「人生の最期のときまで住み慣れた自宅で過ごしたい」と願う人は多いですが、それをかなえるためには「在宅医療」や「在宅介護」が重要な役割を果たします。また、自分が終末期にどのような治療を受けたいかという意思表示も必要で、延命治療についての希望を記した「事前指示書」を作成する人もいます。「事前指示書」の法的効力について、弁護士の林友宏先生に聞きました。
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1.延命治療について自分の意思を示す方法で、法的に定められた書類はありますか?
(お答え)
亡くなった後に一定の法律効果を発生させることを目的とする遺言については、民法という法律によって、その方式が規定されています。しかし、亡くなる前に、延命治療を希望するかどうかの意思表示の方法については、法的に方式が規定されているわけではありません。
2.書類で意思表示した場合、医師はそれに従わなければならない、などの法的な制限はありますか?
(お答え)
書類で延命治療を拒否するという意思表示をしていたとしても、医師がこの意思表示の内容に従わなければならないという法的義務までは認められていません。もっとも、医療機関においては、この意思表示の内容について、医学的妥当性と適切性を慎重に検討することで、治療方法に対するご本人の意思決定に配慮することがあります。
3.有料で延命治療に関わる意思表示を作成・保管したり、公証人役場で尊厳死宣言公正証書を作成したりする方法もあるようですが、自分でエンディングノートなどに記入したものと効力に違いはありますか?
(お答え)
効力に違いはありません。まず、尊厳死宣言公正証書は、ご本人が自らの意思で、延命治療を差し控えたり、中止したりすることなどを宣言し、公証人がこれを聴取して、その内容を公正証書にするものです。これに対して、エンディングノートは、ご本人が人生の最期を迎えるにあたって、自身の希望等を書き留めておくノートであり、延命治療の中止を内容とすることもできます。どちらも、法的効力までは認められていないものの、医療機関がご本人の意思に配慮する際に役立つという点で、事実上、同じ効力だと考えられます。
取材・文/松澤ゆかり