成人女性の4〜5人に1人、特に40〜50代の発症が多い下肢静脈瘤。脚の静脈の血管が膨らんだり、浮き出たりする病気です。正しく知らないために、長く悩み続けている人も多くいます。そこで今回は、横浜血管クリニック院長の林 忍(はやし・しのぶ)先生に「下肢静脈瘤の症状を改善するセルフケア」について教えてもらいました。
【前回】ふくらはぎが重い、血管が浮き出ている...もしかしたら「下肢静脈瘤」かも? まずはセルフチェックを
早めに対策 セルフケアで症状を改善!
静脈瘤が軽度であればセルフケアで症状を改善できます。
ポイントは「脚にたまった血液を心臓に戻すこと」「脚の静脈の負担を軽くすること」「筋ポンプ作用を増強すること」の3つ。
再発防止にもつながります。
(1)体操をする
毛細血管が刺激されて、手足にたまった血液が心臓に戻って、血流が促される。
かかと上げ下げ運動
座った状態でかかとの上下運動をする。20回程度繰り返す
※立って行うときはバランスを崩して転倒しないよう、テーブルなど安定したものにつかまりながら行う。
手足ぷるぷる体操
1.仰向けになる
2.両手両足を天井に向けて上げる
3.手足の力を抜いて両手両足を小刻みに1~2分間ゆする
※起床後と就寝前にやるとよい。
(2)マッサージをする
脚のむくみやだるさを改善する。もむのではなく、心臓の方に向かってやさしくなでるようにマッサージをするのがポイント。
上の体操と組み合わせるとさらに効果的。
ふくらはぎ&太ももマッサージ
1.床に座った姿勢で、両方の手のひらで足首を両側から包み込む
2.密着させながら下から上へ、ひざに向かってさすり上げる
3.上まできたら手を放し、もう一度足首から行う。これを1分程度繰り返す
4.次にひざ上から脚の付け根に向かってさする。同じく1分程度繰り返す
5.反対側の脚も同様に行う
(3)長時間の立ちっぱなしは避ける
立ち仕事が続く場合などには、1~2時間に1回5分程度、脚を心臓より高くして休息したり、足踏みや歩き回ったりするなど、できるだけ脚を動かすことを心がける。
(4)適度に運動する
散歩、ジョギング、階段の上り下り、スクワットなどで、ふくらはぎの筋肉を鍛えると、筋ポンプ作用が増強され、脚の血液が心臓へ戻りやすくなる。
(5)足を少し高くして寝る
座布団などで足元を15~20cm高くして寝ると、脚にたまった血液が心臓に戻りやすくなる。
(6)正座はしない
正座は下肢の血流を悪くするのでできるだけ避ける。いすに長く座らなければならないときは、座ったままで足首を動かすとよい。
(7)外傷を防ぐ
下肢静脈瘤になると、ささいな搔き傷・虫刺されなどでも色素沈着や下肢潰瘍などを引き起こす。
水虫も悪化しやすくなるので、こまめに足を洗うなど清潔に保つこと。
(8)湯船に浸かる
体に水圧がかかることによってふくらはぎの筋ポンプ作用を促し、脚にたまった血液が心臓へ戻りやすくなる。
夏場もシャワーで済まさず、しっかり湯船に浸かるとよい。
(9)太り過ぎに注意
肥満は腹部での静脈の血流が悪化するなどして、下肢静脈瘤になりやすくなるので、体重のコントロールを。
肥満は運動不足も招き、筋ポンプ作用が働かなくなるので要注意。
(10)弾性ストッキングを着用する
足首にいちばん圧をかけ、ひざにかけて段階的に弱くすることで、血液が下から上に上がる設計になっているストッキング。
外側から脚を圧迫し、静脈にたまっている血液を心臓に戻しやすくする。
長時間の移動や同じ姿勢が続くときに使用するのがおすすめ。
医療機関で相談しながら症状や体格に応じて適切に選択・着用することが大切。
値段は3000~5000円(保険適用外)。
取材・文/古谷玲子 イラスト/山﨑美帆