかの原因で働かなくなると血液が停滞して足がむくむ。
夕方になると足がむくむと感じる人は多いのではないでしょうか。
高齢になると、筋力が衰える上、運動量も低下するため、「筋ポンプ機能」(上図参照)が低下して、足のむくみが起こりやすくなります。
昨今のコロナ禍で、さらに拍車がかかっていることが懸念されます。
筋ポンプ機能とは、ふくらはぎを動かすことで筋肉が収縮と弛緩を繰り返して血液を押し上げる働きのことです。
血液は動脈を通って全身の隅々まで酸素や栄養を送り、静脈を通って二酸化炭素や老廃物を回収する働きがありますが、足の静脈では重力に逆らって血液を下から上へと送らなければなりません。
そのためには、この筋ポンプ機能の他、血液が逆流するのを防ぐ弁の働きの二つが必要です。
しかし何らかの原因によってこれらの機能がうまく働かなくなると、血液が滞って血液中の水分が血管の外に漏れ出し、足のむくみが生じるのです。
さまざまな原因がある
放置できないむくみも
一概にむくみといっても食生活などによる一時的なものもあれば、慢性的な病気によるものなど、原因は多岐にわたります。
足がむくむ原因
【一時的なもの】
●長時間同じ姿勢を続ける
筋肉のポンプ機能が働かなくなる。足の静脈に血栓ができることもある(深部静脈血栓症)。血栓ができると静脈の血液が心臓に戻りにくくなる。
●運動不足などによる筋力の低下
●過度なダイエットや肥満
過度なダイエットで足の筋肉が弱る。肥満は脂肪によるむくみを起こす。
●塩分や水分の摂り過ぎ
塩分には水分を抱え込む性質がある。
●カリウム・ビタミンB1・たんぱく質が不足
カリウムは塩分の排出を促す。ビタミンB1不足で脚気になるとむくみが起こる。たんぱく質不足は血管内の水分調整が利かなくなる。
●冷え
血行不良によって、血液やリンパの流れが滞る。
【慢性的な病気が原因】
●心不全
心臓の機能が低下して血流が滞り、血液中の水分がしみ出てむくみを起こす。
●肝臓や腎臓の障害
血中のアルブミンというたんぱく質が低下し、血管内の水分調整が利かなくなる(アルブミンは血管に水分を取り込んだり排出したりしながら浸透圧を調整する)。
●甲状腺機能低下症
甲状腺ホルモンの不足により、体中の物質や水分がうまく代謝できなくなる。
●リンパ浮腫
リンパ管を流れるリンパの流れが滞り四肢にたまる。がんの術後に起こることが多い。
●下肢静脈瘤
静脈弁が壊れて、逆流した血液が足にたまる。
足のむくみを改善する生活習慣
(1)マッサージ・ストレッチ
血液やリンパの流れを促進する。マッサージはなでるように。
(2)運動
ウォーキング、階段の上り下り、スクワットなどが効果的。
(3)足を少し高くして寝る
(4)こまめなむくみケア
〈手足ブルブル〉仰向けの状態で手足を上に上げて揺らす(就寝前、1〜2 分間)。他に、かかとの上げ下げや足首回しも効果的。
(5)弾性ストッキングの使用
足を圧迫してむくみを軽減する。長時間の移動など同じ姿勢が続くときに使用する。
(6)適度な水分・塩分の摂取
むくみの主成分である水分や塩分は適量に。
(7)カリウム、ビタミンB1、たんぱく質の積極的な摂取
〈カリウム〉フルーツ、いも類、肉類、魚類
〈ビタミンB1〉肉類、豆類、穀類、ナッツ類
〈たんぱく質〉肉類、魚類、乳製品、卵、大豆製品
むくみが片側のみ、急激である、長引く、熱や痛みを伴うなどの場合は、重大な病気が隠れていることがあります。
早急に医療機関を受診することが重要です。
診断は症状、血液検査、腹部と下肢の超音波検査の結果などに基づいて行われます。
全身の病気が疑われる場合は、根本的な治療が必要です。
一時的なむくみは、セルフケアで改善できる場合もあります。
上に紹介した生活習慣を心がけましょう。
予防にもつながります。
家の中でも実践できるので、ぜひ試してみてください。
一時的なむくみでも「深部静脈血栓症」によるものは要注意です。
長時間同じ姿勢を続けるなどで静脈に血栓ができることで起こります。
血栓によって静脈の血液が心臓に戻りにくくなり、足にむくみが生じます。
血栓が足の静脈から剥がれて心臓や肺に到達すると、呼吸困難やショック状態を引き起こし、命に関わることもあります。
十分な水分摂取や足をこまめに動かすことの他、弾性ストッキングをはくなど、予防に努めることが大切です。
弾性ストッキングは市販品もありますが、医療機関で相談しながら、症状や体格に応じて適切に選択し、使用することをおすすめします。
取材・文/古谷玲子 イラスト/片岡圭子