米・ハーバード大が20年間調査!「ナッツ」に隠されたすごい力とは?

「がん予防にいい食材は?」「食べてすぐ寝ると太る?」テレビやインターネットにあふれかえる情報、一体どれを信じればいいのかわからない・・・。そこで、ハーバード大学や米国国家機関などの統計データを基に、本当に効く健康法をまとめた『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)から、正しい健康管理術を連載形式でお届け。クイズ形式なので、ちょっとした話のネタにも使えます。

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お酒を飲む人必読!体に良い「おつまみ」とは?


Q:ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者らが20年以上にも及ぶ調査を分析してわかった、「ナッツの摂取」によって得られる健康効果はどれ?

A.皮膚の美白効果
B.がんや心臓病などによる死亡リスクの軽減
C.抑うつの予防効果


答え :B ナッツには、がんや心臓病など死亡リスク軽減の効果がある

お酒を飲む人にとってはおなじみのおつまみのひとつ、ナッツ(木の実)。ワインやウィスキーなど洋酒のお供として親しまれています。

しかし実は、ナッツはお酒を飲む人だけの「おつまみ」にしておくのはもったいないほどの健康食材であり、習慣的に食べることでいくつものポジティブな効果を体にもたらしてくれるのです。

ハーバード大学公衆衛生大学院の研究者らは、アメリカ人の男女10 万人以上を対象として、ナッツの摂取とさまざまな病気による死亡リスクの関係を調査しました。

そして、20年以上にもおよぶ追跡調査から判明したのが、1日28グラム以上のナッツを週2回以上食べている人は、ナッツを全く食べていない人よりも死亡リスクが約15%も減少するという事実でした。

また、そのデータをさらに死因別に細かく解析したところ、がん、心臓病、呼吸器疾患による死亡リスクが明らかに低下するということもわかりました。

さらに、カリフォルニアのロマリンダ大学の研究チームが、米国の内科専門誌「アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン」に発表したところによると、ナッツには悪玉コレステロールや中性脂肪を減少させる効果もあるといいます。

これは、世界7カ国で行われた25の研究をまとめて解析したもので、血液中の悪玉(LDL)コレステロール値や中性脂肪(トリグリセライド)値が正常より高い人に、ナッツを3週間以上毎日摂取してもらい、その値の変化を観察しました。

その結果、1日あたり平均67グラムのナッツを摂取すると、悪玉コレステロールと中性脂肪の値が改善されるというデータが得られたのです。

悪玉コレステロールや中性脂肪は動脈硬化の原因ともなり、数値が悪いままの状態でほうっておくと動脈硬化が進んで心臓病、高血圧、脳卒中といった、さまざまな生活習慣病にかかるリスクが高くなりますが、ナッツはそれを予防してくれるわけです。

これらの実験結果からいえるのは、ナッツを適量食べ続けることで、あなたの寿命が延びる可能性がおおいにあるということです。

ナッツにこのような健康改善効果がみられる理由としてまず挙げられるのは、ナッツに多く含まれる「不飽和脂肪酸」という油です。

一般に「油」というと健康に悪いイメージが強いようですが、実は、油にはいくつかの種類があり、すべての油が悪者というわけではありません。むしろ、日ごろから意識して摂取したほうがよい油もあり、どんな油をどのくらい摂取するかが、私たちの健康を大きく左右することがわかっています。

油の種類には、肉やバターなど動物性食品に含まれる飽和脂肪酸と、魚や植物に含まれる不飽和脂肪酸とがあります。

飽和脂肪酸は体内で固まりやすく、血液の粘度を高めて流れにくくします。そのうえ中性脂肪や悪玉コレステロールの合成を促すため、摂りすぎると動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病につながります。いうまでもなく、健康のためには摂りすぎに注意したい油です。

一方の不飽和脂肪酸は常温で固まりにくく、体内でも液体として存在し、血中の中性脂肪やコレステロール値を調節して生活習慣病を予防する働きがあるといわれています。このため、油を摂取するなら、できるだけ不飽和脂肪酸の割合を多くしたほうがよいのです。

ナッツに多く含まれている油は、まさにこの不飽和脂肪酸なのです。なかでも、くるみには不飽和脂肪酸のひとつ「αリノレン酸」という油が多く、摂取すると体内でDHAやEPAという成分に変化します。

これらの成分は青魚に含まれることで知られていますが、血流を促し動脈硬化を予防したり、脳機能の改善にも効果があるといわれています。このように、ナッツに含まれる油は、健康を維持するために欠かせない役割を持っているのです。

それだけではありません。ナッツにはビタミン・ミネラル・タンパク質などの栄養素がバランスよく入っているほか、肥満予防に重要な働きをする食物繊維も豊富に含まれています。

ナッツにはさまざまな種類がありますが、3大ナッツと呼ばれるのは、アーモンドとマカダミアナッツ、くるみです。ナッツとして広く親しまれているピーナッツは、実は豆の一種であり木の実ではありませんが、ナッツと変わらない効果が得られることもわかっています。

