女性が訴える症状の第1位!「肩こり」と「肩の違和感」セルフチェック

厚生労働省の2019年「国民生活基礎調査」によれば、女性が訴える症状の第1位が肩こり。男性でも第2位です。つらい症状のときは、何らかの重大な異変が潜むことがあるので注意が必要。そこで今回は、千葉大学医学部附属病院 整形外科 准教授の落合信靖(おちあい・のぶやす)先生に、「肩の痛みの原因」についてお聞きしました。

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「肩の痛み」セルフチェック

□ 洋服の着脱、ボタンの掛け外しがうまくできない
□ 肩や腕が痛くて腕が上がらない
□ 肩を動かしていないのに痛みがある
□ 腕や手にしびれがある
□ スマホを見たり、パソコンで作業することが多い

同じ姿勢を続けていると、首から背中の筋肉がこって肩こりにつながります。腱板断裂など肩の関節に問題があると痛みに加え、腕がうまく上がらなくなります。一方、首の頸椎に問題があると腕や手にしびれが生じやすくなります。受診して原因を突き止めましょう。


60歳頃から発症しやすい
肩関節の異変とは

家事や仕事などで同じ姿勢を続けていると、肩がこって痛みが走るようなこともあるでしょう。

肩こりに悩む人は多く、厚生労働省の2019年「国民生活基礎調査」によれば、女性が訴える症状の第1位となっています。

男性も第2位です。

しつこい肩こりは、寝ているときにも痛く、一晩たっても治らないことがあります。

そんなつらい症状のときは、単なる肩こり以外に何らかの重大な異変が潜むことがあるので注意が必要です。

「肩こりは、首から背中の僧帽筋や肩甲挙筋が硬くなり、血流が悪くなって筋肉疲労を起こした結果、発症します。つまり、肩こりには筋肉が関わっているのです。一方、60歳前後からは、肩周辺の腱板などの不具合による肩関節の炎症や痛みで、腕が上がらないなどの症状が出やすくなります」と話すのは、千葉大学医学部附属病院の落合信靖先生です。

加齢に伴って腱板は弱くなる

腱板は、腕の骨と肩甲骨をつないでいます。

腱板の働きによって、肩をスムーズに動かすことができます。

しかし、腱板は、加齢とともに弱くなり、それに伴い不具合が生じやすくなるのです。

例えば腕や肩を上げたときに、肩甲骨の上にある肩峰や、烏口肩峰靱帯などに腱板がぶつかることを繰り返すインピンジメント症候群があります。

「インピンジメントは、日本語で衝突という意味です。加齢に伴い生じやすく、腱板が切れる腱板断裂の要因ともいわれています。また、腱板に石灰がたまる肩石灰性腱炎も発症しやすくなります」と落合先生は説明します。

中高年が発症しやすい五十肩は、インピンジメント症候群などとは異なり、肩関節の袋のような役割を担う「関節包」に炎症が起こり、硬くなることで発症すると考えられています。

腱板断裂を放置すると治療も難しくなる

五十肩は60代以降でも発症し、ときには夜も眠れないほどの痛みに襲われることもあります。

しかし、一般的に徐々に痛みは和らぎ、自然に治ることが多いです。

「五十肩は、肩の可動域が狭くなるので万歳のポーズはできなくなります。それとは異なり、インピンジメント症候群や腱板断裂は、肩の激しい痛みがあっても、肩を上げようと思えば上がります。しかし、一般の方が症状だけで見分けるのは難しいのです」と落合先生は指摘します。


《「肩の痛み」は、主に4つに分けられる》

インピンジメント症候群

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主な特徴と原因
腕や肩を上げたときに、腱板が肩甲骨の一部や靱帯にぶつかって痛みが走ります。

治療法・改善策
痛みを軽減する薬や、肩関節の動きのリズムを正すリハビリ、ひどい場合は手術も。

五十肩

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主な特徴と原因
肩の関節包に炎症が起こり硬くなり、腕が動かせなくなって痛みが走るようになります。

治療法・改善策
消炎鎮痛薬で痛みが落ち着くまで安静にし、その後、症状に合わせたリハビリを行います。

肩石灰性腱炎

女性が訴える症状の第1位!「肩こり」と「肩の違和感」セルフチェック 2210_P079_03.jpg主な特徴と原因
腱板内にリン酸カルシウム結晶が沈着することで痛みが生じ、腕が上がらなくなります。

治療法・改善策
薬、体外からの衝撃波で石灰を砕く体外衝撃波療法、それでも改善しないときには手術も。

腱板断裂

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主な特徴と原因
加齢や激しいスポーツで肩関節の腱板が切れ、激しい痛みが生じたり肩を動かしにくくなります。

治療法・改善策
薬やリハビリのほか、症状に合わせて腱板をつなぐ手術、人工関節に置き換える手術も。

取材・文/安達純子 イラスト/堀江篤史

 

<教えてくれた人>

千葉大学医学部附属病院 整形外科 准教授
落合信靖(おちあい・のぶやす)先生

医学博士。1998年千葉大学医学部卒。米国UCSD留学などを経て2018年より現職。日本整形外科学会専門医、日本スポーツ協会認定スポーツ医、日本肩関節学会代議員など。

この記事は『毎日が発見』2022年10月号に掲載の情報です。

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