いまや日本人の4人に1人が悩まされているという腰痛。ですが、腰痛持ちのうちの8割の方は、痛みの明確な原因が分からないといわれています。「そこで、腰痛の大半は、日常の習慣からくる体のゆがみが原因です」と話し、骨格アライメント治療(骨格を正しい位置に整える治療)の第一人者である細野周作先生に、腰痛の原因や腰痛予防について教えていただきました。
骨盤の位置を正せば腰周りの痛みは改善する!
腰痛の予防や改善には「体のゆがみをとる」=「正しい姿勢で生活すること」が重要です。実は、日本人の女性の90%以上は、骨盤が後ろに傾いている骨盤後傾タイプ。骨盤が後傾すると、股関節に負担がかかりやすく、下腹がぽっこりと出る、お尻が垂れる、腰や首、肩に痛みを感じるなど、さまざまな不調が起こりやすくなります。
「骨盤が後傾すると体はゆがみ、骨盤につながる股関節の動きが悪くなります。すると、骨盤の背中側にあり、体のさまざまな筋肉とつながっている仙腸関節に負担がかかり、痛みを感じたり、ぎっくり腰になりやすくなります。
仙腸関節に負担がかかる状態が長年続くと、神経が圧迫されて脊柱管狭窄症を起こしたり、周辺の筋肉が引っ張られて筋膜の痛みが生じることも。骨盤の位置を整えて正しい姿勢を身に付けることは、腰痛対策に不可欠です」(細野先生)
骨盤を正しい位置に戻すには、腰を立てることが大前提。特に、脚の外側に体重がかかった状態で立つ外側重心の人の場合、足の親指の力を使えず、太ももの内側にある内転筋が弱って腰が落ちやすくなり、骨盤が後傾します。ですから、立つときにはお尻の穴をギュッと締め、親指で地面をつかむつもりで、脚の内側の力を使うよう意識しましょう。
内転筋を鍛えるには、次回紹介する「タオル挟み」のように、太ももの間に物を挟んで立つだけでも十分です。
「実例に見る腰の痛みと骨盤のゆがみ」でも分かるように、骨盤にずれが生じると腰痛や肩こりなどが現れます。正しい姿勢を意識して、不調知らずの体を手に入れましょう。
■姿勢によって骨盤や背骨の位置はこんなに変わります
正しい姿勢
重心線の真上に第3 腰椎椎体(画像の×印、他同)があり、体の重心が定まっています。
後傾している
重心線より後ろに第3 腰椎椎体があり、骨盤が後ろに傾いた状態になっています。
骨盤が後傾して猫背になった状態。首が肩よりも前に突き出してしまっています。
■実例に見る腰の痛みと骨盤のゆがみ
転倒して骨盤がずれてしまった人
(転倒前)
恥骨のあたりに少しズレはありますが、整った状態。腰に痛みはありません。
(転倒後)
股関節の位置がずれ、骨盤が後傾したせいで閉鎖孔が大きくなっています。腰痛あり。
ぎっくり腰になりやすい人
(治療前)
骨盤腔が平たいのは骨盤がゆがんでいるため。腰のねじれもあり。緊張が強く痛みも。
(治療後)
体の重心が整い、骨盤のゆがみ、腰のねじれが軽減。腰の痛みもやわらぎました。
骨盤の左右のバランスが悪い人
(治療前)
腰がねじれて骨盤がゆがんでいます。肩こりや歯のかみしめが強く出ていました。
(治療後)
腰のバランスが良くなり、重心が整ってきています。肩こりやかみしめも快方に。
<その腰の痛み、何が原因でしょう?>
腰痛の種類は多々ありますが、どの姿勢で痛みが出るかによって大きく分けられます。下の写真のように、後ろ反りと前かがみ、どちらで痛みが強いかによって腰痛の原因は異なります。
●腰を後ろに反らすと痛い
脊柱管狭窄症、腰椎分離症・すべり症の可能性があります。
●前かがみになると痛い
椎間板症、椎間板ヘルニアの可能性があります。
上記のほか、ぎっくり腰のような急性の腰痛もあります。どのタイプも、痛みをそのままにしておくと症状が重くなることがあります。心配な場合は、整形外科や脊椎外来のある病院を受診しましょう。
取材・文/笑(寳田真由美) 撮影/西山輝彦 体操&姿勢のモデル/細野クリニック 五藤理子