歳を重ねるごとに、増える髪のお悩み。髪型は見た目を大きく左右するからこそ、悩みも深くなりますね。Dクリニック大阪 ウィメンズ院長 脇坂長興(わきさか・ながおき)先生に、女性の薄毛の原因や治療法を教えていただきました。
ヘアサイクル(毛周期)の乱れも一因に
加齢とともに増える薄毛の悩み。
命に関わる病気ではありませんが、見た目を気にして、人に会うのが億劫になるなど日常に支障を来します。
髪の毛は、毛根のいちばん下にある「毛球部」の「毛乳頭」から栄養を受けた「毛母細胞」が細胞分裂を繰り返し、作られた毛が押し上げられて毎日成長しています。
自然に抜け落ち、やがて新しい毛に生え変わるのは、2~7年のヘアサイクルがあるため。
3つのステージ「成長期」、「退行期」、「休止期」があり、何らかの理由でこのヘアサイクルが乱れると、薄毛を引き起こします。
「びまん性脱毛症」は、加齢による生理的な変化により休止期が長くなり、頭部全体の毛髪が徐々に少なくなっていきます。
「男性型脱毛症」は、男性ホルモンの影響で成長期が短くなり、毛髪が十分に成長する前に抜け落ちます。
毛髪の本数は変わらないものの、細く短くなり、分け目が目立つようになります。
男性脱毛症には女性ホルモンの減少も影響します。
「休止期脱毛症」はストレスによる血行不良や毛根の萎縮、甲状腺疾患や膠原病などで引き起こされます。
過度なダイエットによる毛根への栄養不足や酸素不足、睡眠不足・喫煙・運動不足などの生活習慣の乱れ、皮膚炎など、さまざまな原因でも抜け毛が増えます。
そもそもの「発毛のしくみ」
毛母細胞が活発に細胞分裂を繰り返し、毛球部で作られた毛が上に押し上げられる。
薄毛の一因「ヘアサイクルの乱れ」とは
正常時は上記サイクルですが、乱れると毛が太くなる前に抜け落ちるようになってしまいます。以下で詳しく見てみましょう。
●成長期(2~7年)
成長が始まる
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毛が太くなる
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毛が太く成長する
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この期間が短いと薄毛になる:「男性型脱毛症」
●退行期(2週間)
休止期に移行する時期のことです。
毛球の退縮が始まる
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毛球が完全に退化する
●休止期(3~4カ月)
脱毛し、同じ毛穴から新しい毛が生まれます。
この期間が長いと薄毛になる:「びまん性脱毛症」。
女性の薄毛はこうなっています
【女性】
●全体的に毛髪が少なくなる。髪の毛自体が細くなる...びまん性脱毛症
●頭頂部から前頭部、分け目が目立つようになる...男性型脱毛症
【男性】
●額の左右両方の生え際が後退し、額が広くなる。
●頭頂部のつむじ部分から薄毛になり、次第に薄毛部分が円形に広がっていく。
発毛剤は地道に使い続けることが必要
びまん性脱毛症や男性型脱毛症には育毛剤や発毛剤が有効です。
育毛剤は頭皮の血の巡りを良くするなどして、現在ある毛髪を守ります。
発毛剤は髪の毛の製造工場である毛根で毛母細胞を分裂・増殖させ、速く太く長く発毛させます。
発毛有効成分「ミノキシジル」配合の外用薬(1%と5%のものがある)が市販されているので、使用してみるのもよいでしょう。
効果が出るまで6カ月程度は使い続けることが必要です。
また良質なたんぱく質や鉄分、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB群を積極的に摂ることも大切です。
豚肉料理が手軽でおすすめです。
皮膚科で頭皮の状態を診てくれますし、女性の薄毛を外用薬、内服薬、注射などで治療する専門病院もあります(円形脱毛症などを除き保険適用外)。
最適な治療メニューを組み立ててくれるので、一人で悩まず、相談してみてください。
髪のために気を付けたいこと
・たばこを吸わない→血行が悪くなる
・過度な飲酒は避ける
・栄養バランスに気を付ける
・過度なダイエットはしない→鉄分不足や亜鉛不足は美しい髪を失う
・ストレスをためない→ホルモンバランスが乱れて血行不良が起きる
女性の薄毛のまとめ
主な種類
・慢性のびまん性脱毛症...頭部全体で髪の毛が細くなる
・女性の男性型脱毛症...髪の毛が細く短くなって分け目が目立つ
・急性および慢性の休止期脱毛症...
・抜け毛が増えて髪の毛が少なくなる
主な治療法
・食事や生活習慣を改善する
・市販の育毛剤や発毛剤も有効
・原因となる病気を治療する
・頭髪専門病院にかかる
取材・文/古谷玲子(デコ) イラスト/片岡圭子