建物の解体で飛び散ることも。知っておきたい「アスベスト」による健康被害

建物の解体やリフォーム時に飛び散るアスベスト(石綿)による健康被害を防ぐため、厚生労働省は2019年12月3日、戸建て住宅の解体や部分的なリフォーム工事も対象とした規制強化の方針を固めました。
2020年度中にも実施を目指しています。
今回は呼吸器科が専門で、じん肺・アスベスト外来を担当する藤井正實先生に、アスベスト健康被害について教えていただきました。

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アスベストとは何ですか?

アスベストは、「石線」と呼ばれる天然の鉱石。
耐熱摩耗性に優れているため、建築材や製品に広く利用されてきました。
一方で、アスベストを吸い込むと、数十年後にがんなどの病気になることが知られています。

アスベストが原因で起こる病気

石綿肺(せきめんはい)

アスベストが原因で起こる間質性肺炎(細胞の壁や周辺に炎症が起こって発症する肺炎)。
空咳がひどい場合に発症が疑われます。

中皮腫(ちゅうひしゅ)

胸膜や腹膜にできる悪性腫瘍で、アスベストが原因での発症が大半です。
胸が痛い、重だるいなどの症状が出ると発症が疑われます。

肺がん

アスベストを吸い込んでから20年前後で発生。
発生率は一般の5倍。
喫煙習慣があると50~60倍にのぼります。
症状はありません。

びまん性胸膜肥厚肺(きょうまくひこう)

肺と胸膜が広範囲に癒着し、呼吸困難になります。
胸膜炎後に起こりやすく、息切れ、呼吸が苦しいなどの症状が現れます。

アスベストはどんな所に使われているの?

アスベストは安価で耐熱性、耐火性、耐燃性に優れているため、1975年頃までに建てられたビルの大半で使用されていました。
木造住宅の場合、壁や屋根、床材などに使われている可能性があります。

2002p098_01.jpg数十年後に発症?解体工事には注意を

「アスベストによる健康被害は、建築業や石綿製品工場などの労働現場で、アスベストを一定以上の期間吸い込んだ人に多く見られる病気です。初めは症状がなく、20~40年後に症状が出ることが大半」と話すのは、アスベストによる健康被害を長年見続けてきた藤井正實先生。
アスベストは、そこにあること自体は問題ありませんが、大気中に飛び散ること、吸い込むことで細い繊維が肺に刺さり、肺がんをはじめとする健康被害を引き起こすことがあります。
一見、職業病かと思われるアスベストの健康被害ですが、近年、日常生活の中で低濃度のアスベストを長期にわたり吸い込むことで発症することがあると分かってきました。
「"胸が刺されるように痛い。呼吸が苦しい。"などの症状が続く場合は、過去にアスベストが飛散する現場で働いたことがないか、造船所や自衛隊基地など、アスベストを使用し、飛散する場所が身近になかったか考えてみる必要があります。思い当たることがあったら、呼吸器科など専門の医療機関を受診してください。胸部レントゲン撮影とCT画像から診断可能です」(藤井先生)。
昭和30年頃から建材として広く使用されたアスベスト含有建築物の多くは、今後10年程度のうちに解体のピークを迎えます。
飛散にさらされる機会をなくすことが最善の予防策。
「古い建物の解体現場には不用意に近づかないこと。アスベストがどこに使われているのか正しい知識を持ち、予防に努めてください」(藤井先生)。
万が一、アスベストによる健康被害が疑われる人が周囲にいる場合は、近隣の労災病院等の専門医療機関に相談しましょう。

取材・文/笑(寳田真由美) イラスト/添田あき

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芝診療所
所長

藤井正實(ふじい・まさみ)先生

1989年産業医科大学卒業後、芝病院勤務。日本医師会認定産業医、日本産業衛生学会所属。社会医学系専門医協会専門医・指導医。専門は呼吸器科。じん肺・アスベスト外来を担当。

この記事は『毎日が発見』2020年2月号に掲載の情報です。

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