患者&予備軍が700万人に上るといわれ、痛みとともに手指が曲がってしまう難病の「関節リウマチ」。これまで「不治の病」と思われてきたこの病気の治療法は、実は新薬の登場で劇的に変化しているのだそうです。そこで、10万人の患者を救ってきたリウマチの専門医・湯川宗之助さんの著書『リウマチは治せる! 日本一の専門医が教える「特効ストレッチ&最新治療」』(KADOKAWA) より、「リウマチを治すための最新情報」をご紹介します。
手の指に起こる代表的な5つの変形
すでにお話ししたように、関節リウマチは全身のどこで起こっても不思議ではありません。
そして、病気の進行を許してしまえば、手の指には関節リウマチ特有の変形が起こってきます。
代表的な手指の変形としては、以下のような種類があります。
●スワンネック変形
第3関節が曲がり、第2関節が反り、指先の第1関節が曲がって、"白鳥の首のような形"になる。
●ボタン穴変形(ボタンホール変形)
第2関節が曲がり、第1関節が反って、"ボタンの穴のような形"になる。
●尺側偏位(しゃくそくへんい)
親指を除く4本の指が、すべて尺側(小指側)を向く。
●Z字変形
親指の第1関節が反り、"ヒッチハイクをするときのような形"になる。
●ムチランス変形(オペラグラス変形)
骨が破壊されて溶けてしまい、指が短くなる。また、筋肉や皮膚がたるんで、指に力が入らなくなる。
実は、私が「リウマチ専門医になる」という最終決断を下したきっかけは、まさに手指の変形でした。
あれは、私がまだ研修医だった頃。
20代の若い女性患者さんが通院されていたのですが、彼女の手の指と手首はすでに変形しており、日常動作も不自由な様子でした。
そしてそのとき、私は思ったのです。
「この女性の人生は、リウマチによって制限されてしまうだろう......。どうしたら関節を変形させないですむのか?」
その答えも、やはり早期診断・早期治療に行き着くのです。
もし、関節リウマチがすでに進行しているかたでも、骨びらんが現れた段階で食い止めれば、"変形のない人生"を送ることにつながり、家事や仕事への悪影響を少なくしていくことができます。
となればやはり、関節機能をできるだけ維持するために、早期発見・早期治療が必須のこととなるわけです。
近年話題の病気「ヘバーデン結節」とはココが違う
最近の診療では、"手の指の痛みや変形"というキーワードが似ていることもあってか、話題になっている「ヘバーデン結節」という病気と関節リウマチの違いを、よく質問されることがあります。
そこで、この両者の相違点については、簡単にご説明しておきましょう。
いちばんの違いは、症状の現れる関節です。
ヘバーデン結節で症状が現れるのは、指の第1関節(DIP)です。
一方、関節リウマチで症状が現れるのは、第2関節(PIP)か、第3関節(MCP)です。
そして、関節リウマチが第1関節に起こることは、まずありません。
第1関節に現れた腫れや痛み、変形などは、ほかの病気を疑いましょう。
ちなみに、関節リウマチのほかにも、第2関節に症状が現れる病気があります。
代表的なのは「ブシャール結節」という変形性関節症で、その関節を触ると骨の端がボコッと尖ったように感じられます。
それに対し、関節リウマチでは紡錘(ぼうすい)状にふくらんで腫れるので、ブニュブニュとした感覚があるはずです。
しかし、ブシャール結節と関節リウマチが、第2関節で併発することも少なくありません。
ですから、やはり時間を無駄にせず、診察を受けることが先決です。
血液検査やレントゲン検査、必要があれば超音波の検査なども行うことで、正確な診断・治療を速やかにスタートできます。
イラスト/松野 実
関節リウマチの正しい知識や、最新治療を受けるためのアドバイスを5章にわたって解説