バランス能力や足腰の強化に!「相撲健康体操」のススメ

「相撲健康体操」は日本相撲協会が考案した体操で、足腰の強化や、体のバランス能力を養うという点でも注目されています。いったいどんな体操なの!? 伊勢ノ海部屋の甲山(かぶとやま)親方に教えてもらいました。

 

1.そもそも「相撲健康体操」ってなに?      

「相撲は相手のバランスを崩す競技です。そのため、力士たちは1日200~300回もの四股(しこ)を踏み、股割りを繰り返して足腰を鍛えています。その相撲の基本動作を一般向けにアレンジしたものが相撲健康体操です」と話すのは甲山親方。

体操の種類は全部で12型あり、体の中心軸である背骨を強く安定させるために、相撲独特の高度な工夫がされています。さらに、畳1枚分のスペースがあれば、一連の動作をおこなえて、歩かずに足腰を強化できる点も魅力的です。

「股関節周りの筋肉が低下すると、腰痛を引き起こしたり、転倒しやすくなります。しかも、日常生活の中ではあまり使わない筋肉なので、意識的に鍛える必要があり、その際に四股などの相撲の動きはとても有効です」と語るのは白木仁教授。相撲健康体操は、運動全体がゆっくりとしているので、子どもから高齢者まで無理なく安全に行うことができ、ストレッチとトレーニングの要素が入っているのも優れた点と話します。

「相撲健康体操は、背筋を伸ばし、姿勢が前のめりにならないことが基本。また、はだしで地面を踏みしめて行うのが理想です。足の裏を刺激することで、血流も良くなり、脳の活性化にも有効です。1回にまとめて長時間行うよりも、短い時間でも毎日続ける方がより効果を実感できます」(甲山親方)

毎年7~8月には、両国国技館で「相撲健康体操」の無料講習会を実施。親方の指導の下、現役力士の見本に合わせて、12型を体験できます。「相撲健康体操は、腰やひざを痛めていても、曲げる角度を浅くするなど無理のない範囲で取り組むこともできます。まずは1日10回、四股を踏むことから始めてみましょう」(白木教授)。

 

2.「相撲健康体操」の基本姿勢を覚えましょう

1.直立の姿勢

1907p075_1.jpg基本姿勢の準備動作として大事な姿勢。背筋を伸ばし、あごを引き、両手は自然に下ろします。全ての動作において、足が地面に着いているときは、足の親指に力を入れることに気を配りましょう。

 

2.蹲踞(そんきょ)の姿勢

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相撲では相手に敬意を表す姿勢。直立の姿勢から、やや足を閉じてひざを曲げ、胸を張ったまま腰を落とす。かかとを浮かせて爪先で立ち、両手を両ひざの上にのせ、あごを引いて肩の力を抜きます。

 

3.四肢の構え

1907p075_3.jpg「四股を踏む」という動作には、地中の邪気を鎮圧して土俵を清める意味があります。足を逆ハの字に開き、背筋を伸ばし、ひざの高さまで腰を落とします。その際、ひざは直角に立てましょう。

 

4.仕切りの構え

1907p075_4.jpg相撲における立ち合いの姿勢。足を右へ半歩、左へ半歩開き、腰を深く落とします。軽くこぶしを握り、両ひじのやや前方を大腿部の上にのせて、ひじが大腿部に当たらないようにしましょう。

 

5.中腰の構え

1907p075_5.jpgすぐに足を出せる姿勢。右足、左足の順に開き、四股の構えより少し高い中腰になります。あごを引いて背中を丸め、上体をやや前かがみにして、両手で大きな球を支えるようなポーズで両脇を締めます。

 

3.「相撲健康体操」の3つの「型」をやってみましょう

<気鎮(きしず)めの型:4~5回>
蹲踞(そんきょ)の姿勢は太もも内側とアキレス腱を伸ばす効果があり、骨盤の矯正やひざの機能回復が期待できます。つま先立ちの不安定な姿勢を保つことでバランス感覚が養えて、股関節や足首の柔軟性も高めてくれます。

1 直立の姿勢から蹲踞の姿勢を取る
まず、直立の姿勢をとります。背筋を伸ばし、あごを引き、両手は自然に下ろします。全ての動作において、足が地面に着いているときは、足の親指に力を入れることに気を配りましょう。この姿勢から真下に腰を落とし、蹲踞の姿勢を取ります。蹲踞は、相撲では相手に敬意を表す姿勢。直立の姿勢から、やや足を閉じてひざを曲げ、胸を張ったまま腰を落とします。かかとを浮かせて爪先で立ち、両手を両ひざの上にのせ、あごを引いて肩の力を抜きます。力士が戦う前に行う動作で、高ぶる気持ちを鎮めます。1907p076_1.jpg

 

2 鼻からゆっくり 息を吸う
蹲踞の姿勢を取ったら、背筋を伸ばし、肩の力を抜きます。次に、深くゆっくり鼻から息を吸い込み、心を落ち着かせて集中します。両方のかかとはゲンコツ1つ分、あける。1907p076_2.jpg

 

