「かくれ心不全」という言葉を聞いたことがありますか? 「心不全」は心臓の働きが不十分なために、じわじわ命を縮める病気。「かくれ心不全」は、心不全のリスクはあるものの、自覚症状が出ていない「心不全予備軍」のことで、日本人に急増しているそうなんです。そこで、北里大学北里研究所病院の猪又孝元(いのまた・たかゆき)先生に、「心不全の4つのステージ」と「かくれ心不全」について教えていただきました。
心臓の働きが悪化しゆっくり進む病気
「『心不全』になると、急に心臓が止まってしまうと思っていませんか? 実は、じわじわと心臓の働きが悪くなり、命を縮めていくケースがほとんどです」と話すのは、猪又孝元先生。
心不全とは、「心臓が悪いために、むくみや息切れが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」。
心臓の働きが不十分なために起こる体の状態の総称です。
「心不全の理解を深めてもらうため、進行を4つのステージに分けて説明しています。注目すべきは、症状のないステージA、Bの"かくれ心不全"です」
〝かくれ心不全〟は、心臓に病気がなくても、加齢や生活習慣病が大きなリスクとなります。
そのため、日本人に急増していて、近い将来に"心不全パンデミック"という大流行が起こると予想されています。
この大流行を起こさないためにも、かくれている段階で気付き、ステージC、Dへ進行させないことが重要です。
知っておきたい「心不全4つのステージ」
ステージA、Bは知らない間に心不全が進行している状態。40代・50代から要注意です。 一度発症すると、悪化を繰り返し、治療をしても心臓の機能を元に戻すことはできません。
出典:〈厚生労働省〉脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方に関する検討会
「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る診療提供体制の在り方について」(2017年7月 P35、図20より改変)
ステージA:リスクはあるが心臓は元気
生活習慣病などの心不全のリスクは抱えているが、心臓の働きは正常で症状がない。ここで食い止めるのが重要。
ステージB:心機能に異常あり、症状はない
心肥大や心臓弁膜症などの心臓の病気を伴うものの、心不全の症状は出ていない。ここまでが"かくれ心不全"。
慢性心不全(こげつき心不全)
心不全を繰り返し、心臓の働き、体の機能が悪化する。心不全が"こげついてしまった"状態。
ステージC:症状が出現、心不全と診断
息切れやむくみなどの症状が一気に悪化し、じわじわと進んでいた心不全が表面化。回復しても悪化を繰り返す。
ステージD:治療が困難な末期心不全
症状が進行し、入退院を繰り返す"こげつき心不全"状態。薬での回復が難しく、人工心臓や心臓移植の適応に。
かくれ心不全とは?
上のステージAとBの状態で、高血圧や糖尿病など心不全リスクはあるものの、自覚症状が出ていない"心不全予備軍"。
取材・文/湊 香奈子 イラスト/角 裕美