健康への効果はどのナッツも認められていますが、たとえばアーモンドの場合は食物繊維が多く、便秘解消に効果があります。また若返りビタミンと言われるビタミンEの含有量も多いので、女性にはうれしい食材です。アーモンド1粒はおよそ1グラム。1日20~25粒程度が適量とされます。

マカダミアナッツは、ハワイ土産のチョコレートでも有名ですが、老化防止やコレステロール値を正常化する作用のあるパルミトレイン酸という成分が多く含まれています。1粒で2グラム程度あり、1日5粒程度が目安です。

くるみに含まれるαリノレン酸の効果については先ほど触れましたが、くるみにもアーモンド同様豊富な食物繊維が含まれ、便秘解消や美肌効果も期待できます。くるみひとかけは3グラム程度で、1日の適量は7かけ程度とされています。

このように、美容にも健康にもうれしい効果が目白押しのナッツ類ですが、一方で脂質が多くカロリーが高いのも気になります。

「ナッツを毎日食べたら太りそう」「ナッツはカロリーが高いジャンクフード」というイメージがあって、なかなか手を伸ばせない人もいるようですが、それは誤解です。このような説が流布したのは、おそらくナッツのカロリーだけを取り上げて論じたせいだと考えられます。

実際に、アーモンドは10グラムあたり60キロカロリー、マカダミアナッツは72キロカロリー、くるみは67キロカロリーなど、他の食材と比べると少々高カロリーです。

先にあげた1日の目安量を摂取したとすると、アーモンドやくるみでは、大人の茶碗に半分強程度のごはんを食べたのと同じカロリーになってしまいますから、なるほど「ナッツは太る」と考える人が多いのも無理はありません。

ところが実際には不思議なことに、ナッツはこれほど高カロリーでありながら、体重減少に関与する代表的なダイエット食材ということがわかっているのです。

アメリカの男女12万人を対象に、4年間の食事内容と体重変化との関係を調査したデータがあります。

それによると、フライやポテトチップス、赤身肉などの摂取には、体重増加に関連が見られるのに対し、ナッツは、野菜・フルーツ、全粒粉穀物、ヨーグルトなどとともに体重減少に関連しており、ダイエット効果のある食材であることが示唆されています。

ナッツとヨーグルトの組み合わせは、すぐれたダイエット効果が期待できるのです。

私たちは、ダイエットを考えるときに、カロリーばかりに目を奪われがちですが、食材は、カロリーだけでなく、栄養素や糖分、脂質の種類などさまざまな成分によって総合的に影響を及ぼすものだということを忘れてはならないといえるでしょう。

ひとつ気をつけなくてはならないのは、アレルギーです。日本に比べナッツの消費量が多い欧米では、ナッツアレルギーが増加しているといいます。アメリカでは、子どもが好きなピーナッツバターがアレルギー源となることも多く、問題となっています。

前述のようにピーナッツはナッツではないので「ナッツアレルギー」とはいえないのですが、いずれにせよ日本でも子供のお菓子からお酒のおつまみにまで人気の食材なので、注意が必要でしょう。

アーモンドやくるみなどの「本物の」ナッツ類でも、もちろんアレルギーが出ることがあります。症状としては、じんましんや口、喉のかゆみや吐き気のほか、ひどくなると呼吸困難が生じて命にかかわることもありますから、少しでも気になる症状が出たら医師に相談してください。

また、おつまみには、よく塩のきいたナッツが出されますが、残念ながらそれでは塩分の摂りすぎになってしまいますから、できるだけ無塩のものをおすすめします。

このところの健康ブームで、ようやく日本人にも少しずつ注目されるようになってきたナッツ類ですが、こうしてみるとまさに"ミラクル食材"。アレルギーの心配がない人は、ぜひ、いろいろな種類のナッツを楽しんでみてはいかがでしょうか。

【まとめ】ナッツを積極的に食べれば、寿命が延びる可能性が高い!

米・ハーバード大が20年間調査!「ナッツ」に隠されたすごい力とは? 060-syoei-nagaikinotoukei.jpg確実なデータを基に、「食事」「生活習慣」「運動」「メンタル」の4分野から29の健康情報を紹介。情報の基となる大学や機関名も記載されています

 

川田浩志(かわた・ひろし)

1965年、神奈川県生まれ。東海大学医学部内科学系血液腫瘍内科教授、医学博士。米国サウスカロライナ医科大学内科ポストドクトラルフェローを経て、2015年4月より現職。最先端の血液内科診療に従事しながら、アンチエイジング医学の普及にも注力する。

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『長生きの統計学』

(川田浩志/文響社)

「それ、本当!?」というような科学的根拠のないさまざまな健康情報を耳にする昨今。そんな時代に信頼すべきは、エビデンスのある「データ」です。本書で示されているのは、ハーバード大学やウィーン医科大学といった世界の名だたる大学や、各国の国家機関などの統計データをまとめた「事実」のみ。健康のための統計本です。

※この記事は『長生きの統計学』(川田浩志/文響社)からの抜粋です。

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