急にくる「下痢」や長く続く「便秘」に悩んでいる女性も少なくないはず。そこで、排便トラブルのスペシャリストである大腸・肛門機能の専門医による話題の書籍から「排便の正しい知識と対処術」をご紹介!目指すべき理想の便「するするバナナ」についてや、多くの人が誤解して陥りやすい「うんこトラップ(罠)」、またその予防・対処術としての「うんトレ」のエッセンスを、連載形式でお届けします。
※この記事は『うんトレ ― 誰にも言えないうんこのトラブル「スッキリ解消! 」ブック』(神山剛一・医療監修/方丈社)からの抜粋です。
誤解を正して、うんこトラップよさらば
大腸・肛門機能の専門医である神山先生は患者さんを診る中でみんなが陥りやすい"うんこトラップ(罠)"を見つけたと言います。最たる罠は、うんこにまつわる常識としてまことしやかに広まっている諸説です。神山先生は「誤解が排便トラブルに対する恐怖心をあおり、すっきり幻想をかき立てている」と指摘します。
ですから誤解を正し、冷静にうんこと向き合えるよう、うんこにまつわるリテラシー(情報理解・活用力)を高めるのもうんトレです。
記者は取材で誤解が正されたおかげで「朝の排便」に対する強迫観念が薄らぎ、気持ちがラクになりました。自分なりに「本物の便意」を待つことができるようになって、「するするバナナ」(理想の性状の便)の登場が増えたと思います。
前回に続き次の4つの誤解を正して、いくらかでも怖さを手放すことができますように!
【うんこ関連誤解 その5】会社の大腸がん検診で定期的に検便しているから大腸がんにはならない
「検便だけでがんは見つからない」一般的な大腸がん検診でおこなわれる検便は、便に含まれる赤血球の数(便潜血)を見て、精密検査(大腸内視鏡検査や注腸X線検査)をしたほうがいい人を選り分けるもの。それで問題がなくても、大腸がんにならないとは言えません。検便で潜血反応がなくても、内視鏡で進行がんが見つかることもあるのです。とはいえ検便大事!すべてのがんの中で大腸がんの罹患数データは男性3位、女性2位と大変多いので、リスクをスクリーニングする検査として、まず年に1度は大腸がん検診!
【うんこ関連誤解 その6】便秘や大腸ポリープがあると大腸がんになる
「大腸がんメカニズムは未知」大腸のがん化のメカニズムはまだ未知の部分も多く、他の臓器のがんとも異なると神山先生。「便秘から大腸がんになる」は間違い!大腸ポリープががん化することはありますが、必ずするわけではない。ただし、何らかの原因で便秘が続くような健康状態であることは、大腸がんをはじめさまざまな病気のリスクが高い可能性があります。「何らかの原因」は人によって違い、複合的なことも。考えられる原因を潰すうんトレを続けることは予防の一環ですが、大腸の病気は検診や内視鏡検査を受けなければわかりません。
【うんこ関連誤解 その7】宿便は腸の中の腐敗を進め、健康に重大な被害をもたらす
「腸内洗浄は絶対ダメ!」排便スーパーDr.の神山先生はきっぱり「宿便なんてない!」と断言しました。ブリストルスケールの「コロコロ便」のような便が腸の中にあるとイメージしているなら、それは妄想。「宿便性腹膜炎」など、いくつか〝宿便〟を名に冠する病気はありますが、それも「宿便によって起こる病気ではなく、循環障害などによる腸管の炎症」とのことです。宿便でお腹がはっていると感じる、多くは空気(ガス)とのカン違い。膨満感と便のたまり具合は相関しません。腸管洗浄は便意喪失の原因になることがあるので絶対にNG!
【うんこ関連誤解 その8】便秘を繰り返しているといつか腸閉塞になってしまう
「腸閉塞は小腸で起こる」腸閉塞というと大腸のはたらきがストップして、便秘や宿便(誤解7参照)が重症化するようなイメージをもっている人がいるかもしれませんが、腸閉塞の多くは小腸がお腹の内側の壁に癒着してしまったり、小腸の屈折部位などで小腸同士が癒着してしまうこと。消化器外科の手術後などに起こる腸閉塞の多くは、小腸で起こるので、下剤を飲んでも予防できません。「宿便性イレウス(腸閉塞)」という病気はありますが、これも腸管の炎症で、必ずしも便秘や宿便性腹膜炎などが原因で起こるわけではありません。
その他の「うんトレ ― 誰にも言えないうんこのトラブル『スッキリ解消! 』ブック」記事リストはこちら!
かわいいイラストを使って「排便の正しい知識と対処術」が分かりやすく解説されています