体の痛みや見た目の老けにつながりやすい「猫背」。慈恵医大リハビリテーション科の安保雅博さんと中山恭秀さんは、「背中がまっすぐになると、若々しく元気に見える」と言います。そこで、そんな2人の著書『丸まった背中が2カ月で伸びる!』(すばる舎)から、丸くなる原因と寝たままできる簡単トレーニングの一部を連載形式でお届けします。
年間1~3%筋力が低下
最近、なんだか背中が丸くなってきた気がする。
背中をまっすぐに保つのが疲れる。
そのせいで、気づくと背中が丸くなってしまう。
丸くなっているのがラク......。
もし、そういうことがあるとしたら、背筋が衰えている可能性が高いです。
「背中の筋肉が衰える」なんて、考えたことがないかもしれませんね。
というより、背筋に意識を向けたことなど、そもそもないかもしれません。
それは、若いときは背筋力が十分あり、当たり前に背中をまっすぐにできたからです。
しかし、加齢とともに体全体の筋肉が衰え、背中の筋肉も当然衰えてきます。
一般的な理屈では、高齢者の筋力の低下を見た研究によると、年間1%から3%の筋力が低下するとされています。
上体起こし、つまり寝た姿勢から腹筋を使って起き上がる運動、背中をそらせる運動は、70代になると20代の6割程度に下がってしまうことがわかっています。
この低下こそが筋力の衰えであり、避けられないことです。
どこかの日、Xデーがきたら、突然立ち上がりができなくなったり、座ろうとして尻餅をついてしまったり、何でもない床で転んでしまったりします。
前の日まで何もなかったのが、突然訪れるわけです。
これは「サルコペニア」と言い、年齢によって生じる筋の弱化と説明されています。
要するに、年をとると差別なく筋力は低下するのです。
立つのも歩くのも、決して当たり前のことではない
筋肉はただでさえ衰えやすいのです。
筋は動かさなければ、1日で3%程度弱くなると言われています。
単純にまったく動かさない、意識がないような病態だったとしましょう。
2日目はその3%、3日目はまた3%といった具合です。
2週間を待たずして、元の筋力の7割を切ってしまいます。
30%の筋力が短期間で低下しますので、体という大きなものを動かすことができなくなるのも容易に想像がつくでしょう。
とくに高齢者の場合、元々の筋肉量が低下しているため、30%も筋肉が低下したら大変なことになります。
だから病院では、手術をした後でも絶対安静はせず、ベッドで寝たままでも体を動かすよう、我々理学療法士がお手伝いをするのです。
体を起こして、立って、歩くという、意識せず当たり前にしている行動。
しかし、それは筋肉が機能しているからであり、決して当たり前ではないのです。
背中をまっすぐに保つのも、決して当たり前のことではありません。
背筋が一生懸命がんばっているのです。
そのがんばりがだんだん効かなくなり、背中が丸くなってきた......ということなのですね。
イラスト/中村加代子
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