いつの時代も怖い病気の代表に挙げられる「がん」。たとえ自分や家族が患ってしまったとしても、心の準備と備えがあれば、少しは気が楽になるかもしれません。そこで、1000件を超えるがん手術に携わった専門医・佐藤典宏さんの著書『手術件数1000超 専門医が教える がんが治る人 治らない人』(あさ出版)から、がんに対抗するために知っておくべき「5つの力」について、連載形式でお届けします。
ガンが治る人 運動を続けられるしくみをつくる/ガンが治らない人 運動が続けられない
運動する気分になれなかったり、通院や治療があったり、自宅や近所で運動をできなかったりすると、ガン患者さんにとって、毎日の運動を習慣化することは難しいことがあります。
そこで、ガンの手術前や治療中、また治療後の運動を無理なく続けるためには、スポーツジム(スポーツクラブ)へ行くのが理想的です。
今までスポーツジムに行ったことがない人にも「思い切って入会してみてはどうですか?」とおすすめしています。
「ガンになってから入会するなんて」と思われるかもしれませんが、私に言わせると「ガンになったからこそ入会する」のです。
ガン患者さんがスポーツジムに通うメリットは、5つあります。
1.有酸素運動とレジスタンス運動が同時にできる
ガン患者さんは、有酸素運動(ウォーキング、ランニング、エアロバイク、スイミングなど)と、レジスタンス運動(筋トレ)の両方を行うことが理想的です。
多くのスポーツジムではこの両方を同時に行うことができます。
特に、ガンの手術前には、短期間でも有酸素運動に加えてレジスタンス運動を行い、筋肉量(筋力)を維持・増加させることが、手術後の合併症の減少につながります。
2.天気を気にせずに安心して運動できる
晴れた日は外を散歩するのがいいですが、天気が悪いと続けられないこともあります。
スポーツジムは屋内で運動ができるので、天気に関係なく、毎日続けられるというメリットがあります(定休日はありますが......)。
また、外で1人で運動していると、何か異常がおこったり、まわりに人がいなかったり、サポートが得られなかったりする可能性があります。
しかし、ほとんどのスポーツジムではスタッフが監視しているので、気分が悪くなったり、何かあったりしたときに安心です。
3.専門のトレーナーによる指導が受けられる
多くのスポーツジムでは、専門のスタッフによる個別指導が受けられます。
運動(特にレジスタンス運動)は自己流でやるよりも、トレーナーに自分に合ったプログラムを組んでもらうほうが安全で効果的です。
これまで運動習慣のなかった人が運動を始めるときには、特に指導が必要です。
遠慮せずに相談してみましょう。
4.さまざまな人と接する機会が増える
自分1人で運動するよりも、スポーツジムでさまざまな人に囲まれているほうが楽しく運動できます。
スポーツジムのスタッフやトレーナーさん、あるいは気の合う仲間や友人と接することは、孤独になりがちなガン患者さんにとって精神的にもプラスになります。
5.目標(生きがい)ができる
ガン患者さんにとって、目標(生きがい)をもって毎日を過ごすことは、とても重要です。
体を動かして汗をかくことはストレス発散になりますし、スポーツジムに通うことを習慣にすると、「毎日(あるいは週に3日)通う」という目標が生まれます。
スポーツジムでは、エアロビクスやダンスなどのプログラムがありますが、これらに参加することで、「もっと振り付けを覚えたい」、「好きなインストラクターに会いたい」、「毎週このプログラムに参加したい」といった目標が生まれることもあります。
また、入院するとスポーツジムに通えないこともあると思いますが、「できるだけ早く退院してスポーツジムに行くぞ!」という励みにもなります。
大げさですが、スポーツジムに通うことが生きがいになることがあるのです。
もちろん、スポーツジムに通って本格的に運動を始める際には、主治医に相談し、無理のない範囲で行うことが重要です。
貧血がひどいときや、心臓や肺の機能が悪い人では運動がすすめられないこともあります。
骨に転移がある場合にも、運動によって骨折する可能性があるので注意が必要です。
また、疲れているときや、運動を始めてきついと感じるときには、無理をせずに休みましょう。
数日後にあらためて運動を再開してください。
手術数1000件超の専門医が伝えたい「がんが治る人 治らない人」記事リストはこちら!
心構えや情報収集のやり方などが全5章で解説。治療法ではなく、がんを治すために自分でやれることがまとめられています