高血圧に悩む患者さんは国内に約4300万人。血圧が高いと心臓や動脈に問題起こす危険があるため、高血圧はとても身近な問題です。そこで、日野原記念クリニック所長で医師の久代登志男先生に「薬に頼らず血圧を下げる方法」をお聞きしました。今回は「高血圧の基礎知識」についてご紹介します。
自分の血圧はいくつですか?
日頃から気を配る習慣を
「高血圧と診断された場合、以前より診察室血圧を140/90未満に下げると心臓病や脳卒中が減ることが分かっていました。しかし、数年前にもっと積極的に下げた方が心不全予防に役立つことが確認され、降圧目標が10下げられました。高血圧の人は、きちんと血圧をコントロールすることで、心臓病や脳卒中を予防でき、将来、健康でいられる率を高くすることができます」
そう話すのは、日野原記念クリニック所長で医師の久代登志男先生。
血圧は、私たちの健康状態が分かる大事な指標です。
「男性は40歳を超える頃、女性は更年期の50代から、血圧が高くなることが多いのです。心臓の仕事量は血圧の高さに比例し、血圧が高い状態が続くと一日8~10万回も動く心臓に負担がかかります。60~70歳頃に心不全になるリスクが高くなり、人生の後半が大きな影響を受けてしまいます。動脈硬化も高血圧で進行が進み、心臓や脳の動脈が詰まると心筋梗塞や脳梗塞の原因になります。血圧は加齢に伴い高くなります。これは結果的に心臓や動脈に負担をかけることになります。日頃から血圧に気を配り、良好な血圧管理を生涯にわたり続けることは、長く健康でいるために大事です」
心臓が収縮し、血液が送り出されたときに動脈にかかる圧力が「上の血圧」、心臓が血液を送り出す直前の血圧がもっとも低いときの血圧が「下の血圧」です。
75歳未満で高血圧と診断された人では、診察室で測る血圧の目標は、上が130未満、下は80未満です。
高血圧の診断血圧より降圧目標が低く設定されているのは、高血圧と診断された人は、積極的に下げた方が心臓病を減らせることが分かったからです。
なぜ「高血圧」が良くないのでしょうか?
血圧が高いことによって、心臓や動脈に問題を起こす危険があるからです
高血圧の基準は?
高血圧と診断された人の降圧目標は?
「仮面高血圧」「白衣高血圧」とは?
「仮面高血圧」は、診察室では140/90未満なのに家庭血圧は高血圧。
「白衣高血圧」は診察室で高い値、家庭では135/85未満に収まるもの。
白衣高血圧は、以前、リスクは高くないといわれましたが、最近は高血圧予備軍であり、脳卒中になるリスクが高いことが分かり、慎重な経過観察が必要です。
仮面高血圧は、高血圧と考えて対応します。
正しい測り方は?
<環境・姿勢について>
①静かで、快適な室温の部屋で
②背もたれ付きのいすに脚を組まず座って1~2分の安静後に
③測定中は話をしない
④測定20分前に飲酒、喫煙、カフェイン摂取は行わない
⑤前腕にタオルなどを置いてカフ(腕帯)は心臓の高さに維持する
⑥利き手でカフを巻くので原則として利き手の反対側で測定する
<測定条件>
朝:起床後1時間以内で排尿後、朝食前、服薬前に。
晩:就寝前に。
いずれの場合も一度に2回測定し、 その平均をとる
高血圧大国ニッポン先進12カ国の中で最悪
「日本国内の高血圧患者は約4300万人です。ところが治療を継続し、診察室血圧のコントロールができている人はおよそ4人に1人のみ。日本は高所得国のなかで高血圧のコントロール状況がもっとも悪いとされています。欧米では、医師、看護師、薬剤師がチームを組んで、あらかじめ決めた血圧管理の原案に則した治療が行われることが多くなっています。高血圧患者全体の血圧管理をきちんと行い、心不全や脳卒中などの合併症を予防できれば患者にとって良いだけでなく、結果的に国の医療費も抑えられます」(久代先生)
国内の高血圧有病者、薬物治療者、管理不良者などの推計数(2017年)
取材・文/三村路子 撮影/齋藤ジン イラスト/熊本奈津子