悩みやダイエットが原因に...東洋医学から見る「女性特有のうつ」とは?

多くの現代人を悩ませる「うつ病」。世代や性別を問わず、また本人の周囲にまで問題が広がっていく、つらい心の病です。うつ治療といえば精神科に通うというイメージがありますが、治療手段はそれだけではありません。精神疾患治療に長年携わってきた心療内科医による、「漢方によって心身のバランスを調えて、うつを治す方法」について、連載形式でお届けします。

※この記事は『うつ消し漢方ー自然治癒力を高めれば、心と体は軽くなる!』(森下克也/方丈社)からの抜粋です。

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瘀血と水毒がもたらす女性特有のうつ状態

悩み事が続いて生理が遅れたとか、ダイエットのしすぎで生理がとまったという経験をされた方は多いのではないでしょうか。では、どうしてそんなことが起こるのでしょう。悩み事やダイエットはストレスです。だとすると、それが肝に作用して肝気鬱結(かんきうっけつ)となります。

肝では、脾で生成された血が貯蔵されています。ですから、肝気鬱結では血の疏泄(そせつ)に異常が生じます。つまり、全身の血の流れが悪くなるのです。その一つの表れとして、子宮への血の供給にも狂いが生じ、月経不順が起きるのです。

いまの例では、精神的なストレスが原因で、生理の乱れが結果です。でも、抑うつ型の月経前緊張症では、これが逆になります。つまり、生理の乱れが原因で、その結果として気持ちが沈んでしまうのです。格別に生理が乱れていなくても、生理そのものが血の疏泄の大きな変化であることを考えれば、正常な生理であっても気持ちが沈む原因になるといえます。

月経前緊張症の抑うつは、肝気鬱結による一般的なうつ病とは、少なからず東洋医学的なメカニズムが異なります。肝気鬱結に加え、血の滞りである瘀血(おけつ)と、水の流れの滞りである水滞を考慮する必要が出てきます。

瘀血とは、「血の澱み」です。西洋医学的にいうと、末梢(まっしょう)の血液循環の鬱滞(うったい)です。女性は生理というダイナミックな血のめぐりの変化を宿命的に背負っていますから、瘀血の問題は男性とは比較にならないくらい深刻です。

この瘀血によって、手足の冷え、頭痛、肩こり、腰痛、便秘、痔、不眠、目の下のクマ、肌荒れなど、女性に見られるありとあらゆる不定愁訴が起きてきます。

水毒は、血と水とが車の両輪のように相互に関係しあいながら働いていることから起きてきます。血に含まれる栄養素や生命エネルギーは、水とともに身体をめぐります。ですから、この血の流れに異常が起きると、必ず水の流れにも影響がおよぶのです。その結果、めまい、立ちくらみ、吐き気、眠気、咳、風邪を引きやすい、倦怠といった症状を呈します。

そして、この瘀血や水毒は、逆に気にも作用します。血や水の流れの滞りが気に作用し、肝の気のめぐりをさらに悪くします。漢方の世界では、「瘀血は気滞を、気滞は瘀血を生じる」といわれるほど、両者は密接な関係にあります。

もっといえば、瘀血が単独で存在することはなく、瘀血のあるところ必ず水滞や気滞があるといえます。この悪循環のなかで、月経前の抑うつはしだいに強化されていくのです。

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森下克也(もりした・かつや)

1952年、高知県生まれ。医学博士、もりしたククリニック院長。診療内科医として、日々全国から訪れる、うつや睡眠障害、不定愁訴の患者に対し、きめ細やかな治療で応じている。著書に『「月曜日の朝がつらい」と思ったら読む本』(中経出版)、『お酒や薬に頼らない「必ず眠れる」技術』(角川SSC新書)、『決定版「軽症うつ」を治す』(角川SSC新書)、『薬なし、自分で治すパニック障害』(角川SSC新書)、『うちの子が「親、起きられない」にはワケがある」(メディカルトリビューン)、『不調が消えるたったひとつの水飲み習慣』(宝島社)などがある。

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『うつ消し漢方ー自然治癒力を高めれば、心と体は軽くなる!』

(森下克也/方丈社)

30年以上にわたって漢方治療に携わってきた医師が、うつ病をいやしてくれる「漢方養生法」をまとめた話題の一冊。漢方治療や東洋医学の基本から、症状別事例、漢方の選び方、養生法までを分かりやすく解説しています。薬局・ネット通販で購入できる「漢方市販薬リスト」も付いています。

※この記事は書籍『うつ消し漢方ー自然治癒力を高めれば、心と体は軽くなる!』からの抜粋です。

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