尿に蛋白。そして疲れやすい。「慢性腎臓病の疑い」と言われましたが.../高谷典秀先生「なんでも健康相談」

「病院に行くべきかどうか...」悩むレベルの"困った症状"、いろいろありますよね。
今回寄せられたのは、医師から慢性腎臓病の疑いがあると言われた60代男性のお悩み。医療法人社団同友会理事長 高谷典秀先生がお答えします。

尿に蛋白。そして疲れやすい。「慢性腎臓病の疑い」と言われましたが.../高谷典秀先生「なんでも健康相談」 10682297.jpg

 

慢性腎臓病はどんな病気?日常の注意点は?

60歳の男性です。私は以前と比べて体が疲れやすくなり、歳には逆らえないと感じていたのですが、先日健康診断を受けたところ、尿の検査で蛋白が出ていると指摘されました。

その後、再検査を行っても、やはり蛋白が出ました。慢性腎臓病の疑いがあるので、また来月に再検査をするようにと言われました。痛みなどは無いのですが、疲れやすいのは腎臓が弱っているためでしょうか。

慢性腎臓病とはどのような病気なのでしょうか。酒も煙草もやるのですが、やはり控えた方が良いのでしょうか。

 

初期の慢性腎臓病は自覚症状がない腎臓病。生活習慣病も危険因子です

慢性腎臓病はCKDとも呼ばれ、最近よく耳にするようになったと同時に、注意喚起がなされるような大きな問題にもなっています。実際に、腎臓の機能が低下し、腎不全まで進行した結果、透析治療が避けられなくなる人が毎年増加しています。

透析治療を実施する場合には、週3回程の頻度で病院へ通い、専用の医療装置を使って人工的に血液をきれいに洗浄するのですが、これには多くのコストがかかり、医療経済上大きな問題となっております。また当然、本人への時間的、コスト的負担も大きく、QOL(生活の質)を大きく下げてしまうことになります。透析患者を少しでも減らすために、早期発見、早期治療が叫ばれているのです。

一方で、初期段階での慢性腎臓病は自覚症状がほとんどありません。体のだるさ、疲労感、倦怠感、食欲不振、吐き気、むくみなどの腎不全に伴う症状が出てきた頃には、極端に腎機能が落ちてしまっている可能性が高いため、早期発見のためには症状が出る前に病状を把握することが重要になります。そのためには、採血でわかるクレアチニンという検査項目から計算されるeGFRという指標や、尿蛋白があるかどうかによって慢性腎臓病の診断を行うので、定期的な健診を受けていただくことが大切です。

また、どのような人が慢性腎臓病になりやすいかというと、まずは加齢があげられます。高齢になると、老化によって当然腎臓も痛んできます。それから高血圧や糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病も危険因子となります。そして、ご相談者であるあなたにも当てはまりますが、喫煙も危険因子の一つですので、腎臓の機能障害が出ている人は、まずは禁煙をしなければなりません。

また、高齢者の場合は、薬の副作用も出やすくなります。とくに鎮痛剤の副作用が原因で腎機能障害が悪化するというのは、良く知られているのでご注意ください。また高齢者がなりやすい脱水症状も腎機能を悪化させます。

もし、慢性腎臓病と診断されたからといっても、すぐに透析治療が必要になるわけではありません。定期的な検査を受けながら、先ほどの危険因子があるのでしたら、それらをきちんとコントロールをしてください。また、腎臓の機能を保持させるために大切なことは、まずしっかり水分をとる事、そして塩分が多すぎると腎臓に負担がかかりますので、塩分量に注意をすること。それから肥満の是正、そしてあなたの場合は、禁煙をすること。これらが腎臓機能の保持の為に大切になってきますので、ぜひ取り組んでみてください。(老友新聞社)

 

※そのほかの「高谷典秀先生「なんでも健康相談」」はこちら。

 

 

<教えてくれた人>
高谷典秀(たかや・のりひで)先生

医療法人社団同友会 理事長。順天堂大学循環器内科非常勤講師。日本人間ドック健診協会 理事。学校法人 後藤学園 武蔵丘短期大学客員教授。著書に『健康経営、健康寿命延伸のための「健診」の上手な活用法』(株式会社法研)など。

この記事は『日本老友新聞』に掲載の情報です。

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