坐骨神経痛の手術治療は約1割。体への負荷が少ない低侵襲手術にも注目/坐骨神経痛

坐骨神経痛とは、腰から足にかけて延びている坐骨神経が、さまざまな原因によって圧迫されたり、刺激されたりすることであらわれる、痛みやしびれなどの症状を指します。
坐骨神経痛の原因となる病気はいくつかあり、また、症状がよく似ていても坐骨神経痛ではない場合もあります。そこで、平和病院副院長で横浜脊椎脊髄病センター長の田村睦弘先生に症状の見極め方や治療方法、痛みを改善するセルフケアのやり方などを教えていただきました。

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坐骨神経痛の原因となる病気によって手術の方法は異なります

坐骨神経痛は、正しい姿勢と生活の工夫の他、運動療法や温熱療法、装具療法、薬物療法、ブロック療法などの保存療法で大半の場合は改善します。ですが、保存療法を3カ月程度行っても症状が良くならず生活に支障がある場合や、歩けないほど痛みがひどい場合、排尿・排便障害、性機能障害などの症状がある場合は、手術を検討します。

「坐骨神経痛の原因が、腰部脊柱管狭窄症か腰椎椎間板ヘルニアかで、手術の方法は異なります。手術を検討する際は、"いつ、どのような術式で行うのか、手術は何時間ぐらいかかり出血量はどのぐらいか、手術によってどの程度症状の改善が見込めるのか、どのようなリスクがあるか"について、医師に聞いてみましょう。持病をお持ちの方は、合併症が起こった場合に対応できる診療科があるか、リハビリや入院期間についてもあらかじめ確認しておくと安心です」(田村先生)。

 

●腰部脊柱管狭窄症の人の場合

神経除圧術
椎骨の一部や靭帯を切り取って神経の圧迫を取り除く手術。
【脊椎固定術】
腰椎が不安定になる腰椎分離すべり症などを併発している場合、脊椎を安定させるために行います。

 

●腰椎椎間板ヘルニアの人の場合

【椎間板切除術】
椎間板の飛び出している部分を切除する手術。
【脊椎固定術】
椎間板切除術で腰椎が不安定になってしまう場合、同時に行います。

 

最近は、内視鏡手術や低侵襲固定術など、体への負担が少ない「低侵襲手術(MIS)」という術式もあります。「低侵襲手術は、傷口が小さく術後の回復も大変早いです。手術当日は安静が必要ですが、翌日から数日後には歩くこともできます。通常の手術の場合、退院までに3週間程度かかるのが一般的ですが、低侵襲手術の場合は1週間程度で退院できます。痛みの感じ方にもよりますが、すぐに通常の生活に戻れる点が大きなメリットといえるでしょう。ただし、低侵襲手術は、手術を行う医師に熟達した技術が求められ、どこの病院でも行えるわけではありません。長期的な手術の効果自体は、従来の術式と変わりませんので、担当の医師と相談の上、安全な手術を選んでください」(田村先生)

低侵襲手術は体への負担が少ないのがメリットです。内視鏡手術のような低侵襲除圧や、低侵襲固定術があります。しかしすべての人に適応できるとは限りません。低侵襲手術を受けられる病院は、全国的にもまだ限られています。ほとんどの病院では健康保険の対象となりますが、自費で行なっている病院もありますので確認が必要です。

 

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取材・文/笑(寳田真由美)

 

 

<教えてくれた人>

田村睦弘(たむら・むつひろ)先生

平和病院副院長・横浜脊椎脊脊髄病センター長、高月整形外科病院・脊椎センター長兼任。日本整形外科学会認定整形外科専門医。日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医。『完全図解 坐骨神経痛のすべて 自分で治すプログラムつき』(主婦の友社)、『女性のつらい「坐骨神経痛」はこうして改善する!』(PHP研究所)など著書多数。

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