体によいとすすめられて、昔からやっていることが実は逆効果だったとしたら...? そんな「間違えがち」な医療の常識・非常識を専門医の皆さんに聞いてきました。今回は「耳かき」について、京都府立医科大学の耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授、平野滋先生に効果的な方法を教えてもらいました。
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昔はよく家族で膝枕をして縁側で耳掃除をして、時々耳かきでガリガリッという痛みを感じることも...そんな思い出のある方も多いでしょう。いまでは入浴後に綿棒で耳掃除をする人が増えてきたと思います。
実は、耳垢は耳の中にゴミやほこり、ウイルス、菌などを侵入させず、耳の奥にある鼓膜などを守っているという役割も担っているのです。
古くなった耳垢は汚れを含んでいるため、少しずつ耳の奥から外へ押し出される自浄作用もあります。そもそも耳垢は耳の入り口から1.5cmくらいまでにしかできないものです。およそ綿棒の頭一つ分くらいのごく浅い部分だけに存在するので、綿棒の頭が隠れるくらいのところまでが耳掃除の限界点だと考えてください。
奥の方まで耳掃除をする必要はありません。奥の方まで耳掃除をしようとするあまり、古い耳垢が耳の奥に押し込まれてしまうこともあります。
また、耳垢を取り過ぎてしまうと、外耳炎になってしまう危険性もあります。
外耳炎が慢性化するとかゆみや痛みに悩むことになります。それを避けるためにも、基本的には耳掃除は家族や他人に任せず、自分でほどほどに行いましょう。そのときも奥まで念入りに行うのではなく、掃除するのは耳の穴の入り口付近にとどめて、耳の汚れは適度に取るようにします。
毎日行うことはありません。頻度は、月に1~2回程度で十分です。
乾燥した耳垢の場合は細い綿棒で耳の壁をなでるようにしながら耳垢を外に掃き出します。湿り気味、じくじくした耳垢の場合は綿棒で耳垢を押し込んでしまう可能性があるので、耳かきで取るようにするといいでしょう。どちらの場合も耳の外側から1.5cmの深さまでが掃除する範囲です。自分でうまく掃除できないという人は、耳鼻科を受診して除去してもらいましょう。
耳の構造
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取材・文/宇山恵子 イラスト/中川原 透