茶葉の量、水質、お湯の温度...プロが教える「おいしい紅茶をいれる」3つのポイント

インフルエンザや風邪の予防、生活習慣病のリスク低下、さらには美容にもいい「飲み物」があるのをご存じでしょうか。それは普段から飲まれる方も多い「紅茶」です。「13の効能がある」という紅茶のスペシャリスト・斉藤由美さんがまとめた著書『紅茶セラピー 世界で愛される自然の万能薬』(ワニブックス)から、健康のために取り入れたい「紅茶のレシピと飲み方」を連載形式でお届けします。

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おいしい紅茶のための3要素

「おいしい紅茶をいれることができるだけで、人生は3倍、幸せになる。」私は心からこう信じて疑いません。

なぜなら、私自身がそれを実感しているからです。

おいしい紅茶をいれることができると、そこから広がっていく世界は足し算ではなく掛け算だということを、いつも感じるからです。

この「3倍」の中には、もちろん紅茶の持つ健康効果も入っています。

つまり、「おいしい紅茶」=健康によい成分が十分に発揮できている状態。

そんな紅茶をいれるためには、いくつか気をつけたいポイントがあります。

これを簡単に3つにまとめた「おいしい紅茶のための3要素」をご紹介していきましょう。

〈要素1:空気をたっぷり含んだ汲みたての水道水〉

まずひとつめは、「水」。

といっても、これは水道水で十分です。

可能であれば、浄水器を使用するとなおよいですが、わざわざ湧き水を汲みにいったり、ペットボトルの水を購入したりする必要はありません。

ちなみに、飲み水としておいしいとされる湧き水で紅茶を何度かいれてみたことがあります。

渋みは抑えられていて飲みやすいことはたしかですが、全体的に穏やかすぎる印象がありました。

さて、水の話題になると必ずといっていいほど質問を受けるのが、「硬水と軟水はどちらが紅茶にふさわしいか」ということ。

「硬水」と「軟水」。

おそらく聞いたことはあると思いますが、これは水1リットルに含まれるカルシウム塩とマグネシウム塩との総量によって区別されます。

量が多いものが硬水、少ないものが軟水で、日本の水はほぼ軟水です。

イギリス旅行で飲んだ紅茶があまりにもおいしくて、同じ紅茶を購入して日本でいれて飲んでみたら、ぜんぜん違う味わいでガッカリしましたという話をよく聞きます。

なぜ味が違うのかを調べたら、イギリスの水は硬水だから、日本の軟水は紅茶に合わないことがわかりました、というクダリも、これまで幾度となく聞いてきました。

ロンドン周辺の水が硬水なのは、事実です。

でも、硬水だから紅茶がおいしく、日本の軟水が紅茶に合わないというのは、事実とは言い難いところ。

これは、紅茶の種類やブレンド内容によって異なってきます。

私の経験としては、硬水はコクのある味わいの紅茶に合い、雑味を消してくれる利点があるように思います。

一方、紅茶の持つ繊細な香りと味わいをより引き出してくれるのが、軟水なのではないかと。

それからもうひとつ。

「イギリス旅行で飲んだ紅茶がとてもおいしかった」というのは、それは紅茶の本場で飲んでいる高揚感がおいしさをプラスしてくれているのかもしれません。

だから、旅は楽しいのです。

また、ミネラルウォーターを利用したほうがいいのではないかと思う人も多いでしょうけれど、商品によって中の成分が異なり、硬度の高いものは紅茶をいれたときの色が黒っぽく変化してしまう場合もあります。

どうしてもミネラルウォーターを使用したい場合は、国産の軟水ミネラルウォーター(硬度が50前後のもの)を選ぶと安心です。

〈要素2:茶葉と熱湯の割合〉

私のレシピでは、1杯分の紅茶をいれるための基本分量を、次のように紹介しています。

リーフティーの場合......カップ1杯分=茶葉3g+熱湯200㏄

ティーバッグの場合......カップ1杯分=ティーバッグ1袋+熱湯200㏄

紅茶製品のパッケージには、いれ方の手順がきちんと紹介されていますが、そこに書かれているものの多くは、熱湯の分量が150~170㏄となっています。

いれ方にはそれぞれの味の好みなどがあると思いますから、その表記が違うと異議を唱えるつもりはありません。

私も長いこと、その分量を守って紅茶をいれてきました。

でも、その味がとても強くて濃く感じ、飲みづらいという気持ちを持ち続けていたのです。

研修でそう教わったし、本にもそう書いているし......と悩みながら、あるとき思い切ってキリのいい分量である200㏄で紅茶をいれてみると、とてもスムーズで飲みやすい味わいに仕上がりました。

