肩や首のコリ、目疲れや肌あれ・・・年齢を重ねるごとに増えていく体の不調。これらを解消するのに外せないのが、毎日入る「お風呂」でしょう。医学的にお風呂を研究する医師・早坂信哉さんは「入浴方法を少し変えれば、さらなる健康効果が期待できる」と言います。そこで、早坂さんの著書『最高の入浴法~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)から、「疲労回復できる入浴法」のエッセンスを連載形式でお届け。今夜からお風呂の時間が劇的に変わります。
重い疲れがとれる入浴法「5つのルール」
疲労回復にとって大事なのは「血液循環」と「自律神経」、そしてその後に続く「睡眠」です。
それでは、どのような入浴法が、疲労回復に最適なのでしょうか?
まず、最も重要なのは「湯船に浸かること」です。
最近の若年層については「お風呂離れ」が指摘されています。湯船に浸からず、シャワーだけで済ませてしまう人が増えています。
20代では毎日湯船に浸かる人はわずか25%という報告もあります。
ユニットバスで湯船が狭かったり、毎日忙しくて億劫だったり......。
いろいろな原因があると考えられます。
しかし、シャワーだけでは体温も十分に上がらず、静水圧や浮力の効果も得ることができません。
お風呂がもたらす温熱効果や静水圧の効果がしっかりと発揮されないため、血液が循環せず、疲労回復効果も低くなってしまうのです。
ヘトヘトになって帰宅した後、浴槽を洗ってお湯を沸かすことが面倒という気持ちもわかります。
しかし、「シャワーだけで疲れがとれず、翌日までずっとだるさを引きずってしまう。そしてまたヘトヘトになって帰宅」という悪循環に陥ってしまいます。
十分な体温上昇(0・5~1℃)、血流アップによる老廃物の代謝、副交感神経への刺激。これらは、湯船に浸かってこそ得られる健康効果なのです。
疲れをとる入浴のポイント
さて、それでは湯船に浸かるときのポイントをご紹介します。
1.温度は40℃
温度は40℃がよいでしょう。これは人によっては「すこしぬるいかな」と感じる温度設定かもしれません。
この温度の利点は、幅広い年齢層・体力層にとって低リスクだというところです。
のぼせやヒートショックなどの体調不良を起こしにくいという安全面の他、10~15分くらいの入浴時間でも十分に体が温まるので血液の流れもよくなり、疲労回復やリフレッシュ、体の痛みの改善につながります。
2.「全身浴」で肩まで浸かる
半身浴より全身浴のほうが健康効果は高いので、しっかり肩まで浸かることが大切です。
静水圧と浮力の作用により、体の隅々にまで血液を送ることができますし、温熱効果もアップします。
注意点は2つ。いきなり浴槽に浸からないこと。まずかけ湯でお湯に体を慣らしましょう。
また、心臓や呼吸器に疾患のある方はあらかじめ主治医に相談しておくことです。
肩までお湯に浸かると息苦しく感じる人は無理せず半身浴にします。
3.浸かる時間は、10分から15分
入浴の際は、「長く入らなければ!」という気負いは必要ありません。
10分~15分で大丈夫。
その代わり、毎日湯船に浸かることが大切です。
これくらいの時間ならば、心身に大きな負担はかかりませんし、しっかりと体が温まります。
顔や額が汗ばんでくるくらいが目安です。
万が一ちょっと息苦しいときは、自律神経のスイッチが交感神経に入っていることもあるので、浴槽から出て休んでください。
心臓、血管、呼吸器に疾患がある方は注意が必要です。
また、汗を流しながら我慢してお湯に浸かり続けると、入浴熱中症(のぼせ)になってしまいます。
健康を求める入浴で体調を崩したら本末転倒ですので、お風呂の我慢大会は控えてください。
4.入浴剤でリラックス効果アップ!
血流アップ&疲労物質除去効果がある「硫酸ナトリウム」を含む入浴剤を使用するのもいいでしょう。泡が出る「炭酸系」入浴剤は血管を拡張させて血流を改善させます。
また自分のお気に入りの香りを胸いっぱいに吸い込むことで、リラックス効果を高めることができます。
5.入浴後は、温熱効果を逃がさない!
お風呂から出た後は、裸でのんびりするのは厳禁。
早めにタオルで水分をふき取り、毛布や布団にくるまりましょう。
お風呂で汗をかいた後、扇風機や冷房で涼むのは、基本的にNGです(のぼせてしまった場合は別)。
せっかく温まった体が冷めてしまい、血流のよい状態がすぐに終わってしまいます。
私は、このぬるめのお湯に短時間浸かるシンプルな入浴法を「健康手抜き風呂」として紹介しています。
毎日湯船に浸かることは、働く現役世代だけでなく、ご高齢の方にも有益です。
近年の研究で、毎日の入浴が要介護状態になるのを予防することもわかってきました。言い換えれば、毎日のお風呂は健康寿命を延ばす、とも言えるかもしれません。
まずは、いろいろ面倒なことは考えずに毎日湯船に浸かることが一番大切です。
※お湯の温度は、1℃の違いで体に与える効果が変わります。自宅の浴槽に温度調節機能がない場合は、お風呂用の「湯温計」のご利用をおすすめします。ホームセンターや、デパートのベビー用品コーナーなどで販売されています。
※掲載されている入浴法は、様々な医学的研究の結果から、その効果が一般的に期待されるものです。ただし、個人の体質や疾患の性質により、その効果には個人差があります。症状が緩和しない場合、主治医に相談してください。
入浴の効果から方法までが5章にわたって解説され、「正しい入浴」がすぐに実践できます。体の不調別入浴法や温泉や銭湯の効果的な入り方も