厚生労働省のデータによると、65歳以上の3人に1人が、ひざのトラブルを抱えています。ひざ痛の代表的な病気が「変形性膝関節症」です。なぜ「変形性膝関節症」になってしまうのか、どうしたら予防や改善ができるのかを、病気に詳しい酒井慎太郎先生に教えていただきました。毎日、家でできるテニスボールを使う1日5分の簡単なひざ痛解消体操にも注目です。
膝は体重がかかりやすく負担が大きい部分
ひざは立つ、かがむ、歩くなどの動作の中心となる部分です。ひざの関節は「大腿骨(だいたいこつ)」と「脛骨(けいこつ)」が接する部分で、二つの骨の先端は「関節軟骨」で覆われていて、「関節液」で潤っています。
軟骨と軟骨の間に側面から挟まっているのが「半月板」で、ひざの前面には「膝蓋骨(お皿)」があります。
「ひざは腰と同じように、体重がかかりやすい部分。負担をかけ過ぎると、ひざに痛みが生じる『変形性膝関節症』になることがあります。主な原因は『運動不足』と『悪い姿勢』です」と酒井慎太郎先生は話します。
【変形性膝関節症のひざ】
【健康な人のひざ】
「運動不足」「悪い姿勢」でクッション機能が低下
あまり足を使わない「運動不足」の生活では、足の筋肉が衰えます。特に、太ももの内側のひざに近い筋肉は、使う機会が少なく衰えやすいです。そのため、ひざが外側の筋肉に引っ張られて、症状が進むとO脚になってしまいます。
「O脚が進行すると、ひざの内側の関節軟骨や半月板の間の隙間が減り、こすれて痛みが出ます。関節軟骨が少しずつすり減っていくため、クッションが利かなくなり痛みが強くなります。すり減ったひざの関節軟骨は元には戻りません」
もう一つの原因である「悪い姿勢」とは、下の図のようにひざが曲がっている状態です。「いつもひざを曲げていると、ひざ関節の動きが悪くなります」。ひざの痛みは他に、膝蓋骨と大腿骨の関節がこすれて起こるものなどがあります。腰椎に椎間板ヘルニアがある人は、変形性膝間節症を併発しやすいです。
ひざを痛めやすい生活習慣とは
○運動不足で起こる
・ゴロ寝でテレビを見る
日頃からあまり運動せず、家の中で寝転がってテレビばかり見るような生活では、脚の筋肉が衰えてしまう。
・駅の階段を上らない
足腰に痛みはないのに、いつも階段を使わずエスカレーターに乗ってしまうと筋肉が落ち、すぐに疲れてますます歩かない悪循環に。
○悪い姿勢で起こる
・背中を丸めて読書
いすに座り長時間、読書やパソコン作業などをすると、ひざが曲がった状態が続くことになるので、ひざ関節の動きが悪くなる原因に。
・猫背で歩いている
猫背になって背中や腰をかがめて歩くと、無意識のうちにひざが曲がる。その不安定な状態のひざに、体重がかかってしまう。
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取材・文/松澤ゆかり イラスト/やまだやすこ