新型コロナウイルスの流行により、感染予防対策とともに、免疫力という言葉をよく耳にするようになりました。ですが、「免疫力」とは、いったい何なのでしょう? そこで、免疫の専門家をはじめ、10人の名医から「免疫力を高めるためのヒント」を教えていただきました。今回は、京都府立医科大学の内藤裕二(ないとう・ゆうじ)先生に「免疫力とは何か」をお聞きしました。
粘膜免疫を強化してウイルスに負けない体に!
新型コロナウイルス感染症の蔓延で、不安な毎日を過ごしている方も多いでしょう。
このような状況の中、自分や周りの人を守るために頼りになるのが免疫力です。
「日本は新型コロナウイルスの感染者数が少ないといわれていますが、感染者の死亡率は約5%と、実は他国とほぼ同じです。ということは、ウイルスに感染しないことが最も大切。免疫力を高めて、ウイルスに負けない体づくりが重要です」と、京都府立医科大学の内藤裕二先生。
免疫とは、体内に入ってきた外敵を駆除して健康を保つシステムで、大きく分けて2段階あります。
一つは、日々の生活でウイルスや細菌などの異物の侵入を防御する粘膜免疫。
もう一つが体に侵入したウイルスや細菌に対して働く全身免疫です。
免疫の仕組み
「防御」と「攻撃」で体を守る
細菌やウイルス、花粉などの異物が体に侵入しようとする
●第一段階
目、鼻、口、のど、腸などの粘膜免疫が、外からの侵入を防御
●第二段階
全身免疫(自然免疫と獲得免疫)が、体に入ってきた病原体を攻撃
《自然免疫》
病原体などが体に入ってくると、直ちに働くのが自然免疫。白血球の一種である好中球やマクロファージが病原体を飲みこみます。
《獲得免疫》
後天的に獲得される免疫で、異物の特徴を記憶して的確に攻撃を行います。かぜにかかったり、ワクチンを接種したりしてできる抗体は獲得免疫に含まれます。
感染予防には、最初の防御機能である粘膜免疫の強化が重要です。
では、どんなことに努めたらよいのでしょう?
粘膜免疫の中で主体的に活躍する免疫物質にIgA抗体(以下、IgA)があります。
IgAが低下すると病気にかかりやすくなったり、疲れやすくなります。
このIgAが全身で最も多く存在するのが腸です。
「IgAは、腸内でいろいろな病原体にとりついて、便として排出する性質をもちますが、さまざまな環境や薬剤などの影響を受けて増えたり減ったりします。日頃の食事で腸内環境を整えることでIgAを増やすことは、免疫力を高めることにつながります」と、内藤先生。
ウイルスの侵入を防ぐ
粘膜免疫が予防の要!
●全身を守っています
粘膜免疫が働く場所は、目、鼻、口、のど、腸などの粘膜です。ここで異物が粘膜を介して体内に入るのを防ぎ、体外に出してしまうことで感染を防ぎます。
●とりわけ主体的に働くのがIgA抗体
何でできているの?
たんぱく質
何をしているの?
細菌やウイルスの侵入を防ごうと働きます。
特徴は?
特定のウイルスや細菌だけでなく、さまざまな種類の病原体に反応してくっつきます。
●IgA抗体が最も多いのは「腸」
① 腸内でIgAが作られると...
② IgAが病原体にとりついて動けなくしたり、マクロファージ(※)が病原体を食べる
③ 病原体が便として排出される
※マクロファージとは、体内に侵入した細菌などの異物を食べる能力に優れた細胞のこと。食べた細菌を消化・殺菌して、細菌感染を防ぎます。IgAには、腸内で細菌をマクロファージが食べやすい大きさにする働きもあります。
【まとめ読み】特集「名医10人の免疫力を上げる生活習慣」記事リスト
取材・文/オフィス・エム(寳田真由美)、イラスト/鈴木衣津子