多くの現代人を悩ませる「うつ病」。世代や性別を問わず、また本人の周囲にまで問題が広がっていく、つらい心の病です。うつ治療といえば精神科に通うというイメージがありますが、治療手段はそれだけではありません。精神疾患治療に長年携わってきた心療内科医による、「漢方によって心身のバランスを調えて、うつを治す方法」について、連載形式でお届けします。
※この記事は、『うつ消し漢方ー自然治癒力を高めれば、心と体は軽くなる!』(森下克也/方丈社)からの抜粋です。
ストレスを受けとめる「肝」
仕事が忙しすぎる、人間関係に疲れた、大切なペットが死んでしまったなど、人はストレスにさらされると嫌な気分になります。具体的には、「つらいなあ」「くやしいよ」「悲しいなあ」といった言葉を心のなかでつぶやきながら不快な感情を味わいます。
東洋医学的には、この不快な感情に反応するのは五臓のなかの肝です。これが健康な状態であれば、「なにくそ」と自身に言い聞かせて気持ちを強く持ったり、問題を冷静に分析して対処法を考えたり、ちょっと散歩をしてくるなど気分転換をはかったりしてストレスに打ち克とうとします。
しかし、ストレス状態が予想以上に長引くとか、個人の処理能力を超えてしまうと、肝の機能に破綻(はたん)が生じます。
肝の機能は、血液を貯蔵し供給するとともに、筋肉の緊張の調節、気の流れの円滑化ですので、破綻すると、それぞれに応じた症状が出現します。具体的には、憂鬱感、くよくよする、イライラする、集中力が出ないなどの精神症状、そして、頭痛、動悸、便秘、下痢などの身体面の症状です。
この、肝の機能全体がストレスによりうまくいかなくなった状態を、東洋医学では「肝気鬱結(うっけつ)」といいます。この肝気鬱結が、うつ病を東洋医学的に見たときにポイントとなる重要な概念です。
その他の「うつ消し漢方ー自然治癒力を高めれば、心と体は軽くなる!」記事リストはこちら!
自分で診断するチェックリストや、薬局やネット通販で入手できる製剤リストも付いているので実用的!