肩こり、腰痛、目の疲れ、何をやっても疲れがとれない...。年のせいかと思いきや、その原因はあなたの「脳」にあるかもしれません。そこで、『疲労回復の名医が教える 誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』(アスコム)を執筆した梶本修身さんが提唱する疲労回復法を連載形式でご紹介。疲労と脳の関係や実践的なストレッチを学んで、毎日をリセットしましょう。
横向きに適した枕と抱き枕を使おう
いびきを止めるには、どうしたらよいのでしょうか。まずは、「右向き」で寝ることをおすすめします。舌やのどの筋肉、脂肪が気道をふさぐのは、おもに「重力」の仕業です。仰向けに寝ていると、舌は重力の影響を受けて後ろに落ち込み、気道を狭めてしまいます。また、うつ伏せに寝ると、首を曲げたり、寝具で口がふさがれたりしますので、呼吸がしにくくなります。
しかし横向きに寝ると、舌根が落ち込んで気道が狭くなるのを防ぐことができます。左向きではなく右向きがよいのは、胃の出口にあたる幽門部(ゆうもんぶ)が右下にあるからです。特に胃下垂(いかすい)の女性では、食物が胃にとどまることが多いので、右を下にして休む習慣をつけましょう。
寝ている間に姿勢が変わってしまうこともありますが、そのようなときは、抱き枕を抱いて横向きに寝るとよいでしょう。横向きで抱き枕を抱え込むような体位は「シムス位」と呼ばれ、循環や呼吸などすべてにおいて最も安定した体位とされています。実際、私たちの行った臨床試験では、抱き枕を抱えると有意に横向きの姿勢が増え、いびきを減らすことが実証されています。
本書で紹介する「1分間すっきりストレッチ」では、STEP2で横向きで寝返りをする癖をつけ、いびきを減らします。また、寝返りは一晩で10~20回行うことが多いですが、これも睡眠中の血液の循環を維持するうえで重要です。枕が低反発だと頭の重さで枕が変形してしまい、寝返りの際に違和感が生じます。頭の重さは平均5㎏。500㏄ペットボトル10本分もありますから、それを6時間以上支え続ける高反発の枕が重要です。
枕を購入する際は、仰向けで合わせるのではなく、横向きに適したかさのある枕を選びましょう。肩幅の分だけかさが高く、かつ、首をしっかり安定させる枕を使ってください。
重症化すると生命の危険も
私が特任教授を務める大阪市立大学疲労医学教室では、医療用に横向きの姿勢にフィットさせた高反発の枕と抱き枕「ラテックスメディカルピロー」を開発しました。
臨床試験で有用性が実証されており、8割の方においていびきや睡眠時無呼吸症候群を半減させることが確認されました。「東京疲労・睡眠クリニック」のホームページから購入できますので、いびきのある方はぜひ試してみてください。詳しくはクリニックのホームページをご参照ください。
いびきは睡眠の質を悪化させ、生活習慣病リスクや認知症リスクを高め、免疫力を低下させます。いびきが重症化すると、完全に気道をふさぎ呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群」に至りますが、これは突然死を起こす非常に恐ろしい病気です。実際、10秒間以上の無呼吸が1時間当たり30回以上ある30歳から60歳までの無治療者の場合、10年の間に6人に1人が死亡するというデータもあります。
無呼吸の症状が続く場合は、「簡易型PSG検査」の受診をおすすめします。自宅で眠るとき、ひと晩だけ指先に装置をつけておくと、いびきや無呼吸の有無がわかる検査です。健康保険3割負担の場合、2700円程度で受けることができます。
検査でいびきや無呼吸が判明し、それを完全に止めたい場合は、「持続的陽圧呼吸装置(CPAP)」での治療が有効で、治療効果は100%です。
CPAPは、鼻から空気を送り込んで気道を開き、呼吸を楽にしてくれる医療機器です。重度の患者さんにおいては健康保険適用で借りることができます。また、保険適用基準を満たさない軽度レベルの方は、東京疲労・睡眠クリニックなどいくつかの医療機関でレンタルすることも可能です。
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4章にわたって疲労と回復の考え方から生活改善法まで学べます。簡単に作れる「疲労回復レシピ」も