「ちょいもれ」から、ジャーと出る「尿失禁」まで、その原因とは?/頻尿・尿もれ・夜間頻尿の治し方

がまんできない突然の尿意でもれてしまうのが「切迫性尿失禁」

突然、激しい尿意におそわれることを尿意切迫感といいます。

比較的重い症状のひとつで、繰り返し起こる場合は過活動膀胱の疑いが強くなります。

尿意切迫感があり、トイレに間に合わずにもれてしまうことを、切迫性尿失禁といいます。

特に女性の過活動膀胱では、切迫性尿失禁をともないやすくなります。

過活動膀胱の症状でも解説しましたが、尿意切迫感は膀胱に尿をためられないことで起こります。

「トイレに行きたい!」と感じるのは、通常300mlほどが膀胱にたまった状態ですが、過活動膀胱になると、そんなに尿をためられず、ちょっとたまっただけでも膀胱が収縮して尿を排出してしまおうとするので、激しい尿意におそわれるのです。

切迫性尿失禁は、腹圧性尿失禁と違い、もれる量が多いのが特徴です。

いきなりジャーッと出てしまうので、本人のショックは大きく、また起こるのではないかという不安感や恐怖感から外出も控えるようになってしまいます。

そうなると、引きこもったり、うつのような精神状態になることもあります。

高齢者の場合は外出を控えることによる体力や筋力、脳の衰えも心配です。

トイレのことを考えただけで尿意を感じたり、冷水や冷気に触れただけで強い尿意におそわれるなど、些細なことが刺激になる場合もあります。

尿意切迫感が週に1回未満であっても、切迫性尿失禁がある場合はある程度、過活動膀胱の症状が進んでいると考えられるので、早めに診察を受けることをおすすめします。

なかには、切迫性尿失禁と腹圧性尿失禁の両方を持っている人もいます。

これは混合性尿失禁といい、尿失禁がある女性が10人いたら、切迫性が2人、腹圧性が5人、混合性が3人という割合になるといわれ、特に閉経期を過ぎた50代以上の女性に増加する傾向があります。

タイプによってそれぞれ治療法が異なるので、医師に相談しましょう。

もれるかどうかで分かれる

急な尿意で、がまんできずにもれる

→切迫性尿失禁

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尿意切迫感が週に1回以上なくても、切迫性尿失禁がある場合、過活動膀胱がある程度進んでいると考えられます。

●急な尿意はあるが、なんとかトイレで排尿できる

→尿意切迫感

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基本的には、この症状が週1回以上ないと、過活動膀胱とは診断されません。

排尿障害を起こす病気が原因の「溢流性尿失禁」

尿意はないのにもれる、または尿意はあるのに出せないけれど下着にチョロチョロと尿もれする、これを溢流性尿失禁といいます。

「溢流」とは、溢れて流れること。

健康な膀胱は、排尿によってほぼ空になりますが、排尿がうまくできないことで膀胱が空にならず、膀胱に残尿が多くなります。

すると短時間で膀胱が尿でいっぱいになり、限界を超えた量が少しずつ溢れ出てしまうのです。

少しずつとはいっても、持続的にもれるため、結果的に大量になり、不快感や下着の汚れ、匂いが気になります。

また尿をしっかり出しきれないので、頻繁にトイレに行くようになり、日常生活に大きな影響が出ます。

溢流性尿失禁には、普段から尿意がはっきりしない、残尿感がある、尿が出にくく勢いがない、おなかに力を入れないと排尿できないなどの特徴があります。

排尿がうまくできないことを排尿障害といい、原因は2つあります。

ひとつは膀胱が伸びきって収縮力が弱くなること。

子宮や直腸など骨盤内にある臓器の手術で、膀胱の神経が傷つくことで起こるケースです。

また、糖尿病が進行することで末梢神経がマヒして尿意を感じにくくなり、さらに膀胱の収縮をコントロールできなくなることでも起こります。

2つめは、膀胱の出口や尿道がふさがれて、尿を正常に排出できないケースです。

肥大化した前立腺が尿道を圧迫する前立腺肥大や、結石で尿の流れが妨げられる膀胱結石や尿道結石などがあげられます。

女性の場合には、重度の骨盤臓器脱で直腸や子宮が下がって尿路を圧迫し、排尿が妨げられることもあります。

症状を改善するには、泌尿器科を受診し、原因となる病気に対する治療をすることです。

無理に尿を出し切ろうと力むことは、膀胱や尿道にさらなる負担をかけてしまうので、注意しましょう。


溢流性失禁の原因

原因1:膀胱の収縮力が弱い

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膀胱の収縮力が落ちるので、尿がうまく排出できずにどんどんたまり、少しずつもれる。糖尿病や骨盤内の手術をした人に見られる。

原因2:膀胱の出口や尿道がつまる

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膀胱の出口や尿道がつまって正常な排尿ができず、尿がたまり、溢れてしまう。前立腺肥大症や骨盤臓器脱などが原因。


男性に多いちょいもれは「排尿後尿滴下」

男性が排尿後すぐにジワジワと下着の中でもれる尿もれは、排尿後尿滴下といいます。

尿を出し切ったつもりでも、尿道の一部に残っていた尿がジワッともれ出てしまうちょいもれ現象です。

40歳を過ぎた頃から多くの男性にあらわれます。

その原因は、尿道を締める球海綿体筋という筋肉の衰えです。

前立腺のすぐ下にあり、ギュッと締めることで尿を出し切る働きをしています。

加齢によってその筋力が弱まると、尿が残ってしまい、わずかに尿もれしてしまうのです。

また、排尿の際の勢いの低下も、排尿後尿滴下の原因となります。

主に前立腺肥大症によって排尿の勢いが弱くなることで、排尿後尿滴下が起こります。

この嫌なちょいもれを防ぐには、尿道に残っている尿を指で絞り出すミルキングが効果的です。

また、骨盤底筋トレーニングも、ちょいもれ防止に役立ちます。

前立腺肥大症が原因の場合は、その治療を受けることが防止策です。

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知識を身につけ、「骨盤底筋トレーニング」「膀胱トレーニング」「足上げ寝」などのセルフケアを実践し、尿トラブルを防ぎましょう。

 

高橋 悟(たかはし・さとる)
1961年生まれ。日本大学医学部泌尿器科学系主任教授、日本大学医学部附属板橋病院病院長。群馬大学医学部卒業。虎の門病院、東京大学医学部泌尿器科助教授などを経て現職。2003年には、天皇陛下(現上皇さま)が入院された際の担当医師団も務める。悪性腫瘍から排尿障害、尿失禁まで、泌尿器に関わるあらゆる疾患を研究、診察している。

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全国から患者が集まる泌尿器科医の 頻尿・尿もれ・夜間頻尿の治し方

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※この記事は『全国から患者が集まる泌尿器科医の 頻尿・尿もれ・夜間頻尿の治し方』(高橋悟/毎日が発見) からの抜粋です。
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