冷え性や生理不順、むくみに便秘...「自分の体質だから」とあきらめていませんか? その悩み、毎日の食事などを少し意識すれば解決するかもしれません。ヒントとなるのは中医学(中国伝統医学)のセルフケア。そこで、東洋と西洋の医学に精通した医学博士・関隆志さんの初著書『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』(すばる舎)から、中医学をベースにした「不調を治す食事&運動の考え方」を連載形式でお届けします。
寒いときは温かいもの、熱いときは冷たいものをとるといい
「食薬」の考え方では、味覚による以外に「五気(ごき)」によって食材を分類する方法も利用されます。「体を温める作用があるか、冷やす作用があるか」により食材を分ける方法で、「寒性・涼性・平性・温性・熱性」の5つに分類されます。
このうちの「寒性」と「涼性」は、体を冷やす性質のこと。「寒性」のほうが作用が強く体を強く冷やし、「涼性」は作用が穏やかで、ゆるやかに冷やします。「寒性」の代表的な食材には、ゴーヤチャンプルーに使うにがうりやスイカ、バナナ、豆腐などがあり、「涼性」の食材には大根、きゅうり、セロリ、菊の花などがあります。
たとえば体に熱を感じる風邪をひいたときには、涼性の菊の花を乾燥したものを、水で戻してスープにすると、症状の改善効果が見込めるでしょう。
逆に、「温性」と「熱性」は体を温める性質のことです。「熱性」のほうが作用が強く、体を強く急速に温め、「温性」は作用が穏やかで、ゆるやかに温めます。
「熱性」の代表的な食材には、花椒やこしょう、唐辛子などのスパイスがあり、「温性」の食材には生姜、エビ、鶏肉などがあります。
たとえば同じ風邪でも、寒気がするときには下に挙げた熱性や温性の性質を持つ食材をとり、体を温めるようにするといいでしょう。
なお真ん中の「平性」は、温める作用も冷やす作用もない中立的な性質のことで、体が熱い人も冷えがある人も、どちらにも使いやすく、他の食材とも合わせやすいメリットがあります。多くの人が食べられる食材ということです。小豆やキャベツ、山いも、とうもろこしなどがあります。
ちなみに伝統的には、平性を除いて五気ではなく、「四気(しき)」と言うことのほうが多いです。
循環がよく不足がなければ「健康」
中医学では人間の体内に「気・血・津」という3つの要素が存在し、絶えず体内を巡っていると考えます。「気」も「血」も「津」も体の材料のようなもので、食事をとることで体内でつくられると考えられています。
この「気・血・津」がバランスよく循環していれば、それが「健康」であり、逆にこれらのバランスが崩れると体に不調があらわれます。体調不良のときには、不足しているものを補い、滞っているものがあれば巡らせて排出させることで、バランスをとろうとするのが「食薬」の基本です。
3つの要素ごとに、「補う食べもの」と「巡らす食べもの」がありますから、自分の状態に合わせてそれらを摂取し、体調を整えましょう。下にそれぞれの作用を持つ食べものの例を紹介していますので、参考にしてください。(なお、証や体質によっては避けるべき食材もありますので、その点にも注意してください)。
「補う食べもの」と「巡らす食べもの」
[補う食べものの例]
【気】
うるち米・もち米・アワ・さつまいも・じゃがいも・かぼちゃ・にんじん・キャベツ・カリフラワー・インゲン豆・大豆・豆腐・干し椎茸・ナツメ・栗・落花生・サクランボ・蜂蜜・ローヤルゼリー・牛肉・カツオ・スズキ・サバ・カタクチイワシ・ウナギ・ドジョウ・タコ
【血】
にんじん・ほうれん草・チンゲンサイ・モロヘイヤ・枝豆・黒豆・ホンシメジ・落花生・アーモンド・松茸・葡萄・ライチ・肉(牛、豚)・レバー(牛、豚、鶏、鴨)・豚足・卵(鶏、ウズラ)・マグロ・イカ・タコ・赤貝・スッポン・オイスターソース
【津】
小松菜・長いも・アスパラガス・クコの実・ズッキーニ・エリンギ・ハチミツ・ゴマ(白、黒)・キクラゲ(白、黒)・リンゴ・レモン・梨・肉(豚、馬)・卵(鶏、ウズラ)・牛乳・豆乳・豆腐・チーズ・ヨーグルト・スッポン・アユ・イカ・アワビ・牡蠣・貝柱・ビール・白ワイン
[巡らす食べものの例]
【気】
玉ねぎ・エシャロット・ピーマン・ラッキョウ・生の大根・キンカン・ミカン・陳皮・ライチ・ジャスミン茶・赤ワイン
【血】
パセリ・小松菜・ツルムラサキ・菜の花・黒大豆・納豆・ブルーベリー・プルーン・ウナギ・サトウキビ・黒砂糖・酢・酒粕・甘酒・焼酎
【津】
ナス・レタス・高菜・ハトムギ・とんぶり・小豆・黒豆・キュウリ・冬瓜・ワラビ・ゼンマイ・ジュンサイ・麩・春雨・カンピョウ・米ぬか・牛タン・シシャモ・アユ・シジミ・ハマグリ・海苔・紅茶・タンポポの根
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