食べ物はくすり。毎日の食事を変えて体の不調を治す「食薬」って何?

冷え性や生理不順、むくみに便秘...「自分の体質だから」とあきらめていませんか? その悩み、毎日の食事などを少し意識すれば解決するかもしれません。ヒントとなるのは中医学(中国伝統医学)のセルフケア。そこで、東洋と西洋の医学に精通した医学博士・関隆志さんの初著書『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』(すばる舎)から、中医学をベースにした「不調を治す食事&運動の考え方」を連載形式でお届けします。

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ふだんの食事が「くすり」になる

心が元気ではないとき、体もだるい、重たいと感じたことはありませんか?そうなる理由は、心と体がリンクしているからです。

食べものは、心と体に深く関係しています。体が重たいと感じるときには、ふだん食べているものの影響によることがあり、それをほんの少し変えるだけでも、改善できることがよくあります。ふだんの食事が「毒」にも「くすり」にもなるからです。

「医食同源」という言葉をご存知でしょうか?

「薬食同源」が語源で、くすりも、日常の食事も、ともに健康であるためには欠かせないものであり、その源は同じであるという考え方を指す言葉です。そこから転じて、食は健康な体をつくる源である、という意味でもよく使われています。

「ギリシャ医学」、インドの「アーユルヴェーダ」、中国の「中医学」など、紀元前から食べものを「くすり」として扱う考え方は多く存在しました。かつては、現代のように薬が揃っているわけではないため、身近な食べものに治療を頼るしかなかったのでしょう。

中でも中医学は、数千年という長い歴史に裏付けられた「中医薬学」の理論と、臨床経験に基づく中国の伝統医学です。いわゆる「漢方」のこと。

この中医学のバックグラウンドを持つ中国では、漢方薬と共通の理論を一般の食品にもあてはめ、一人ひとりの体に合ったレシピを提供する「薬膳」という食事療法が開発されてきました。

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©須山奈津希

「食薬」はあくまでオーダーメイド

「薬膳」という言葉を聞いたことがある人は多いでしょう。

この言葉は、1982年に中国で発行された『薬膳食譜集錦』(人民衛生出版社)という本のタイトルに由来します。

中国の国立大学・北京中医薬大学の教授・翁維健氏が出版した、いわばレシピ集のような本で、現在につながる薬膳ブームの火付け役となったバイブル的存在です。

ただしその後、ブームの中で「薬膳」と称してむやみに生薬を料理に加え、過剰な効能をうたう風潮が生じてきたため、翁氏ら自身は、中医学に基づいた伝統的食事療法を、「薬膳」ではなく「中医栄養学」と呼ぶように提唱しています。

ここでは、この「中医栄養学」に基づいた、体質に合った食材選びの方法を紹介しています。そして、従来の「薬膳」のイメージと一線を画すため、その方法を「食薬」と表現しています。「食薬」では、生姜、にんにく、昆布、海苔、大根、キャベツ、白菜、エビ、鶏肉など、みなさんがふだんに口にしているありとあらゆる食材に、なんらかの効能があると考えます。

つまり、「食薬」とは、何か特別な生薬を使った料理のことを指すのではありません。ふだんの食事が、すべて「食薬=食べるくすり」になると考える食事療法のことなのです。

ただし、ここで必ず覚えておいていただきたいことがあります。それは、「食薬」はあくまでもオーダーメイドの食事であるということ。

各個人の体質や、そのときどきの体調などに合わせて食材を選ぶことが大切で、そうすることで不調を治したり、病気を予防したりする効果が期待できます。

逆に言えば、体質や体調に合わない食材を選べば、不調を治すどころか、むしろ体調を悪化させることさえありますから、注意が必要です。

冷えていれば温め、熱いと感じれば冷やす

では、体質や体調に合った食べものとは、どのような食事のことを言うのでしょうか?

たとえば同じ人でも、体に「熱」がこもっている状態で、体を温める食べものを食べれば、ますます「熱」の症状が悪化するでしょう。

逆に「冷え」を感じている状態で、体を冷やす食べものを食べれば、ますます「冷え」の症状が悪化するはずです。

つまり、「熱」を感じるときには冷やす食べものを食べ、「冷え」を感じるときには温める食べものを食べる必要があります。

このように、体によい食べものというのは、その人の、そのときの状態によって変わります。

また、「冷え」の症状に苦しんでいる人が、温める食べものを食べれば「冷え」の症状はなくなりますが、「冷え」の症状がなくなったのに温める食べものを摂取し続ければ、今度は体の中に過剰な「熱」を生み出すことになり、別の病気を引き寄せる原因にもなりかねません。ちょうどよいところで、やめなければならないのです。

つまり、体に合った食べものを食べるためには、自らの体の状態を正しく把握し、適切な食べものを、そのときそのときで選ぶ必要があります。

こうした「食薬」の考え方の基本は、次の3か条にまとめられます。

◎足りないものを補い、滞っているものは巡らす
◎冷えていれば温め、熱いと感じれば冷やす
◎乾いていれば潤し、水が滞っていたら排泄する(尿として出す)

大ざっぱではありますが、まずはこの3か条を把握しておくだけでも、食べ間違いをすることはなくなるでしょう。

毎日の食事は、健康な体をつくる土台になります。できるだけ一人ひとりの症状に合った適切な食べものをとり、逆に体質に合わない食べものはとらないように意識することです。

057-syoei-touyoushokuraku.jpg理論よりも実践がメイン。4章にわたって体質・体調に合わせたレシピやツボを刺激するエクササイズが写真付きで紹介されています

 

関 隆志(せき・たかし)

医学博士。WHO Temporary アドバイザー。内科医、日本東洋医学会認定医。東洋食薬ライセンス 理事長ほか。東北大学医学部医学科卒業後、東北中医クリニック院長、東北大学医学部附属病院 老年・呼吸器内科医員、東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター サイクロトロン核医学研究部研究教授を経て現職。

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『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』

(関 隆志/すばる舎)

年齢を重ねると増えていく体の悩みが、みるみる改善! 8つのタイプと症状から、あなたの「証(体の状態)」と体の整え方がわかります。難しい言葉もわかりやすく解説された、誰でもできる不調を治す食べ方&体の動かし方のコツが詰まった東洋医学セルフケアの入門書。

※この記事は『名医が教える 東洋食薬でゆったり健康法』(関隆志/すばる舎)からの抜粋です。

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