その後、何度も何度もくり返してみて、ブレのない飲みやすい味わいであることに自信が持てたので、思い切って自分なりのレシピとして完成させたのです。

日本人の多くの方が、紅茶の渋みに対してとてもネガティブな印象を持っているようです。

強い味わいよりも、軽やかな味わいを好みます。

私のティールームにいらっしゃるお客様も、圧倒的に「渋みのない紅茶を選びたい」ということを口にされます。

ただ、味わいの好みには個人差があります。

ここで述べているのは、あくまでも基本形。

基本がしっかりと理解できていれば、あとは好みに応じて茶葉を増減したり、蒸らし時間で変化をつければよいのです。

何事も基本が肝心。

紅茶と接していると、よく感じることです。

〈要素3:お湯の温度と状態〉

「おいしい紅茶のための3要素」の中で、もっとも大事なものは何ですかと尋ねられたら、この3つめの要素を選ぶと思います。

お湯の状態をしっかりと見極められたら、紅茶も喜んでおいしさを発揮するでしょう。

紅茶は、熱湯が大好きです。

ブクブクと泡を立てて、お湯の表面が波打っているような激しい沸き具合の熱湯が最高です。

紅茶はとにかく、高温でいれることが重要。

この高温こそが、体にいい成分をしっかりと抽出させ、おいしさを引き出してくれるからです。

緑茶をいれる場合は、湯冷ましをして温度を少し落ち着かせますね。

これは旨味成分であるアミノ酸の味わいを引き出すためです。

煎茶の場合は70~80度くらい、玉露の場合はもっと低い温度にします。

ほかの成分よりもアミノ酸の味わいをより突出させるために、温度調節をしているわけです。

アミノ酸は、カテキンやカフェインと比較すると、低い温度でも抽出されやすい成分。

紅茶の場合は、これらすべての成分の抽出をマックスまで引き出すようにするのです。

よく、紅茶をいれるお湯の温度は何度が最適ですかという質問を受けますが、温度では回答しないようにしています。

なぜなら、多くの人は紅茶をいれるときに、温度計を使用してお湯の温度を測るようなことはしないと思うので。

それよりも、見た目で判断できるようになったほうが、何かとラクチンだと思いませんか。

やかんでお湯を沸かす場合は、フタを開けたときにコインくらいの大きな泡が立っていて、表面が豪快に波打っているような状態のお湯を使いましょう。

笛吹きケトルの場合は、「ピー」という音が鳴ったら、少しそのままにしておいてください。

鳴りはじめてから30秒~1分程度、沸かしっぱなしにしたほうが、お湯の状態が安定します。

温度が表示される湯沸かしポットは、「100℃」と表示されるまでしっかり沸騰させましょう。

このとき、一度沸かしたあとに時間を置いて使用する場合は、そのまま再沸騰させるのではなく、コップ1杯分の水を汲んで加えると、中のお湯が新鮮さを取り戻します。

このように、お湯の状態に気を配ると、紅茶は喜んで態度で示してくれます。

その状態が、「ジャンピング」。

茶葉が上下に行ったり来たり、まるでジャンプをしているように見えることから、そう呼ばれるようになりました。

ジャンピングは、おいしい紅茶のサイン。

紅茶がもっともおいしさを発揮できるお湯が注がれたということなのです。

沸かし足りないお湯を注ぐと、茶葉は上に浮かび、沸かしすぎたお湯を注ぐと茶葉は下に沈みます。

ほんの些細なことなのですが、ジャンピングしている紅茶を見ると、それだけでおいしくなることがわかりますから、紅茶をいれる時間もまた、味わう時間と同じくらいにリラックスできるひとときです。

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茶葉の量、水質、お湯の温度...プロが教える「おいしい紅茶をいれる」3つのポイント 070-kocha-syoei-02.jpg体に与える13の効能から、すぐに使えるアレンジレシピまで、全9章にわたって「紅茶」の全てが語りつくされます

 

斉藤由美(さいとう・ゆみ)

英国紅茶研究家。日本紅茶協会認定ティーインストラクター、ティーアドバイザー。紅茶専門店&紅茶スクール「イギリス時間紅茶時間」(秋田県大館市)のオーナーとして、ティールーム、ショップ、紅茶スクールを運営。著書に『しあわせ紅茶時間』(日本文芸社)、『すてきな紅茶時間』(PHP研究所)など。

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『紅茶セラピー 世界で愛される自然の万能薬』

(斉藤由美、監修:冨田勲/ワニブックス)

古くは英国で万能薬として珍重された「紅茶」。実は近年、インフルエンザ対策や美容にも効果があると科学的に証明されています。そんな紅茶の効能、いれ方やアレンジレシピ、使い終わったティーバッグの利用法までが盛り込まれた、「健康×紅茶」の飲み方指南書。読み終わったら、すぐに一杯いれたくなります。

※この記事は『紅茶セラピー 世界で愛される自然の万能薬』(斉藤由美、監修:冨田勲/ワニブックス)からの抜粋です。
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