3 口からゆっくり息を吐く
息をたっぷり吸い込んだら、ゆっくり口から息を吐き出します。蹲踞の姿勢のまま、これを4~5回繰り返しましょう。1907p076_3.jpg

 

<四肢の型:左右10回>
片足で立つことによって全身のバランス能力を高め、転倒防止にも役立ちます。太ももの
内側と外側、股関節周りの筋肉を伸ばす効果があり、四股を繰り返すことで足の裏が刺激
され、冷え性の改善にも有効です。

1 四股ノ構えから重心を左足に移動する

四股の構えを取り、無理のない範囲で大きく股関節を開きます。1(イチ)のかけ声に合わせて、左足に重心を移動します。その際、腰を上げずに重心移動しましょう。1907p077_1.jpg

2 左ひざを伸ばしながら右足を上げる

2(ニ)のかけ声で右足を上げて、左ひざが伸びたところで少し静止します。足は無理に高く上げなくてもいいので、軸足のひざを伸ばしましょう。1907p077_2.jpg

3 爪先から、右足を下ろし力強く踏み込む

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3(サン)のかけ声で爪先から足を下ろして、踏み込むように地面に置く(室内で行う場合は力を加減しましょう)。反対の足も同様に、左右同じ回数行いましょう。

 

<仕切りの型:10回>
地面に両手を着いて前傾の姿勢を取ることで、足の指と腕の筋肉を鍛える効果があります。攻めの型は、重心移動によって足首とひざを鍛え、下半身のバランス強化に役立ちます。肩と腕の筋肉を伸ばし、二の腕も刺激されます。

1 腰を深く落として仕切りの構えを取る

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両ひじのやや前方を大腿部の上にのせ、腰を落として仕切りの構えを取ります。足の指は地面をつかむイメージで、前方を見ます。

 

2 右手、左手の順に連続して地面に着く

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気持ちを集中させて、1(イチ)のかけ声で右手を地面に着き、続けて2(ニ)のかけ声で左手を着きます。

 

3 両手に体重をかけ上体を深く前傾させる

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両手を着いたら、3(サン)のかけ声で上体を前傾させます。体重をかけ過ぎると起き上がれなくなるので注意。

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脇を締めて両手の薬指と小指で体を支えるのがポイント

 

4 かけ声に合わせて両手を前方に突き出す

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4(シ)のかけ声で上体を起こし、「ヤァ!!!」と声を出し、両手を開いて前方に突き出します。

 

5 両手を戻して 中腰の構えになる

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5(ゴ)のかけ声で脇を締め、6(ロク)で中腰の構えになります。最初は正しい姿勢を
確認しながら、10回を目標に行いましょう。

【応用編】

5 の姿勢から「攻めの型」もしてみましょう

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中腰の構えから、足腰の強化に効果的な「攻めの型」も簡単にできます。「ヤァ!!!」と声を
出しながら右手を突き出し、同時に右足に重心を移動します。左足は伸ばし、左手はその
まま。反対側も同様に行います。

 

4.「相撲健康体操」で期待できる効果って?

・脳の活性化
はだしで地面を踏みしめて行うと足の裏を刺激し、血流が良くなります。

・骨盤の矯正やひざの機能回復
相撲の蹲踞の姿勢により、太もも内側とアキレス腱を伸ばす効果があります。

転倒防止
爪先立ちや片足立ちでバランス感覚を養い、股関節や足首の柔軟性を高めてくれます。

・冷え性の改善
四股を繰り返すことで足の裏を刺激、血流がよくなります。

こうした効果は、「相撲健康体操」を1回にまとめて長時間行うよりも、短い時間でも毎日続ける方がより実感できます。

 

5.相撲健康体操を体験できます

「夏休み相撲健康体操」

開催期間:7月29日(月)~8月2日(金)、8月5日(月) ~9日(金)、
      8月19日(月)~21日(水)
時間:7:30~8:00
場所:両国国技館 正面広場(東京都墨田区横網1-3-28)
参加費:無料(予約不要)
服装:動きやすい服装(更衣室はありません)
持ち物:タオル、飲み物
問い合わせ:公益財団法人 日本相撲協会「夏休み相撲健康体操」(電話03-3623-5111)

 

ポイントを押さえて、日本相撲協会が考案の、相撲の動きを取り入れた「相撲健康体操」を毎日やってみてください。

取材・文/Choki!( 田辺千菊) 撮影/村上未知

 

 

<教えてくれた人>

伊勢ノ海部屋

甲山親方(かぶとやま・おやかた)

本名は齋藤剛。現役時の四股名は大おお碇いかり。現在は、入門して間もない力士を育成する「相撲教習所」の教官を務める。相撲健康体操の指導も中心となって行い、全国各地で講習会を開催。講師依頼は日本相撲協会(電03-3623-5111)まで。

 

<監修>

筑波大学 体育系
白木 仁(しらき・ひとし)教授

1957年北海道生まれ。筑波大学にて、スポーツ医学教授として教育研究に従事。日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーマスター。『1日1分! サビた体を下半身から蘇らせる 股関節コアストレッチ』(新星出版社)など著書多数。

この記事は『毎日が発見』2019年7月号に掲載の情報です。

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