40℃に3分、30℃に30秒。アスリートも疲労回復に使う「温冷交代浴」って何?

肩や首のコリ、目疲れや肌あれ・・・年齢を重ねるごとに増えていく体の不調。これらを解消するのに外せないのが、毎日入る「お風呂」でしょう。医学的にお風呂を研究する医師・早坂信哉さんは「入浴方法を少し変えれば、さらなる健康効果が期待できる」と言います。そこで、早坂さんの著書『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)から、「疲労回復できる入浴法」のエッセンスを連載形式でお届け。今夜からお風呂の時間が劇的に変わります。

40℃に3分、30℃に30秒。アスリートも疲労回復に使う「温冷交代浴」って何? pixta_46809493_S.jpg

アスリートも実践!「温冷交代浴」でリフレッシュ

「温冷交代浴」は近年、その効果が話題になっている入浴法です。文字どおり、お湯と冷水のお風呂に交互に入るというものです。

当初は、ヨーロッパで温泉療法のひとつとして行われてきたものですが、最近ではアスリートが疲労回復の手段として積極的に用いています。

2013年に、スポーツの筋肉疲労に対する温冷交代浴の大規模な研究が行われ、18もの学術研究を調査し、温冷交代浴を評価した結果が海外で発表されました。

その結果、疲労回復や筋肉痛の緩和などを含む多くの指標で、温冷交代浴が優れているということが明らかになっています。

温冷交代浴は温かいお湯に浸かった後、冷たい水を体にかける、あるいは浸ける、という入浴法です。

温かいお湯に浸かると温熱効果によって血管が拡張します。一方、冷たい水に体が触れると、交感神経が刺激されて筋肉が収縮し、血管も収縮します。この血管の拡張と収縮の繰り返しによって血流が改善し、末梢血管の循環やむくみが改善され、体の疲労で発生した炎症物質の減少をもたらすと考えられています。

また、自律神経失調症を予防して、冷やした後に、より深いリラクゼーション効果があると言われています。

ただし、先述の研究では、対象者は欧米人で体を鍛えたアスリートを中心にしたものが多く、冷浴は15℃以下の水を使うものと定義されています。一般の日本人にとっては水温が低すぎて、慣れないと体への負荷が強く、実践がかなり厳しいものです。

そのため、一般の人におすすめの温冷交代浴を以下でご紹介しましょう。

おすすめの温冷交代浴の方法は?

最初に通常通りかけ湯の後、40℃のお湯に3分間肩まで浸かります。その後、湯船から出て、30℃程度のぬるま湯を手足先にシャワーで30秒ほどかけます。これを3回繰り返すのです。最後はお湯に浸かった後、お風呂から出ます。

「30℃では冷浴とは言えないのでは?」と思う方もいるかもしれません。しかし、この10℃の違いも十分に交感神経への刺激になります。慣れてきたらもうすこし温度を下げてもかまいません。

また、交感神経への刺激という観点からは、水風呂に全身を浸けなくても手足の先にかけるだけで十分です。冷水風呂に飛び込むようなあまりに強い寒冷刺激は体にとって負担が強すぎると言えるでしょう。

すなわち、急激な血圧上昇をきたし、場合によっては不整脈や心筋梗塞、脳卒中といった命に関わることが起きる可能性もあります。

40℃に3分、30℃に30秒。アスリートも疲労回復に使う「温冷交代浴」って何? 063-004-088.jpg

30℃のぬるま湯とはいえ、温冷交代浴は交感神経を刺激し、血管が収縮する、すなわち血圧が上昇する入浴方法ですので、あくまでも健康な方向きの入浴法です。高齢者、狭心症や心筋梗塞、不整脈など心疾患のある方、高血圧の方、脳卒中にかかったことのある方は控えてください。

また、その他、お風呂そのものを禁止されているような方も避けたほうがよいでしょう。持病がある方は、主治医と相談してください。

イラスト/二階堂ちはる

※お湯の温度は、1℃の違いで体に与える効果が変わります。自宅の浴槽に温度調節機能がない場合は、お風呂用の「湯温計」のご利用をおすすめします。ホームセンターや、デパートのベビー用品コーナーなどで販売されています。
※掲載されている入浴法は、様々な医学的研究の結果から、その効果が一般的に期待されるものです。ただし、個人の体質や疾患の性質により、その効果には個人差があります。症状が緩和しない場合、主治医に相談してください。

お風呂研究20年の医師が考案した『最高の入浴法』記事リストはこちら!

40℃に3分、30℃に30秒。アスリートも疲労回復に使う「温冷交代浴」って何? 063-syoei-saikounonyuuyoku.jpg入浴の効果から方法までが5章にわたって解説され、「正しい入浴」がすぐに実践できます。体の不調別入浴法や温泉や銭湯の効果的な入り方も

 

早坂信哉(はやさか・しんや)

温泉療法専門医、博士(医学)。東京都市大学人間科学部教授。1993年自治医科大学医学部卒業後、地域医療に従事。2002年自治医科大学大学院医学研究科修了後、浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て、現職。(一財)日本健康開発財団温泉医科学研究所所長、(一社)日本銭湯文化協会理事、日本入浴協会理事。

shoei.jpg

『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』

(早坂信哉/大和書房)

生活習慣としての「入浴」を医学的に研究する第一人者が考案した、疲れきった体と心を整える「お風呂の効果」倍増メソッド! いつもの家風呂も、たまに行きたくなる温泉や銭湯も、入り方をちょっと変えれば、その健康効果は大きく変わります。血流アップ&自律神経が整えられる、まさに「最高の入浴法」をまとめたお風呂のバイブル。

※この記事は『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(早坂信哉/大和書房)からの抜粋です。
PAGE TOP