50歳ころを境に、手の痛みやしびれ、こわばりなどを訴える女性が多くなります。「年だから」と放置していると、指の変形につながることもあります。そこで、国内でも珍しい「へバーデン結節外来」を掲げ、日々、手指のトラブルに悩む人の悩みを解決している、富永ペインクリニック 院長の富永喜代先生に、「手指の痛み・しびれ」の基礎知識を教えてもらいました。
手指の病気の9割は女性。早めの対策で予防・改善を
「指先の激痛やしびれ、変形など、手指の病気で悩む人の9割は女性です。しかし、残念ながら多くは原因が分からず、対策や治療法も確立していないのが現状です」と、富永喜代先生。
手指の不調の原因の一つは、加齢による〝女性ホルモンの減少〟。
実際、更年期以降の女性には、不快な症状を訴える人が多いものです。
二つ目は、手や指先の神経の起点である〝首の不調〟。
三つ目が〝血流の悪化〟と考えられます。
特に冬場は痛みやしびれが起こりやすい季節。
どんな対策が必要でしょう?
「寒さや水仕事で手を冷やしがちな人や、日頃から指を酷使している人は注意が必要です。手を温める、休ませるなどを意識してください」(富永先生)。
日常の中で、手指の負担を軽減する工夫も心がけましょう。
こんな症状、我慢していませんか?
□ 毎朝、手がこわばる
□ ペットボトルのフタが開けられない
□ ボタンをはめたり、外したりするときに指が痛む
□ 包丁で野菜を切るとき、痛くて力が入れられない
□ 洗濯物を干すとき、洗濯ばさみがつまみにくい
□ 指先の冷えが以前よりも
□ 気になるようになってきた
□ 整形外科を受診したら「リウマチではない」と言われた ↓
当てはまることがあったら、手や指の病気が進んでいます。
手や指に痛みやしびれが起こりやすい人は?
●更年期以降の女性
●自己免疫疾患がある人
関節リウマチなどの自己免疫疾患がある場合、手や指に痛みやこわばり、しびれ、変形などが起こることがあります。
●糖尿病の人
糖尿病による高血糖状態を放置すると、神経障害の一つとして、指先のしびれや痛み、感覚が鈍るといった症状が現れます。
●脳梗塞の疑いのある人
急に手がしびれる場合は要注意。さらに、めまいやふらつき、歩きにくさなどを伴う場合は、脳梗塞が疑われます。
●妊娠中や出産期の女性
●手や指をよく使う人
以下は手の負担が重い作業の一例です。
気付いたら、手を休める、負担が軽くなるよう工夫をしましょう。
「手指を痛めやすい作業/手の負担を軽減する工夫」
包丁で食材を切る→ピーラーを使う。カット済み食材を使う。
フライパンで食材をあおる(炒めるとき)→炒め物をするときは、へらでまんべんなく混ぜ炒めする。煮物や蒸し料理、オーブン料理などに調理法を変える。
高い位置の物干し竿に洗濯物を干す→肩よりも低い位置で洗濯物を干し、最後にハンガーごと竿につるす(腕を肩より高く上げる動作を減らす)。
掃除機をかける→軽量タイプの掃除機を使う。粘着クリーナーで掃除を行う。
食材などの買い物→スーパーではカゴを持たず、カートを使う。まとめ買いをせず、こまめに買い物に行く。まとめ買いするときは、配送サービスを利用する。
長時間パソコンを使う→軽めの強さで文字の入力をする。キーボードをたたく音が大きくなってきたと感じたら休憩する。
手や指に痛みやしびれが起こる原因は?
女性ホルモンの減少
加齢により女性ホルモンの一つ・エストロゲンが急激に減ると「指の血管が収縮して血流が悪くなる」「指の骨の強度が落ちる」「指の関節の靭帯や腱が動きにくくなる」などが起こりやすくなります。
首の不調
手や指先の神経の起点は首にあります。
「慢性的な肩こり・首こり」「ストレートネック」などの人は、頸椎部分で神経が圧迫され、血液の流れが悪くなり、手指の症状の悪化につながります。
血流の悪化
冷えは痛みを悪化させます。特に「首」「手首」「指の股」は、常に温めるよう意識してほしい部位。
日頃から手指の冷えを防ぎ、首、手首、指の股を中心に温める習慣を心がけましょう。
取材・文/笑(寳田真由美)