日本三大死因にも関係が!?男性ホルモン「テストステロン」不足がもたらす病気

加齢による「体のだるさ」や「やる気の低下」は、病院に行っても「老化」の影響と診断されることが少なくないそうです。しかしこの「老化」、実はホルモンとミネラルの不足による「熟年期障害」という病気の可能性があります。そこで、専門医が最新研究を基に解説した話題書『熟年期障害』(平澤精一/アスコム)から、今すぐ知っておきたい「熟年期障害の症状と原因」を連載形式でお届けします。

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テストステロン不足は、骨や筋肉を弱らせ、寝たきりや要介護状態につながることもある

健康寿命ホルモン「テストステロン」は、私たちが心身を健やかに保つうえで、非常に重要な役割を果たしています。しかし、それゆえに、加齢やストレスによってテストステロンが不足すると、心身にはさまざまな影響があらわれます。

まず起こりうるのが、「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム」、「骨粗しょう症」などです。

サルコペニアとは「加齢に伴い、筋力や身体機能が低下している状態」のこと、ロコモティブシンドロームは2007年、日本整形外科学会によって新たに提唱された概念で、「運動器の障害により要介護になるリスクの高い状態」のことです。骨や筋肉を丈夫にする役割を持つテストステロンが不足すると、これらの状態に陥りやすくなるといえます。

また骨粗しょう症とは、「骨の量が減って(骨密度が低下して)もろくなり、骨折を起こしやすくなる状態」のことです。

骨は日々メンテナンスされ、古くなった骨を溶かし壊す作業(骨吸収)と、そこに新たな骨をつくる作業(骨形成)が繰り返されているのですが、そのバランスが崩れ、骨形成が骨吸収に追いつかなくなると、骨がスカスカになり、もろくなるのです。

骨粗しょう症の原因としては、カルシウムやマグネシウム、ビタミンDなどの不足、糖尿病などの代謝性疾患などが挙げられますが、ホルモンバランスの乱れも骨粗しょう症の大きな原因の一つです。

更年期前の女性の体内では、女性ホルモンのエストロゲンが、骨吸収を抑制する働きをしています。女性は妊娠中や授乳期などに、大量のカルシウムを必要とします。そのため、エストロゲンは、骨吸収の速度を緩やかにし、骨からカルシウムが溶け出すのを抑えているのですが、閉経によりエストロゲンの分泌量が減ると、テストステロンやDHEAが代わりを務めます。

しかし、加齢やストレスなどによりテストステロンまで不足してしまうと、骨吸収の速度を抑制するものがなくなります。

その結果、骨密度が急激に低下し、骨粗しょう症になってしまうのです。ちなみに、最近ではテストステロン不足による男性の骨粗しょう症も増えています。

テストステロン不足で筋力が落ちたり、骨粗しょう症になったりすると、疲れやすくなって動くのがおっくうになり、骨も折れやすくなります。

骨折して動けなくなったり、意欲の低下などにより、外出したり体を動かしたりする機会が減ったりすると、テストステロンの分泌量はますます低下し、刺激を受けなくなった骨や筋肉は、ますます弱っていきます。

そして、認知症や寝たきり、要介護状態になってしまうおそれも十分にあるのです。

「日本人の三大死因」も、テストステロン不足が原因で起こる

ところで、みなさんは「日本人の三大死因」をご存じでしょうか?

1950年代終盤以降、「結核」や「老衰」に代わり、日本人の死因のトップ3を占め続けているのは、「悪性新生物(がん)」、狭心症や心筋梗塞などの「心疾患」、脳出血や脳梗塞などの「脳血管疾患」ですが、これらの病気とテストステロンにも深い関わりがあります。

まず、心疾患や脳血管疾患など「循環器疾患」の最大の原因となるのは動脈硬化であり、テストステロン不足は動脈硬化の原因となります。

動脈硬化とは、動脈の血管の壁が厚く硬くなってしまうことです。

動脈は「全身に血液を送る」という、とても重要な働きをしていますが、その際、血管の壁には大きな圧力(血圧)がかかります。しかも、老廃物や脂質などがたまって血管が詰まり気味になっていたり、血液が汚れていたりすると、血圧はよけいに高くなり、心臓にも負担がかかります。

太いホースにポンプでサラサラの水を送り込む場合と、細いホースにドロドロの水を送り込む場合とでは、後者の方がホースの内側に圧力がかかり、水を送り出すのにも力がいりますが、それと同じことです。

大きな圧力がかかり続けると、血管は壁を厚くして、破れるのを防ごうとします。しかし血管の壁が厚くなると、ますます血液の通り道が狭くなり、血圧は高くなります。

こうして血管の壁はどんどん厚く、硬くなってしまうのです。

血管が硬くなると、血流が悪くなり、血栓もできやすくなる

動脈硬化が起こると、血管は柔軟性や弾力性を失い、ちょっとしたことで傷ついたり破れたりしやすくなり、血流も悪くなるため、さまざまな病気を引き起こします。

たとえば、脳の血管が硬くなって血流が滞ると、脳出血や脳梗塞が起こりやすくなり、心臓に酸素や栄養分を運んでいる冠(かん)動脈が硬くなると、狭心症や心筋梗塞が起こりやすくなります。

また、動脈硬化が起こると、血栓もできやすくなります。血栓とは、血液中の血小板が固まったものです。

血小板には、傷ができたときなどに血を固め、出血を抑える働きがあり、血管内に傷ができたときにも、そこにかさぶた状のものをつくり、傷をふさぎます。それが何度も繰り返されると、血栓ができるのです。

硬くなった血管は傷つきやすいため、血栓ができるリスクがどうしても高くなります。そして、血管が血栓によってふさがれると、そこから先に血液が流れなくなり、酸素や栄養分が送られなくなるため、やはり脳梗塞や心筋梗塞などが起こりやすくなってしまうわけです。

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037-shoei.jpg最新の研究、データに基づき、5章にわたって「熟年期障害」の正体を解説。自分で予防ができるセルフケア法も

 

平澤精一(ひらさわ・せいいち)

医師。新宿区医師会会長。日本医科大学卒業。日本医科大学大学院医学研究科にて、医学博士号取得。日本医科大学付属病院、三井記念病院などを経て、1992年マイシティクリニックを開業。健康寿命に深くかかわる「テストステロン」の研究者として、高齢者の健康を守る取り組みを数多く実践する。

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『熟年期障害』

(平澤精一/アスコム)

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※この記事は『熟年期障害』(平澤精一/アスコム)からの抜粋です。
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