「ヘルペス」とは、ヘルペスウイルスによって引き起こされる感染症の一種。皮膚や粘膜が赤く腫れて水疱ができ、痛みや強いかゆみを感じます。一度ウイルスに感染すると、いったん症状が改善しても、体調の悪化や外部からの刺激などで再発を繰り返しやすくなります。今回は「ヘルペスに正しく対処するために、知っておきたいこと」について、横浜市立大学附属市民総合医療センター皮膚科准教授の蒲原毅先生にお聞きしました。
前の記事「実は水分補給も大切!ヘルペスの再発を防ぐ「食事」の心得/ヘルペス(9)」はこちら。
ヘルペスはとても身近で、誰でも感染する可能性がある病気です。正しい予防のために、あるいは感染や再発の際に誤った対応をしないように、最低限知っておきたいポイントをまとめました。
●ヘルペスは人に感染する? 予防対策はどうすればいい?
ヘルペスは、ヘルペスウイルスを原因とした感染症です。粘膜や小さな傷にウイルスが触れることで感染します。ヘルペスウイルスは患者の体液に排出されるため、空気感染はせず、唾液や粘膜同士が接触することによって感染します。また、ヘルペス患者が使用した食器やタオルなどを経由して感染することもあります。
「予防として、症状が出ている間はキスや性行為などの親密な接触は避け、食器やタオルも別々のものを用意しましょう。特に性器ヘルペスは、症状が治まってもウイルスを排出している可能性があるため、注意が必要です。性行為の際は必ずコンドームを使用しましょう」(蒲原先生)
●ヘルペスに感染したらどうすればいい? 治るまではどのくらいかかる?
口唇ヘルペスの場合、発症から2、3日で水疱と腫れがピークを迎え、徐々に水疱がしぼみ、1週間ほどでかさぶたになって自然に治癒します。早めに対処できればさらに短い期間で症状が治まるので、皮膚に異常が現れたら、できるだけ早く病院を受診しましょう。
性器ヘルペスの場合、治療期間は症状によって異なります。特に初感染時は、発熱などの症状をともなって重症化しやすいため、感染が疑われる場合は速やかに皮膚科や泌尿器科、婦人科などで診察を受けてください。
ヘルペスの薬は、基本的に塗り薬(軟膏)と内服薬の2種類のタイプに分かれ、症状によって使い分けます。塗り薬は薬局やドラッグストアでも市販されていますが、「第1類医薬品」に分類されるため、薬剤師の説明を受けなければ購入することはできません。
●ヘルペスと間違いやすい病気は何? 見分ける方法は?
ヘルペスは主に口唇や性器などの粘膜に発症しやすい病気ですが、目や指、腕、脚などに症状が出ることもあり、その場合はにきびや蕁麻疹などによく間違えられます。
「多くの皮膚疾患に使われるステロイド剤は、ヘルペスに使用すると症状を悪化させます。自己判断で手持ちの薬を使うことは避け、必ず病院を受診しましょう」(蒲原先生)
水疱はヘルペスの特徴的な症状ですが、必ずしも水疱が出ているからヘルペスであるということはありません。また、ヘルペスであっても水疱が発生しないこともあるため、見た目だけで確実に判断するのは困難です。肌に異常が出たときは、速やかに医師の診察を受け、適切な治療を行いましょう。
●ヘルペスは不妊の原因になる? 胎児や新生児への影響は?
単純ヘルペスの場合、ヘルペスが原因となって不妊になることはありません。
また、妊娠中の胎児への影響もほとんどありません。ただ、出産時に産道で新生児にヘルペスウイルスが感染する恐れがあります。
新生児は非常に免疫力が低く、ヘルペスが重症化しやすいため、この場合は帝王切開による出産が検討されます。ヘルペスに感染した経験がある人は、そのことを産婦人科の主治医に必ず伝えましょう。
取材・文/高橋星羽(デコ)