「近視の人は老眼になりにくい」と耳にすることがありますが、本当のところはどうなのでしょうか? 眼科専門医である、二本松眼科病院の平松 類先生に聞きました。
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近視で老眼の人は「手元がメガネなしで見えるから老眼ではない」と勘違いしてしまいますが、近視の人はもともと近くにピントを合わせやすいので、手元が見えづらいことを自覚する程度や時期が異なります。老眼は加齢現象なので、年を重ねれば、誰でもなります。
人間の目には水晶体という柔らかいレンズが備わっていて、毛様体筋という筋肉によって、厚みを変えながら、ピントを合わせています。
遠くを見るときは毛様体筋がリラックスした状態で、水晶体を薄くします。近くを見るときは毛様体筋が緊張して、水晶体厚くします。
年を重ねると、毛様体筋の力が低下するほか、水晶体が硬くなり、毛様体筋の力で強く押しても厚みが変えられなくなり、ピント調節ができなくなります。これが「老眼」です。
●老眼とは
・毛様体筋の力が衰える
・水晶体が硬くなる
→目のピントが合わせにくくなる状態
老眼の対処法で最も一般的なのは、「老眼鏡」です。
近用専用、近々両用、中近両用、遠近両用など、使用目的や目の状態に合ったレンズを選ぶことが重要です。
購入の際は、眼科を受診して正しく処方してもらいましょう。目を酷使していないお昼前後の受診がおすすめです。
老眼鏡以外の対処法には、コンタクトレンズもあります。
遠近両用コンタクトのほか、モノビジョンという方法があります。片目(普通は利き目)を正視、反対側の目は近視にしておいて、片目ずつ器用に遠くと近くを見分ける方法です。慣れてくると、頭の中で左右の目を無意識に切り替えられるようになります。
白内障手術と同時に老眼を治療する方法もあります。
硬くなった水晶体を取り除き、人工の眼内レンズを装着します。「多焦点の眼内レンズ」を入れることで、遠近や遠中近に対応します。日本で最も行われている老眼矯正手術です。
老眼に有効といわれているトレーニング方法もあります。
「ガボール・パッチ」といわれる特殊な縞模様が描かれた絵を使う目の脳トレ「ガボール・アイ」です。縞の数や向きが違うものが並んだ絵の中で、同じガボール・パッチを見つけていきます。目と脳をうまく連携させて視力を上げる方法として、注目され、書籍も刊行されています。
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取材・文/古谷玲子(デコ) イラスト/中川 透