「立ち上がるときにひざが痛む」など、年齢とともにひざ痛を訴える人が増えてきます。ひざ痛の中で多いのは、「変形性ひざ関節症」という病気です。これは、日本人のひざの痛みの原因として最も多いといわれているもので、ひざに負担がかかり続けることによって、ひざへの衝撃を吸収するクッションの役割をする関節軟骨がすり減り、半月板が傷み、ひざに痛みが起こる病気です。加齢が原因で起こるため、年齢が高くなるほど発症しやすくなります。「変形性ひざ関節症」について、国立病院機構災害医療センター院長の宗田大先生にお話しをお聞きしました。
前の記事:「ひざ痛をその原因から解決!(3)「変形性ひざ関節症」の痛みは毎日のストレッチで軽減!」はこちら。
ひざのお皿を意識して動かしてほぐす
変形性ひざ関節症になり、ひざの炎症が続いていたり、お皿の周囲の組織が変化して硬くなったりすると、ひざのお皿、つまり膝蓋骨(しつがいこつ)の動きが悪くなってしまいます。その結果、ひざをスムーズに動かせなくなったり、曲げたり伸ばしたりする動作をするたびに、ひざに痛みや違和感が出ます。
ひざのどこの部位に痛みが出るかは、人によって異なりますが、特に多いのがお皿の周囲です。そこで、こわばっているお皿の周囲の組織をほぐし、柔軟性を回復させる効果があるのが、「お皿ストレッチ」。「重ねた親指でお皿を意識的に動かしてみて、どの辺りが痛いかを自分で見つけ、その場所をちょっと痛いと感じる程度の力で押します。お皿ストレッチは、ひざの腫れや強い熱感などが治まっていれば、ひざに部分的な痛みがあるときでも行うようにしましょう」(宗田先生)
筋肉と骨のつなぎ目を押してお皿周囲の痛みを取る
お皿ストレッチでは、お皿周囲や脛骨(けいこつ)の前側、鵞足(がそく)、内側広筋(ないそくこうきん)、外側(がいそく)広筋の縁、内側広筋、外側広筋、大腿四頭筋腱(だいたいしとうきんけん)といった、痛む場所を指で押してほぐします。
整形外科で処方されるマッサージクリームを利用すると、指の滑りが良くなるとともに、ストレッチの効果を高めてくれることが期待できます。また、ストレッチの後は、炎症を鎮める作用のあるインドメタシンが配合されているクリームを塗ることで、筋肉に溜まった血液を循環させるのに有効です」(宗田先生)
お皿ストレッチを行う部位は、普段から負担がかかりやすく、痛みの原因となる場所です。できるだけ毎日、朝晩1回ずつ行い、お皿ストレッチで痛みが取れてきた後も、予防のために続けていきましょう。ひざに腫れや強い熱感、水がたまっているときは控えます。
お皿の痛む場所を押す▶▶▶ 痛みを改善する 朝と夜に最長3分間
いす、または床に座り、番号の付いた場所のお皿の縁に両手の親指を重ねて当てます。それぞれ下のイラストの矢印の方向に押して、痛む場所を探します。 痛みが出る場所のお皿の縁に両手の親指を重ねながら5秒間押したら、力を抜きます。これを繰り返します。痛みが出る場所の両隣も同様に押します。
長い時間押し続けると、痛みが悪化するおそれがあるので注意しましょう。
次の記事:「ひざ痛をその原因から解決!(5)ひざの負担は3つの生活の工夫で軽減!」はこちら。
宗田 大(むねた・たけし)先生
国立病院機構災害医療センター院長、東京医科歯科大学名誉教授。東京医科歯科大学医学部卒業。専門はスポーツ医学、膝関節学を中心とした関節外科学。患者のひざ痛改善のために熱心にストレッチを指導している。