めまい・ふらつきは寝ていては治らない!? 克服の鍵は訓練にあり/めまい・ふらつきの治し方

現在、日本でめまいやふらつきでつらい思いをしている人はなんと約300万人、そのうち女性は男性の約2.5倍もいるとされています。激しいめまいに襲われるとベッドで安静にする方が多いですが、長年「めまい改善訓練」を患者に教えてきた医師・新井基洋先生によると、実は「寝ているだけではめまいは治らない」のだとか。先生によると、「めまい」や「ふらつき」の原因の9割は「内耳の不調」にあり、その「内耳の不調」を改善する訓練が必要だと言います。そこで今回は、新井先生の著書『全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方』(毎日が発見)より、自分でできる「めまい・ふらつきの改善方法」を連載形式でお届けします。

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街中を歩いていて突然クラッとしたり名前を呼ばれてふり返ったときにクラクラしたり階段を下りるときにフラ~ッとしたり......

日常生活の中で、そんな"クラッ"や"フラ~"の経験はありませんか?

それは"めまい"です!

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でも、めまいに悩んでいるのは、あなただけではありません!

日本全国には、めまいやふらつきでつらい思いをしている人が、約300万人もいます。

めまい・ふらつきには、下の3つのタイプがあります。


あなたのタイプはどれ?

1.グルグル=回転性めまい

自分自身や周囲が回っている

代表疾患:前庭神経炎、良性発作性頭位めまい症〈BPPV〉、ラムゼイ・ハント症候群、めまいを伴う突発性難聴、メニエール病、片頭痛性めまい ほか

2.フワフワ・フラフラ=浮動性めまい

フワフワと雲の上を歩いているような感覚
自分自身が揺らぐ、揺れ動く

代表疾患:持続性知覚性姿勢誘発めまい〈PPPD〉、加齢性めまい、高齢者の平衡障害、
心因性めまい・めまいに伴ううつ状態 ほか

3.ユラユラ=動揺性めまい・不安定めまい

体が前後左右に揺れ、まっすぐ歩けない

代表疾患:ラムゼイ・ハント症候群、持続性知覚性姿勢誘発めまい〈PPPD〉、
加齢性めまい、高齢者の平衡障害 ほか

[補足]フワ~=立ちくらみ、起立性調節障害(若年層に多い)
立ち上がるときに血の気が引く、気が遠のくなどは年齢に関係なく血圧や血管を調べる専門科で受診を。


それぞれ、揺れ方に違いがあるので観察してみましょう。

自分に当てはまる症状がわかると、病院で説明しやすくなります。

ふらつきはめまいの親戚ですが、めまいのように自分や周りが動いている感覚はありません。

立ちくらみは、原因が若い人は低血圧、高齢者は脳の可能性もあり、めまいと異なるため本書の訓練では改善しません。

めまい・ふらつきの原因の9割は内耳の不調にあります。

耳の構造は、下のように3つに分けられます。

内耳の中には、平衡機能をつかさどる前庭器(三半規管と耳石器)があり、左右どちらかに不具合が起きると平衡機能に左右差が生じて体のバランスが悪くなります。

こうして、めまい・ふらつきが起こるのです。


耳の構造

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耳の内部は、外耳、中耳、内耳の3つに分かれています。左右の内耳にある「耳石器」と「三半規管」 が正常に機能することによって、バランスよく立ったり歩いたりすることができます。平衡機能をつかさどる内耳の不調が、めまい・ふらつきの原因となります。


激しいめまいに襲われるとつらくなり、ベッドで安静にする方、多いですね。

でも、寝ているだけではめまいは治りません!

私たちがまっすぐ立っていられるのは目、耳、足の裏からの情報を小脳に集めて左右のバランスを取っているから。

なかでも重要な役割を担うのが内耳です。

内耳に不具合が起こると体のバランスが崩れて、めまいやふらつきとして感じるのです。

人の体をプロペラ機にたとえると、体が機体、内耳がプロペラ、小脳がパイロットです。

内耳に不具合が生じた状態は片側のプロペラが壊れた機体と同じですから、ベッドに緊急着陸するしかありません。

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しかし本来プロペラ機は、訓練を受けたパイロットにより、一基のプロペラでも飛び続けることができます。

そして、人間にも平衡を保つパイロットがちゃんと備わっています。

それがバランスの親分「小脳」です。

点滴でもクスリでも、このバランスの左右差を改善することはできません。

でも、小脳にはバランスの左右差を改善する力があります。

そう、小脳がめまい改善の鍵を握っています!

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小脳は大脳の下に位置する小さな脳で、平衡機能をつかさどる中枢です。

めまいが生じて時間が経って落ち着くのは、小脳が体の左右平衡を是正するシステム 「前庭代償」を発動しているから。

しかし、小脳も訓練しなければ名パイロットには育ちません。

つまり、ベッドで寝ているだけでは前庭代償は発動しないので、バランスの親分である小脳を鍛えるのです。

それがめまい改善訓練です!

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フィギュアスケートの選手が回転しながら演技を続けられるのも"訓練"のおかげです!

フィギュアスケートの回転は、左回転が多いことをご存じですか?

人は左に回ると、左右の目には必ず左向きに眼振というめまいに近いことが生じます。

これはスケート選手も同様で、実は目が回っているのです。

ですが訓練により、回転後には左回転を打ち消すための右回りの急ブレーキ(後眼振)が利くようになります。

つまり、回転練習を続けることで、回転というめまいを打ち消す能力を身につけているんですね。

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私たちもコーヒーカップに乗り続ければ、小脳が学習して回転後のめまいを克服できるようになるんですよ。

とってもキツイけれど......。

この事実と、めまい改善訓練でめまいがよくなるのは相通じる仕組みです。

つまり、平衡機能の左右差によるめまいは訓練で治せます!

めまいはつらいし怖い......。

でも、訓練を重ねれば必ず克服できます!!

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新井基洋(あらい・もとひろ)
1964年、埼玉県生まれ。横浜市立みなと赤十字病院めまい平衡神経科部長。日本耳鼻咽喉科学会耳鼻咽喉科専門医、日本めまい平衡医学会専門会員・評議員。北里大学医学部卒業後、国立相模原病院、北里大学耳鼻咽喉科を経て現職。95年に「健常人OKAN(視運動性後眼振=めまい)」の研究で医学博士取得。96年、米国ニューヨークマウントサイナイ病院にて、めまいの研究を行なう。北里方式をもとにオリジナルのメソッドを加えた「めまいのリハビリ」を患者に指導し、高い成果を上げている。

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全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方

新井基洋毎日が発見

長年、「めまい」や「ふらつき」を治療してきた名医が、治し方をやさしく解説します。めまい・ふらつきに悩み全国から訪れる患者に薦めている「改善訓練」をカラー写真で分かりやすく紹介。「良性発作性頭位めまい症」「前庭神経炎」「メニエール病」などの病気の原因と治療法についても詳しく解説しています。

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※この記事は『全国から患者が集まる耳鼻科医の めまい・ふらつきの治し方』(新井基洋/毎日が発見) からの抜粋です。

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