命に関わるさまざまな病気を引き起こす高血圧。国内に4300万人はいると推計される一方、対策が続かなかったり放置したりしている人は3100万人。そこで10人の名医が本気ですすめる、最新の高血圧を治す方法をご紹介。今回は埼玉医科大学医学部 教授の牧田 茂(まきた・しげる)先生に、「血圧を下げる6つのルール」についてお聞きしました。
4300万人が患う国民病
生活の見直しが改善の一歩
日本に4300万人はいると推計される高血圧。
脳卒中や心疾患など、命に関わるさまざまな病気を引き起こすことが知られていますが、生活を変える煩わしさもあってか、対策が続かない人や放置している人など、管理不良の人は3100万人といわれています。
「高血圧を放置していると、ゆくゆくは体のどこかに不調を引き起こします。そうならないためには、病気になる前の段階で生活習慣を見直すことが何よりも大切です」と、牧田茂先生。
運動、食事、呼吸法など、10人の名医が本気でおすすめする血圧リセット術をはじめましょう。
血圧を下げる6つのルール
【ルール1】120mmHg超えは生活習慣を見直す
高血圧の基準値は、診察室血圧が140/90mmHg、家庭血圧が135/85mmHgですが、最高血圧が120mmHgを超えたら、生活習慣の見直しを。「塩分は適量か」「肥満ではないか」「過度なストレスはないか」「運動は足りているか」「睡眠は十分か」の他、禁煙も重要です。早期に対策することで改善が見込めます。
【ルール2】心血管病のリスクを知る
高血圧の状態が続くと、強い圧力を受け続けた血管は動脈硬化に陥ります。すると、血管の内皮細胞が傷つき、動脈硬化が進行するため、さらに状態は悪化。次第に脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まります。動脈硬化は全身のあらゆるところに発症するので、腎臓病や下肢の閉塞性動脈硬化症などを引き起こすことも。
【心血管病が将来起こる確率】
※日本高血圧学会 「高血圧基準に関するパンフレット」より
対象年齢層:40~64歳、日本人約5万人
【ルール3】血圧測定は習慣にする
血圧コントロールのためには、日常的な血圧測定が欠かせません。できれば毎日、起床時と就寝前の2回は測定し、朝と夜の平均値を記録しましょう。面倒な人は、週に1度でもよいので計測を。定期的に計測して年単位での変化を知ることで、血圧が上昇しているのか、正常に保てているのかを知ることができます。
【ルール4】イライラは高血圧の原因に
血圧を上がりにくくするためには、ストレス対策も必要です。イライラしがちな人やストレスをため込みやすい人は、自分の思考のクセや感情を観察。好きな音楽を聴いてくつろいだり、趣味を楽しむなどの工夫を。また、冬場は家の中の温度差をなくして体へのストレスを減らし、血圧の急上昇を防ぐことも重要です。
【ルール5】家の中でもうろうろ歩き回る
コロナ禍で外出が減り、家の中で動かない人が増えています。体を動かさないと足腰の力が衰え、血管の老化にも加速がかかります。例えば、「立ち上がって歩き回る」「家の中の階段を上り下りする」「家事をしながらうろうろする」といったことだけでも十分。1時間に1回は、立って動くことを意識しましょう。
【ルール6】足腰を丈夫にして血圧をコントロール
血圧を下げるためには、ウォーキングなどの有酸素運動が役立つことが分かっています。有酸素運動を行うためには、足腰が丈夫なことが欠かせません。特に、ふくらはぎの血流を良くすること、太ももの大きな筋肉をつけることが大切です。転倒予防の他、サルコペニア(※1)やフレイル(※2)などの老化予防にもつながります。
※1 加齢により筋肉量が減少し、筋力や身体機能が低下している状態。
※2 虚弱という意味で、加齢に伴い心身が老い衰えた状態。早期の対策で元に戻る可能性もあります。
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム)、イラスト/鈴木衣津子