「血糖値が高くなってきて不安...」という人は、筋肉が衰えているかもしれません。加齢や運動不足によって、糖を消費しやすい筋肉(速筋)が減ることで、糖の消費量も減少してしまうんです。そこでオススメしたいのが1回7秒のスクワット。25年にわたってスクワットを研究してきた、うさみ内科院長の宇佐見啓治(うさみ・けいじ)先生に、今回は「糖尿病の原因や7秒スクワットの効果」について教えていただきました。
加齢や運動不足で減る筋肉を維持して糖尿病を予防
いまや糖尿病は、患者と予備軍を合わせて約2000万人(※)。
身近な病気だけに、健康診断で「血糖値が高い」「糖尿病予備軍ですね」などと言われた経験がある人もいることでしょう。
糖尿病は、食事によって体内に取り込まれた炭水化物(ブドウ糖)が、本来使われるはずのエネルギー源としてうまく使われず、血液中のブドウ糖の濃度が高くなり、それが原因で血管にダメージを受ける病気です。
予備軍の段階ではほぼ自覚症状がなく、「のどが渇く」「トイレが近くなる」といった症状が表れたらすでに重症。
放置すれば、血管はボロボロになり、神経や目、腎臓などに合併症を引き起こします。
※厚生労働省:平成28年「国民健康・栄養調査」より
糖尿病の原因は、筋肉の代謝の低下です
●健康な人と2型糖尿病の人のブドウ糖の取り込み率
DeFronzo RA:Diabetes37(6):667-687.1988
上図によると、2型糖尿病の人も、腹部臓器、脂肪組織、脳の細胞では、健康な人と同じようにブドウ糖を取り込めていることが分かります。ところが、筋肉の細胞だけは、健康な人の半分以下に落ちています。
「ブドウ糖は体を動かすためのエネルギーになります。2型糖尿病の人の場合、ブドウ糖の取り込み率が悪くなる部位は、ほとんどが筋肉(上の図参照)。筋肉がブドウ糖を取り込めなくなることで、血液中にブドウ糖があふれてしまっているのです。原因は、加齢や運動不足などで筋肉量が落ちてしまったことにあります」と、宇佐見啓治先生。
●加齢と運動不足で下半身の筋肉は顕著に減少
Abe et al.1995より作成
太ももの筋肉量は、30~70歳までの間に、前側が約半分、後ろ側が3分の2まで落ちることもあるといわれています。後ろ側の衰えが緩やかなのは、歩くときに前側よりも刺激をされるため。また、太ももには、使えば太くなり、使わなければ細くなるという速筋が多いため、運動不足も筋肉量減少の原因になります。
人間の筋肉は、持久力に優れ、脂肪を消費しやすい遅筋と、瞬発力に優れ、糖を消費しやすい速筋で構成されています。
「筋肉の衰えが血糖値に影響を与えるのは、加齢とともに衰えやすい大きな筋肉には速筋が多いから」と、宇佐見先生。
その言葉通り、太ももの前側の筋肉は、6割以上が速筋です。
加齢や運動不足によって、それが約半分になるのですから、糖の消費量も大幅に減少します。
「7秒スクワットは、全身の筋肉の7割を占める下半身の筋肉を動かして筋肉を増やすことで、ブドウ糖の取り込み率を改善。筋肉で効率的に消費して血糖値を低下させます。併せて、上半身のトレーニングを行えばさらに効果が高まります」(宇佐見先生)
いまある筋肉の維持には、週2回の7秒スクワットで十分。
目標は10回×3セット。
連続して行うのが難しい人は、少ない回数、少ないセットから始めましょう。
自分のペースで続けてください。
大きな筋肉を動かして筋肉の代謝をアップさせる
【まとめ読み】特集「血糖値が下がる7秒スクワット」記事リスト
取材・文/寳田真由美(オフィス・エム) 撮影/西山輝彦 イラスト/落合 恵 モデル/永谷佳奈