「近所なはずなのに・・・ここどこ?」お母さん、どうしてこんな遠くまで?/認知症の人が見ている世界

巨大なミラーハウスに迷い込んでしまった感覚を想像してみましょう

認知症になると、外出中に道がわからなくなり、近所の道や家の中などよく知っている場所でも迷うようになります。

これは、場所の見当識障害が起こり、今いる場所がわからなくなることが一つの原因として考えられます。

また、空間認識力をつかさどる脳の頭頂葉が萎縮して、縦・横・斜めの感覚や距離感が把握しにくくなっている可能性もあります。

その結果、認知症の世界では、ご本人は巨大なミラーハウスに迷い込んでしまったような感覚に陥り、道がわからなくなってしまっているのです。

道に迷った場合、ご本人が立ち止まって引き返すことはまれです。

不安のためか、どんどん前へ前へと進んでいくケースが多く見られます。

そのため、家の付近を何度も歩きまわったり、想像以上に遠くまで行ったりしてしまうことも少なくありません。

認知症の人の姿が見えなくなったときは、闇雲に探すのではなく、まずは交番やガソリンスタンド、コンビニエンスストアなどで目撃情報を探るのが有効です。

認知症の人でも、多くの場合、羞恥心が残っています。

そのため、道がわからなくなっても、「突然、『ここはどこですか?』と道をたずねたら変な人だと思われてしまう」と考えるので、見知らぬ人に道を聞くケースはあまりないのです。

その点、コンビニエンスストアやガソリンスタンドや交番なら、認知症の人も安心して道をたずねることができます。

認知症の行動・心理症状(BPSD)の「徘徊」は、介護する側からすると悩みのタネです。

突然、理由もわからずご本人がいなくなってしまうので、とても心配だと思います。

しかし「徘徊」は「あてもなく歩きまわること」を意味する言葉ですが、多くの場合、何かの目的を持って歩いています。

そのため、最近では、徘徊はあまりいいイメージの言葉ではないので、代わりに「一人歩き」と呼ぶことが増えています。

対応のポイント

道に迷ったときに立ち止まって引き返すことはまれで、どんどん前に進むケースが多く、家の付近を何度も歩きまわったり、想像以上に遠くまで行ったりする。

●認知症の人でも道をたずねやすいコンビニエンスストアや交番、ガソリンスタンドなどで目撃情報を探るといい。

「近所なはずなのに・・・ここどこ?」お母さん、どうしてこんな遠くまで?/認知症の人が見ている世界 177-004-035.jpg

【次回】「親の金を盗むなんて・・・!」最近お金に執着するようになった母/認知症の人が見ている世界

「近所なはずなのに・・・ここどこ?」お母さん、どうしてこんな遠くまで?/認知症の人が見ている世界 177-c.jpg

認知症ケアに携わってきた著者が、実際に接してきた中で気づいたケーススタディがマンガでわかりやすく解説されています

 

川畑智(かわばた・さとし)
理学療法士、熊本県認知症予防プログラム開発者、株式会社Re学代表。熊本県を拠点に、病院や施設における認知症予防や認知症ケアの実践に取り組む。

 

遠藤英俊(えんどう・ひでとし)
聖路加国際大学病院臨床教授、元国立長寿医療研究センター長。認知症や医療介護制度などを専門とし、国や地域の制度・施策にもかかわりが深い。

 

浅田アーサー(あさだ・あーさー)
マンガ家。

shoei.jpg

『マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界』

(著:川畑智、監修:遠藤英俊、マンガ:浅田アーサー/文響社)

認知症って、何もかもがわからなくなるわけではないの? 認知症の人が見ている世界を知り、「なぜ?」を解決できると、介護はもっとラクに。認知症ケアの第一人者がひも解いた、マンガでわかる介護メソッドです。

※この記事は『マンガでわかる! 認知症の人が見ている世界』(著:川畑智、監修:遠藤英俊、マンガ:浅田アーサー/文響社)からの抜粋です。
PAGE TOP