60歳を過ぎても続く「ホットフラッシュ」。治療法や自分でできる改善法は?

国立長寿医療研究センターなどの研究チームは、2021年秋、閉経に伴うホルモンの変化で起こる「ホットフラッシュ」の有症率や不眠症状との関連を発表。60歳以降も約2割の女性に症状があることが分かりました。そこで今回は、東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座 教授の寺内公一(てらうち・まさかず)先生に「60歳を過ぎても続くことがあるホットフラッシュ」について教えてもらいました。

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ホットフラッシュとは

主に閉経前後数年間にみられる体や顔のほてり、のぼせのこと。自律神経の調整がうまくいかず、血管の収縮と拡張のコントロールができなくなることが原因です。就寝中に起こった場合、何度も目が覚め、ひどい場合は睡眠障害となるおそれも。

  • 急に顔が熱くなる
  • 汗が止まらなくなる
  • 寝汗がひどくてよく眠れない
  • 夜中に暑くて目が覚める など

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※国立長寿医療研究センターの発表資料より作成

治療は?

ホルモン補充療法(HRT)
閉経後の女性に不足している女性ホルモン(エストロゲン)を補い、不快な症状を予防・
改善します。開始年齢は閉経後10年未満、かつ60歳未満が安心。閉経後、長年経過してか
らの初めての治療開始は、心筋梗塞などのリスクが高まるので慎重に検討を。

漢方薬
当帰芍薬散、加味逍遥散、桂枝茯苓丸は、三大婦人漢方薬といわれ、更年期の症状に有効だ
とされています。ほてりやのぼせには、加味逍遥散、桂枝茯苓丸が使われることが一般的。

その他の対症療法
抗うつ薬や抗不安薬のほか、頻尿や尿失禁などの治療に使われる抗コリン薬が処方される
こともあります。

自分でできる改善法は?

●更年期症状に効果がある食品を多く摂る

大豆イソフラボン

60歳を過ぎても続く「ホットフラッシュ」。治療法や自分でできる改善法は? 2204_P090_02_W500.jpg更年期の症状に効果があるといわれ、納豆、豆腐、油揚げ、おから、きな粉、みそなどの大
豆加工品で摂れます。

ビタミンB6

60歳を過ぎても続く「ホットフラッシュ」。治療法や自分でできる改善法は? 2204_P090_03_W500.jpg赤身の魚や肉、レバー、バナナなどに含まれます。何か一つの食品を摂るのではなく、バランスよく食べるのがおすすめ。

●他にも

鍼灸、気功、ハーブ(ハーブティー、アロマグッズ)など


寺内公一先生らによる2年間にわたる調査(40~91歳の一般女性1152名対象)では、4人に1人がホットフラッシュを経験していると判明。

「閉経期(※1)には、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下しますが、低下すること自体よりも分泌が"揺らぐ"ことがホットフラッシュの主な原因です。5年ほど続く人が多いですが、約2割は60歳以上も一定の症状が続くことが分かりました。症状が長年続くのは、脳の視床下部にある血管運動神経系の司令塔が誤って活発な状態が続いてしまうことが一因と考えられます」と、寺内先生。

現状、血管運動神経系に直接作用する治療法はありませんが、新薬の開発も進んでおり、将来的には根治療法も期待できそうです。

ホットフラッシュと不眠の関係も密接だと言います。

「ホットフラッシュのある人は、そうでない人に比べて、寝つきが悪い、夜中に頻繁に目覚めるといった不眠症状のリスクが高まります」。

60歳を過ぎてホットフラッシュや不眠症状が続くとなると、生活に支障をもたらすことも。

「更年期の症状は、ほてりやのぼせ、不眠のほか、うつ症状など多様です。年齢が高いから関係ないと思わず、まずは受診を。別の病気が隠れている可能性もあります」。

医療機関を受診する際は、中高年女性のヘルスケアに詳しい専門医へ。

日本女性医学学会のホームページで探すことができるので活用を。

※1 閉経の前後10年間。一般的には、45~55歳頃。

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取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) イラスト/坂木浩子

 

<教えてくれた人>

東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 茨城県地域産科婦人科学講座 教授 
寺内公一(てらうち・まさかず)先生

医学博士。東京医科歯科大学医学部卒業。2005年米国エモリー大学リサーチフェロー。20年より現職。更年期障害や骨粗鬆症を専門とし、数々の賞を受けている。

この記事は『毎日が発見』2022年4月号に掲載の情報です。

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