驚くことに、入所者の半数以上が糖尿病なんです...。介護施設長が伝えたい「糖尿病のリスク」

超高齢社会の日本では「介護」は誰にとっても他人事ではありません。でも「介護施設」はどんなところかわからず、不安に思う人も多いと思います。そこで、医師として長年医療現場に従事し、現在は介護施設長として働く川村隆枝さんの著書『70歳の新人施設長が見た 介護施設で本当にあったとても素敵な話』(アスコム)より、介護士と入所者との間に起こった、泣ける、笑えるエピソードをご紹介します。

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糖尿病にはご用心!

驚いたことに、半数以上が糖尿病でした。

老健たきざわの入所者のことです。

その日も糖尿病の方が入所してきました。

「香川さん、76歳・男性。糖尿病とアルツハイマー型認知症のある方です。三年前に有料老人ホームに入所されましたが、糖尿病のコントロール不良と筋力低下のリハビリ目的です」

紹介状には、朝の血糖値は50台と低く、夜は300~400になり変動が激しいと書かれていました。

通常、低血糖になると冷や汗が出て具合が悪くなるので、すぐに対処できます。

しかし、香川さんは認知症なので自覚症状がなく、厳重な血糖管理が必要でした。

「昨夜は血糖値が500台で高かったんですが、朝は下がっていますね」

早速、スタッフから香川さんの状況報告が入ってきました。

「うーん......、確かに数値は高いけど、しばらく様子を見ましょう。インスリンを増やしたら、翌朝に低血糖を引き起こすので経過観察にとどめていると紹介状に書いてあったから。低血糖は脳障害の原因にもなるし、危険だから気をつけてください」

以後、施設では、頻繁に血糖値を測定することで様子を見ることになります。

つまり、こちらは臨戦態勢。

何かが起きたときにすぐ対処できるように、準備を整えていたのです。

でも、香川さんはケロッとしています。

糖尿病が原因の腎障害や神経障害もあるはずなのに。

認知症で自覚がないと言えばそれまでですが、香川さんのような人を自宅で介護するのは絶対に無理だと思います。

介護施設への入所を考えるときに、知っておきたいのが糖尿病です。

糖尿病とは、血糖値を下げる唯一のホルモンであるインスリンのはたらきが悪くなり、血液中の血糖が慢性的に多くなる病気です。

Ⅰ型とⅡ型があり、Ⅰ型はインスリンそのものを分泌できなくなる状態で、Ⅱ型はインスリンは分泌されてもはたらきが悪い状態。

日本では、Ⅱ型の患者が圧倒的に多く、その原因は過食、運動不足、肥満などとされ、生活習慣病の一つといわれます。

血糖値が高い状態が続くと血管が傷ついていきます。

細い血管が傷つくと神経障害・網膜症・腎障害の三大合併症を引き起こす原因になり、太い血管が傷つくとコレステロールなどが溜まり、血管を塞いで脳梗塞や心筋梗塞の危険性が高まります。

糖尿病が怖いのは、自覚症状がないまま合併症を引き起こすところです。

糖尿病の人は、そうではない人よりも心筋梗塞になるリスクが三倍ほど高く、脳梗塞になるリスクが男性は2.2倍、女性は3.6倍といわれます。

現在、日本人の五人に一人が糖尿病ないし糖尿病予備軍といわれています。

その数は、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2019)によると国内で約2000万人。

糖尿病は一度なってしまうと治りませんが、糖尿病予備軍であれば正確な知識を持って生活習慣を見直せば予防することはできます。

そのアドバイスも紹介しておきましょう。

例えば、

①規則正しい生活を送る。

②ごぼう、にんにく、納豆、大麦入り玄米、根菜類、きのこ類、海藻などの水溶性食物繊維を摂って、腸内細菌を元気にする。

③抗酸化物質とマグネシウムが豊富に含まれる緑色の葉物野菜を摂る。

④甘いものや脂っぽいものは、食べ過ぎない。

⑤もずくやこんにゃくなど食物繊維を含む食材を摂る。

⑥マグネシウム・食物繊維を多く含む海藻類、青魚、大豆など、アディポネクチンを増やす食材を摂る。

⑦白米より玄米。

⑧チョコレートに含まれるカカオやポリフェノールは糖尿病のリスクを低くする。

また、血糖値を抑える食べ方もあります。

①1口30回噛む。

②食物繊維の多い野菜から先に食べる。

③食後一時間以内にエネルギーを消費する。

食事と同様に大切なのが運動です。

運動しないと筋肉が痩せて体重が少なくなり、脂肪の多い身体になります。

これが「隠れ肥満」です。

隠れ肥満になると基礎代謝が減り、同じ分量の食事でも脂肪になりやすくなります。

運動をすることで身体についた中性脂肪を減らしたり、筋肉をつけて基礎代謝の多い身体になれば、糖尿病の予防にもなるはずです。

近年、糖尿病治療と同時に不眠治療を行うことで症状が改善し、血管障害を予防できる可能性があることが話題となっています。

睡眠不足がすべての原因とはいえませんが、睡眠不足をもたらす生活習慣が肥満の原因となり、生活習慣病のリスクを高めていると考えられています。

今後、糖尿病治療に不眠治療を並行して行っていくことが増えていくかもしれません。

ここで紹介した予防策は、あくまでも参考です。

無理に習慣化させようとしてストレスを抱えては元も子もありません。

自分に合ったペースで少しずつ生活習慣を変えていくほうがいいと思います。

かく言う私も不規則極まりない生活を送っているので、これを機会に少しずつ努力を始めました。

例えば、暴飲暴食を避けて白米を玄米に替えましたが、結構美味しいので驚いています。

【まとめ読み】『介護施設で本当にあったとても素敵な話』記事リストはこちら!

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元医師の介護施設長が実感した「介護施設の素敵な話」を全4章にわたって公開。介護や老後に関わる人にオススメ!

 

川村隆枝(かわむら・たかえ)
東京女子医科大学を卒業後、同医大産婦人科医局入局。1974年に夫の郷里である「岩手医科大学麻酔学教室」に入局し、同医大付属循環器医療センター麻酔科の助教授に就任。2005年に国立病院機構仙台医療センター麻酔科部長として活動後、2019年5月より岩手県滝沢市にある「老人介護保険施設 老健たきざわ」施設長に就任。

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『70歳の新人施設長が見た 介護施設で本当にあったとても素敵な話』

(川村隆枝/アスコム)

家族や親族のお世話を施設にお願いするとき、まだ罪の意識を覚える人も多いはず。あなたの介護施設のイメージは本当に正しいですか? 自身も夫を介護施設に預けて幸せな生活を送った元医師が、現在施設長として実体験している「介護施設であった素敵な話」を書き綴った良書。これからの高齢化社会に向け、「介護士とお年寄りの泣ける、笑えるエピソード」は参考になることが盛りだくさん。

※この記事は『70歳の新人施設長が見た 介護施設で本当にあったとても素敵な話』(川村隆枝/アスコム)からの抜粋です。

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