雑誌『毎日が発見』で好評連載中の、医師・作家の鎌田實さん「もっともっとおもしろく生きようよ」。今回は、連載特別編「健康長寿を目指すなら血圧を下げよう」の第2回。血圧を下げる生活習慣について、教えていただきました。
前回の記事:高血圧は...サイレントキラー⁉ 医師の鎌田實さんが伝えたい「高血圧のリスク」
日本食の欠点は塩分が多いこと
高血圧の人がまずすべきことは、減塩です。
これに対しても、「塩分をたくさんとったほうが元気が出る」「減塩のしすぎはよくない」などのフェイクニュースが出回っています。
塩分に左右されない高血圧の人もわずかにいることはいますが、多くは血圧と塩分は正比例の関係になっています。
日本人の一日の塩分摂取量の目標は、男性8g未満、女性7g未満、高血圧の人は男女ともに6g未満とされています。
最近はさらに厳しく、男性7・5g未満、女性6・5g未満にしようと言われ始めました。
刺身や豆腐にしょうゆをたっぷり使う人は要注意です。
ぼくは、しょうゆを使う場合、刺身の角だけさっとつける習慣をつけました。
スプレー式や一滴ずつ出るしょうゆ差しを使うのもいいですね。
ナトリウムの代わりにカリウムを使った「ナト・カリ塩」という減塩商品も使っています。
血圧を上げるナトリウムの代わりにカリウムが使われている塩です。
カリウムは体内のナトリウムと置き換わり、ナトリウムを排出してくれます。
味はふつうの塩やしょうゆと変わりません。
慣れるとこちらのほうがおいしく感じられます。
ぜひ、試してみてください。
塩はナト・カリ塩、減塩しょうゆ、減塩みそをカマタは使用している。
野菜にはカリウムたっぷり
体内のナトリウムを排出してくれるカリウムは、野菜や果物、海藻にも含まれています。
アボカド、バナナ、ホウレンソウ、ブロッコリー、大豆、里芋、ワカメをとりましょう。
野菜の一日の摂取目標量は350gです。
都道府県別で平均野菜摂取量が350gを突破しているのは長野県の男性だけです。
長野県が平均寿命日本一であるのはこの野菜をたくさん食べる習慣が影響しているのではないかとぼくは思っています。
1日目標 350g の野菜です。
数分の運動習慣が大事
米国がん協会(ACS)は、「座りすぎ」が血液中の脂質や血糖値、血圧を上昇させると指摘しています。
1時間座って過ごしたら、2分間、立ち上がって軽い運動をしましょう。
それだけでも、血糖値や血圧が改善します。
テレビを座って見ているときは時々立ちあがって、鎌田式スクワットやかかと落としをやってみてはいかがでしょう。
テレビを見ながらでもかまいません。
まとめて30分間、運動しようと思うと長続きしません。
「ながら」がいいのです。
料理の合間や通勤途中など、何かをしながら数分間、体を動かす習慣をつけることが大事です。
外来の患者さんたちにも、そうすすめています。
ぼくは、減塩と野菜と運動で血圧が下がりました。
3年前の健康診断の血圧は、ボーダーラインの136/84。
現在は108/72です。
【鎌田式スクワット】
・5~10回で1セット
・1日3セット
① 両足を肩幅に広げて立ち、手を胸の前で組む。
② 手を胸の前で組んだまま、ひざがつま先より前に出ないようにして、腰を落とす。太ももが床と平行になるように。
③ お尻を5㎝ほど上げて5秒数えます。もう一度、お尻を5㎝ほど上げて5秒数えます。もう一度...と、合計4回繰り返します。
④ ゆっくり①の状態に戻します。決して急がないように。
【鎌田式かかと落とし】
・1日3セット
・10回で1セット
① テーブルなどに手をついて、背筋を伸ばして立ちます。
② つま先で立ち、かかとを少し上げます。
③ さらにかかとを上げる。背筋はピンと伸ばしたままで。
④ かかとをストン、と床に落とす。
タンパク質でも血圧が下がる
ぼくは鎌田式スクワットとかかと落としをすすめるとともに、タンパク質をたくさんとることをすすめてきました。
タンパク質は筋肉や体の材料になり、高齢者のフレイル(虚弱)予防には重要なポイントです。
このタンパク質が実は高血圧にもいいことをご存じですか。
ボストン大学医療センターの研究によると、一日平均100gのタンパク質を摂取している人は、あまりタンパク質を摂取していない人に比べて、高血圧のリスクが40%も低いというのです。
タンパク質が少ないと血管がもろくなって動脈硬化が起こりやすくなるためと推測されています。
100gも食べなくてもいいですが、1日最低60gくらいは食べるようにしましょう。